歌、ダンスに投票所…韓国大統領選挙は記念イベント!【報道部畑中デスクの独り言】

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応援歌、ダンス、ジャンボ人形、住民センター…
韓国大統領選挙では日本とはずいぶん違う選挙の形があり、放送でもいくつかお伝えしましたが、ここでいま一度まとめてみます。


1. トラック、歌、ダンスと共に…

日本の選挙演説と言えば、ワンボックスカーの天井にハシゴでよじ登り、屋根の上から訴えるのが一般的。
最近は荷台部分がガラス張りになった車が若干新味を感じる程度ですが、韓国には簡易ステージに早変わりするトラックで選挙戦を展開します。
セッティングや撤収も鮮やかで演説が終わって30分もすると跡形もなくなります!

安哲秀候補,選挙トラック

安哲秀候補のトラック、セッティング中。それがが終わると…

安哲秀候補,選挙トラック

雰囲気はまさにライブステージ

安哲秀人形

脇には関係者が高さ3mほどの「安哲秀人形」を肩車していました

歌舞音曲も不可欠で、候補者はほとんど、名前の入った歌をつくって流しています。
それもポップス調、ロック調、ネオ演歌調とバラエティに富み、候補によっては複数の歌を奏でているケースもあります。
意外にノリがいいので、結構頭に残ってしまい、(陣営にとっては当然それが狙い)さらにそれに合わせて運動員がダンスを踊ります。
まさに「踊る大選挙戦」です。

踊る大選挙戦

安哲秀ダンス

安哲秀ダンスも…

聞くところによると、これらの歌はかつてのヒット曲の替え歌。
なるほど、耳に残りやすいわけですが、版権は大丈夫なのか…?それについては残念ながら取材で突き止めることができませんでした。

この歌舞音曲を交えた選挙戦は、韓国の"伝統芸"とも言えるもので、件のお祭り騒ぎの一端を担うものですが、地味な選挙を有権者に少しでも関心を持ってもらうためにいつしか始まったものだといいます。

我々にとっては斬新にも感じますが、韓国の有権者、特に若い人にとっては「かえって古臭い」と感じるそうなのでおもしろいですね。

韓国を長く取材するジャーナリストの話では、韓国の若年層は特にリベラル勢力に対し、歓喜の反応に示す傾向にあるのだそうで、特に今回の文在寅氏に対する反応は、廬武鉉政権の時に似ていると語ります。
文在寅氏は廬武鉉氏の「側近中の側近」だったのも今回の現象と無関係では無く、日本でも半世紀ほど前に学生運動が盛んだったのですが、韓国のこのような盛り上がりは、そうした学生運動が形を変えたものなのかともおもいますが…そう判断するにはもう少し深い分析が必要ですね。
もっとも若者は以前に比べて公約や政策も細かくチェックし、国のことを考えているようで、若者の街、弘大で聞いた声でも、注目の政策として「賃金を上げる政策に共鳴した」という声のほか、「死刑を復活させる保守系の候補にびっくりした」と話す若者もいました。
ちなみに韓国には死刑制度そのものはありますが、1998年以降、ほぼ20年間、死刑の執行はないといいます。


2. 投票所は学校ではありませんでした

日本でいう投票所は学校の体育館と相場が決まっていますが、韓国の場合は1万3964カ所の投票所で行われ、通称、住民センターと呼ばれる所で実施されることが多いのです。
私が行った市庁の近くの住民センターは、飲食店街の一角、まるで雑居ビルで外から見ると、郵便局か銀行の窓口のようなスペースに簡易テーブル、その上で幕付きのボックスが設けられ、その幕の中に入って候補者を決め、投票箱に入れる仕組みになっていました。

ソーゴードン住民センター

飲食店街の一角にある「ソーゴードン住民センター」の投票所 記念撮影する有権者も

韓国大統領選挙投票所,ポスター

投票所の脇には候補者のポスターがズラ

もう一か所はマンションの集会所のような場所、ここは人と投票用紙を写さないという条件で、撮影が許されました。
複数の記入スペースがあり、幕の中に人が入ると、すっぽり上半身は見えなくなります。
ただ、投票箱に入れる時は割と雰囲気はユルく。
不正という意味ではなく、子どもが投票用紙を"代理"で投票箱に入れることは問題ないようです。
そして投票後は記念撮影をする有権者もおり、これは在外投票のあった日本国内でも見られた光景で、韓国では大統領選挙はやはり国のトップを決める記念イベントなのだと改めて思いました。
日本は逆に投票における「敬意」が足りないのかもしれませんね。

韓国大統領選挙投票所

国会議事堂近くのマンションの一角に設けられた投票所

ちなみに投票用紙は記入式ではなく、縦長の用紙に候補者全員の名前が印刷され、入れたい候補者には名前の脇にある欄に小さなハンコを押す選択式。
調べてみると、ハンコは丸の中にカタカナの「ト」に似たマークが彫られています。
このマークは「占い」を意味するという説があるといいますが、まさに「国のトップを占う」ということなのでしょうか?

なるほど、選挙一つとっても、現場に行ってみないとわからないことがたくさんあると改めて思いました。

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