元祖夏男・山下達郎!ファン垂涎の80年代アナログ盤【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

By -  公開:  更新:

昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのためにドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。

だんだん夏が近付いて来ましたが、日本のポップスシーンで元祖夏男といえば山下達郎です。今年も全国ホールツアーを展開中ですが、いよいよ今月9日・10日(土・日)には、達郎ファンの聖地・中野サンプラザで2days公演が行われます。
常にガチンコで音楽に向き合い、安易な妥協をせずに、40年以上第一線でハイクォリティな音楽を創り続けているだけでなく、ライヴにも同等の精力を注いでいるのも達郎流。まるでレコーディング本番のような完璧な歌&バックの演奏を生で聴いたときには鳥肌が立ちましたが、動員がまったく衰えないのも、そんな徹底した“本物志向”があってこそ。
その達郎作品も、初期はアナログ盤でのリリースでした。今回は、レコードでぜひ手元に聴いておきたい80年代のシングル盤をご紹介していみましょう。

【ビギナー向け】・・・『高気圧ガール』(1983)

高気圧ガール,山下達郎

イントロからいきなり、一人多重唱のアカペラでスタート。達郎ヴォーカルの魅力をとことん味わえるこの曲は、ANAのキャンペーンソングでもありましたが、このタイトルはそのCMを手掛けた名コピーライター・眞木準の手によるものです。83年当時、リゾートミュージックのマーケットは大滝詠一・山下達郎でほぼ寡占状態でしたが、この曲には「このフィールドでは、決して負けませんよ」という「夏男の矜持」を感じます。

2,000マイル飛び越えて迎えに行きたくなる「高気圧ガール」って、そもそもどんな女のコなんだ?と想像が膨らみますが、個人的な考えを言うと、水着姿を見た途端、頭の中に「♪デッデレ デッデッデ」というアカペラ多重唱が聞こえてくるコ、じゃないかなと。ちなみに蛇足ですが、サビで「ア〜」とため息をつく女性の声は、のちに達郎夫人となる竹内まりやです。
『ロンバケ』で作詞を盟友・松本隆に頼った大滝に対し、達郎はこの頃から意識的に「詞も自分の言葉で書く」方向に転換していきます。この年ちょうど30歳という節目だったこと、アルファ・ムーン移籍後初のシングルということもあり、いろんな意味で腹をくくった一枚です。
アルバムには『クリスマス・イブ』も収録されている名盤『MELODIES』(1983)に入っていますが、当時のアナログシングルは500〜1,000円ぐらいで取引されています。

【上級者向け】・・・『風の回廊(コリドー)』(1985)

風の回廊(コリドー),山下達郎

さきほどは航空会社でしたが、こちらはクルマのCMソング。ジャケットにも書いてありますが「ホンダ・クイント・インテグラ」のキャンペーンソングでした。初めてデジタルレコーディングを採り入れた達郎ソングでもあります。
導入にあたっては、音圧などの面で出て来る音がまったく違い、様々な試行錯誤があったようですが、デジタルミュージックをいち早く自分流に消化しよう、という意気込みを感じます。
また、詞の世界もさらに奥深くなり、「心の中にある、つむじ風の扉へと続く回廊」そこで陽だまりに髪をとかす女性ってどんな女だよ?とつい思ってしまいますが、達郎のあのボーカルで聴くと、フッと画が浮かぶ…そんな味わい深さも、この曲の魅力なのです。
いわゆるキャッチーさ、分かりやすさとは対極にあるこの曲がCMに使われたこと自体、時代の変遷を感じますし、モノ創りに一切妥協しない山下達郎の曲を採用することが、ひとつのイメージ戦略にもなる。そういう新たな潮流を作ったことも、この曲の功績なのです。本曲のアナログ盤は500〜1,000円で入手可能です。

【その他、押さえておきたい一曲】

『RIDE ON TIME』(1980) 

RIDE ON TIME,山下達郎

シングル第6弾。カセットテープCMソングに採用、本人初の大ブレイク作。海に入って指でポーズを取る達郎本人のジャケットも印象的。

『GET BACK IN LOVE』(1988)

GET BACK IN LOVE,山下達郎

ドラマ主題歌。この辺りから、キャッチーなリゾートミュージック路線から、バラード志向に転換。この横顔ジャケもある意味貴重かも。

※6/17(土)朝8時半〜放送の『八木亜希子 LOVE&MELODY』は「サザン・達郎・ユーミン オールリクエスト」と題して、この3組の楽曲しばりでお送りします。あなたのリクエストが採用されるかも?達郎ファンの方は、ぜひお聴きになってください。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

Page top