気象庁の気象観測船「啓風丸」乗船取材、第二弾です。
国際的な研究の一端を担う観測船。その内部はどうなっているのでしょうか?
船員には写真のような個室が用意されます。3畳ほどのスペースですが、ベッド、事務机、冷蔵庫が備えられます。
椅子は通常の事務用ですが、船で使用するため、転がらないように脚にはキャスターがついていません。
動かす時は慣れが要ります。
風呂は男性用2カ所、女性用1カ所用意されています。
掃除はもちろん船員が行います。
浴槽の中は24時間循環装置で洗浄しています。
トイレもやや古い感じですが、一見普通と変わりません、特に洋式便器はしっかり洗浄機能がついていました。
汚物はは環境への配慮から特殊な浄化処理を施された上で海洋に流されます。
したがって浄化処理中は、陸で使われるようなトイレ用の洗剤は使用禁止となります。
気象観測船の観測員には昨年から、女性が参加しています。
今回乗船していたのは入庁4年目の赤松澪さんと同じく2年目の田中里実さんの2人。
前編でもお伝えしました通り、採水作業、分析作業は細やかな中にもテキパキとした様子。
私ども報道陣の取材にも物おじしない受け答えで、観測長の習田恵三さんは「非常に優秀」と評します。
興味深いのは男性船員の反応。
船長の田辺恒さんは「(男性船員が)紳士的になった」と話します。
かつて風呂は1週間に1回程度(設備の事情もあったと思われます)、男性ばかりの船内では入浴後、船員がタオル1枚で廊下を歩いていたということもありましたが、現在はありません。
一方で女性船員は男性の個室の前の廊下は、何も考えず速やかに通り過ぎる。
お互いそうした配慮は必要なようです。
女性職員は現在、6人が入れ替わりで乗船していますが、設備の状況や円滑な人間関係という側面から、1隻に乗る人数は2人ぐらいが適切だということです。
まさに過渡期、試行錯誤の日々が続きますが、いずれにしても「海は豪快な男の世界」というイメージは昔のこととなりつつあります。
一方、女性船員の赤松さんの言葉が印象的でした。
地上ではしゃべっていたら仕事にならない。船の中では"しゃべらなければ"仕事にならない。
人が多い地上では整然と業務が進みます。
特に役割が細かく分かれているような"お役所"ではなおさらで、会話は"雑音"にもなりえます。
一方、船という閉鎖された少人数の空間では、機器の故障、時には生命に関わるアクシデントも起きたとしても、乗っている者たちだけで解決しなければなりません。
以前行った宇宙飛行士の取材でも、同じようなことを耳にしたことがあります。
その密な連携が生死を分けることもあるのでしょう。
まさに人と人の交流…コミュニケーションの原点を見る思いがしました。
◎気象庁の気象観測船「啓風丸」乗船取材、第一弾『海の職人たちが気象情報の土台を支えています!【報道部畑中デスクの独り言】』はこちら>