FM93AM1242ニッポン放送 月～金8:00～11:30「垣花正とあなたとハッピー」
今日5/24(水)「9時の聞きどこ」では、経済ジャーナリストの森永卓郎が国鉄民営化30年で絶好調のJR九州の秘密について、他では聴けない興味深いお話をしていただきました！

垣花）戦後最大の行政改革と言われた国鉄の分割民営化から今年の4月で丁度30年になりました。「国鉄」が「JR」と名前を変え、赤字体質からの脱却のため、民営化されたのです。ところがその民営化されたJRが30年経って、全てがハッピーというわけでは無いという。

森永）そうなのです。なぜかいうと、単純な民営化ではなくて“分割民営化”というのが行われました。北海道・東日本・東海・西日本・九州・四国、あとJR貨物というものも別に出来ましたが。
当初から言われていたのは、東日本・西日本・東海は大丈夫だろうと。東京・大阪という大都市を抱え、東海は東海道新幹線を抱えているので、そこは絶対に儲かるぞと。
でもいわゆる“三島(さんとう)会社”。北海道・四国・九州。「これは先行き危ないぞ」ということで、実は持参金を付けるような形で経営補填をするという仕組みも入れたのですけれども、必ずしもこの三島(さんとう)が上手くいっていない中1人だけ、このJR九州だけが絶好調に転じている。

垣花）これはつまり良い意味で予想外だった訳ですね。北海道・九州・四国は厳しいだろうと言われていて、北海道と四国はまだだめで、北海道の方は留萌線の増毛―留萌間が廃止になったというのも最近の話題でありました。

九州旅客鉄道株式会社の東京証券取引所への上場セレモニーで打鐘する九州旅客鉄道株式会社の青柳俊彦社長=20161025午前東京都中央区東京証券取引所　写真提供：産経新聞社

森永）営業路線を半減しないと生きていけないというようなことをJR北海道は言っていて、完全に縮小均衡に入っています。片やJR九州は去年10月になんと上場しました。誰もJR九州が上場できるなんて思っていなかったのですよ。
このJR九州が大成功した最大の理由というのは、鉄道はまだやはり赤字なのです。赤字なのですが、その“非鉄道収入”というのと、鉄道輸送ではなくて鉄道での“移動そのもの”を観光化した、レジャーとして位置付けたというのがこのJR九州の一番すごいところです。

垣花）すごいですね。鉄道は言ってみれば本業ですよ。鉄道以外のところで儲けているんだ。

鉄道をレジャーに！エンターテインメントとしての列車たち

森永）民営化と同時に昔の特急電車を真っ赤に塗り替えて「レッドエクスプレス」って書いてちょっとオシャレにしたのですね。一応JR九州のイメージカラーは赤なのですよ。
その後「ゆふいんの森」というのを、由布院に行く列車なのですけど、これが外から見るとメタリックグリーンのすごくおしゃれな車体で、中が木材調で出来ていて、しかもそれが由布院の森に走って行く。
これはJRがやった訳じゃないのですけど、地元住民が勝手に、多分今もやっているのですけれども、「ゆふいんの森」が止まると地元のおばちゃんたちが手を振るっていう（笑）。

特急ゆふいんの森

垣花）「旅情」じゃないですかまさに（笑）。絵に描いたような。

森永）だから若い子が商業的にキャバクラ風に手を振るのではないです。普通のおばちゃんが手を振るという。
それが田園風景とマッチする訳ですよ。それだけではなくて、例えば「指宿のたまて箱」という、これは竜宮伝説をテーマにした列車なのですけれども、玉手箱にちなんで乗車時に「シューッ」と白い霧が出るという仕掛けがある。エンターテインメントなのですね。

那須）乗り物はただの移動手段じゃなくて。

森永）そうそう。それで実は「いさぶろう・しんぺい」っていうのもあるのですけど、これ熊本と鹿児島県吉松を結んでいるのですが、この熊本と鹿児島というのはもう九州新幹線が通っているから、新幹線ならば本当にあっという間に着くのですよ。だけど敢えて普通の列車に乗って、霧島連山とか桜島を移動しながら、景色をゆったりと楽しむ。
新幹線は早いので、景色をゆったりとは楽しめないのですね。
本来だったらもういらないわけですよ、新幹線通ったら。数々の路線が廃線になっている中、鉄道自体もエンターテインメントとして生き残らせるということをやったということです。

垣花）これはJR九州だけがやっていることなのですか？　他も真似てやれば良いのにと思うのですけど。

ななつ星in九州出発式=20131015午後博多駅　写真提供：産経新聞社

森永）「ななつ星」というのが大変評判になったのですけど、実はこれをJR各社がパクっていて（笑）。もう西日本から東日本から皆「乗っかれー！」って言って同じようなことを既に始めています。だからJR九州が“改革の旗手”になったのですよ。

