番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
今日は、南国の果物・パパイヤを野菜として茨城で栽培、地元の特産品にしようと試みている農園経営者の、グッとストーリーです。
南国のフルーツとして、人気の高いパパイヤ。
本来は熱帯の果物を、首都圏に近い茨城で育て、完熟する前の青い状態で「野菜」として出荷している農家があります。
茨城県那珂市の「やぎぬま農園」代表・栁沼正一(やぎぬま しょういち)さん・65歳。
「世界で流通しているパパイヤの7割は、熟す前の青い状態で“野菜”として出荷されていて、フルーツとして食べている日本は、むしろ少数派なんです。」
生のまま刻んで、サラダにして食べても、大根のように煮て食べても美味しい、青パパイヤ。
栁沼さんは、かつてODA=政府開発援助のコンサルタント会社に勤務、中東やアフリカの国々で農業の指導にあたっていました。その後独立し「何か新しい特産品を作れないだろうか?」という農家からの相談を受けた際に思い付いたのが「パパイヤの栽培」でした。
青パパイヤには、脂質などを分解する強力な酵素が含まれているという研究もあり、健康志向が高まっている今なら、きっと受け容れられるはずだ、という読みもありました。
ただし問題は、温暖な土地でないと育てるのが難しいこと。日本では、奄美大島と沖縄で昔から栽培が行われていますが、それ以外の地域だと、冬場になると木が枯れてしまうのです。
「ビニールハウスはお金がかかり過ぎますし、路地栽培だと冬を越せないんです。だったら、4月に苗を植えて、早霜(はやじも)の降りる11月より前に収穫を終えればいいんじゃないかと考えました。」という栁沼さん。
苗を植えてから半年で収穫を終えるサイクルを実現させるため、当時住んでいた熊本県の霜が降りる山間部で、畑の標高や湿度など、条件を変えて試行錯誤を重ねました。
難しかったのは、早く育つ苗を作ることと、「土作り」です。
土の中の微生物を、専門家と共同で研究、早く根の張る、豊かな土壌を作ってくれる菌を見付け出し、10年がかりで栽培技術を完成させた栁沼さん。その間、費用もかかりましたが、途中でやめようと思ったことは一度もないそうです。
栁沼さんによると「パパイヤには、大地を自分で切り拓いて育っていく力があるんです。苗を育てながら、自分も頑張らないと、と思いましたね。」
栁沼さんは、土と苗ができると、さっそくパパイヤ栽培の事業化に着手。消費者人口の多い首都圏に近い方がいいと、2011年、奥さんの実家がある茨城で農園を開きました。
木が枯れないので、一年中収穫できる南国と違い、茨城だと収穫できる期間は2ヵ月しかありません。にもかかわらず、1年目から、沖縄のパパイヤ農家が1年で収穫するのと同じ量を収穫。
2年目からは、栽培を希望する農家に苗や土を有償で分け、育て方は無料で指導しています。
長年、時間と費用をかけて見付けた栽培技術を、惜しげもなく公開している理由は「みんなで作って、みんなで食べる、というのが、うちの農園のモットーですから。今の夢は、日本中に栽培技術を広めて、パパイヤの食文化を創ることです」
そのために、1本1万円でパパイヤの木を所有でき、実が取り放題になる「オーナー制度」や、パパイヤ専門の料理教室を設けるなど、消費者にパパイヤを身近に感じてもらえる環境作りにも熱心に取り組んでいる栁沼さん。
「夏になると、パパイヤの木に白い花が咲くんです。香水のような香りが一面に漂って、畑を見に来た人は、みんな感激しますね。」
今や、茨城の新たな特産品として注目されている「那珂(なか)パパイヤ」。
栁沼さんの努力が、大きな花を咲かせていくのはこれからです。
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年7月1日(土) より
番組情報
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