垣花）その成功例を学んでやる、真似てやるというのは良いことですよね。

森永）しかもそれだけではやはり儲からないのですね。

鉄道以外の事業にも進出！9,000円で泊まれる「マリーナベイ・サンズ」のようなホテルとは？

森永）このJR九州が一番すごかったのは、鉄道以外の収入。

垣花）これどういうことなのですか？　鉄道以外というのは。

森永）鉄道以外というと、例えば駅ビルを片っ端から建てて、そこに商業施設をどんどん入れて賃貸収入を稼ぐということをしたのですけど、流通業にも出てホテルにも出て、このホテルがすごいのですよ。

垣花）そうなのですか？

森永）JR九州が「ブラッサム」というホテルを展開しているのですけれども、大分駅前のところにこの間泊まったのですよ。安いんですよ、9,000円くらいだったかな？
でも、パジャマが山武柄になっていて中のデザインとかがものすごいおしゃれなのです。ご飯も地元の食材を使って、もう朝ご飯がすっごくおしゃれなのですけれども。
何がすごいかっていうと、屋上に温泉が引いてあって、屋上が露天風呂になっているのです。しかも大きなプールみたいになっていて、そのプールの温泉からだーっとお湯が流れていて、その先には別府湾を置いた市内が一望できる。
シンガポールの「マリーナベイ・サンズ」の温泉版なのです。もうすっごいいい気分なのですよ！

CITY-SPAてんくう

垣花）それが9,000円くらいで泊まれるのですか？

森永）そう。それで別府湾が見えて、夜になると別府市内に明かりがパラパラっと付いていくわけです。それがもう本当に宝石箱のようになっていて。

垣花）いやあ、これがおっさん1人で観られる。行きたかったねえ、行きたかったよ。

森永）でも男女別になっているので、仮に彼女と行っていたとしても、1人です。残念。貸し切りはありません。

垣花）そりゃそうだ（笑）。でもそういうホテルをやるんだ。駅前だから適当なホテルでも良いというのではなくて。利便性だけを考えるのですけど、そうじゃないのですね。

絶好調のJR九州をここまで成長させたのはたった1人の経営者の存在

森永）なぜJR九州がこういうことが出来たのか。これは、私はたった一人の人間の存在が大きかったのだと思います。
JR九州の会長で唐池恒二さんという人がいるのですけど、このおっちゃんが、元々国鉄に入っているのですよ。国鉄に入っているのですけれども、もう周りの常識を打ち破って、とんでもない奴で暴走するのですね。この「ゆふいんの森」を走らせたのも唐池さんだし。

ななつ星in九州出発式ななつ星の前で会見を行う(左から)デザインを担当した水戸岡鋭治氏とJR九州の唐池恒二社長(当時)=20131015午後博多駅　写真提供：産経新聞社

森永）「ビートル」っていうのが福岡から釜山まで高速ジェット船が走っているのですけど。「良いじゃん、鉄道会社が船を走らせて何がいけねえんだ」と言って、様々な圧力、様々な問題が次々に発生するのですけど、そこで彼は体を張ってその諸問題を解決して。その滅茶苦茶なやり方というのが次々に新規事業を成功させていく原因になっているのです。
私一度ちょっと長めにお話をしたことがあるのですけど、ひとことで言うと“変な奴”なのです。だからこのJR九州の一番立派だったところは「変な奴を抱える懐の深さ」があった。ダメな会社はちょっと変な奴がいると――

垣花）出る杭を叩くからね。

森永）それじゃだめなのですよ。トップの仕事っていうのは、変な奴が多少のオイタをしても「まあ俺に任せろ、後始末はしてやるぜ。ケツは拭くぞ」っていう姿勢がトップの正しい姿勢。

垣花）そうか、唐池さんは今会長、当時社長。変でかつ優秀だったのですね。そこが大事ですね。変だけど優秀！

森永）そうそう、単に変なだけの奴は駄目なのですけど（笑）。

垣花）あ、認識されていますか？

森永）いやいやいや（笑）。

垣花）（笑）やっぱりそういう成功の影にはカリスマ経営者ありなのですね。

森永）まあカリスマというか周りも支えたのです。だから異物を排除しに行くのか、異物と一緒に動くかっていうのが会社の命運を決める。

那須）ということはJR北海道にその唐池さんのような人はいないのですか？

森永）私ね、JR北海道が一番良い方法は唐池さんをスカウトすることだと思います。

垣花）なるほど、まあでもJRに限らずそういう唐池さんみたいな人を活かせる会社かどうかというのは大事なポイントかもしれませんね。

森永）そうそう。ずっとルールルールで縛って何も挑戦せずに守りに入ったら、ずるずる落ちていくだけなのだと私は思いますけどね。

垣花正のあなたとハッピー！
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