番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
今日は、ヘルメット並みの強度を持つ、段ボール製の「防災安全帽子」を開発して脚光を浴び、段ボールの新たな可能性を追求している会社社長のグッとストーリーです。
神奈川県伊勢原市。
田園風景が広がる町の、小さな工場が作った製品が、いま日本中から注目を浴びています。
梱包製品を手掛ける会社「秦永(しんえい)ダンボール」が開発した「防災用帽子」。
通常の段ボールの表面を、乾燥剤や食品添加物にも使用されている「シリカ」という素材でコーティングすることで、強度が5倍、耐水性が300倍になり、さらに1,300℃の高温でも燃えない、強靱な素材になるのです。
この特殊な段ボールで作った防災用帽子は、ヘルメット並みに頑丈ながら、重さはわずか150グラム。折りたたんでカバンにしまえる上に、非常時には枕にもなります。
発売以来大きな反響を呼び、学校・病院・老人ホームなどから注文が相次いでいるこの帽子。
開発したのは、秦永ダンボール社長・小澤範雅(おざわ・のりまさ)さん・48歳。
この防災用帽子を作ったのは、娘の一言がきっかけだったんです。
という小澤さん。
学校で配られた防災ずきんが、ロッカーに入らないから座布団として使ってたら、ペチャンコになっちゃった。これって、いざという時、役に立つのかなぁ?
2年前、当時小学生だった長女の言葉を聞いて
そうだ!段ボールで、小さく折りたためて、衝撃を吸収する帽子を作れば、防災に役立つはずだ!
とひらめいた小澤さん。
さっそく、共同研究をしている大学教授に相談すると
社長、やるしかないでしょ!
と乗ってくれて、開発に着手しました。
しかし、シリカでコーティングした段ボール素材は、折り曲げたり、薄くするのが難しいのです。
教授と何度も議論し、試行錯誤を重ねた小澤さん。
4回にわたる大幅なモデルチェンジを経て、去年の9月、ついに防災用帽子は完成。
“手を差し伸べる”という意味で“アウトリーチ”と名付けられたこの帽子は、反響も大きく、大手通販サイトでも取り扱われるようになりました。
小澤さんによると
完成の秘訣はやっぱり、コミュニケーションですね。
一緒に開発を手掛ける大学教授には、研究者としての理論や言い分があります。
しかし教授の意見に譲歩ばかりしていると、製品化が難しくなってしまうというジレンマが…
小澤さんは言います。
先生の理論や言い分も、一回飲みこむのが大事なんです。お互いを尊重し理解しあう作業が重要なんです。
教授の理論をもとにした試作品も、ちゃんと作って持っていく。
その上で
実際作ってみたら、こういう問題が出てきたので、代わりに、こうしたらどうでしょう?
とこちらの案を出す。
そうするとだいたい
いいね!それでやってみようか!
ということになるそうです。
防災用帽子に限らず、常に新しい商品を開発しようと挑戦を続ける小澤さん。
大学卒業後は、段ボールを扱う商社やメーカーに勤めていましたが、創業者の父親が病気で倒れたのをきっかけに会社を辞めて経営を引き継ぎ、4年前から社長に就任。
段ボール業界は競争が激しいので、ウチのように小さい会社は、ヨソが作らない製品を作っていかないと生き残れないんです。
新規開発に積極的な企業姿勢は高く評価され、秦永ダンボールは、4期連続で国から「ものづくり補助金」を獲得しています。
今年、補助金を受けた開発テーマは、段ボールを使った「バイオフィルター」の開発。
植物を水耕栽培で育てる際、有害菌の侵入を防ぐだけでなく、有益なバクテリアを住み着かせることもできる段ボール製のバイオフィルターは、栽培に大きな効果を上げるのではないかと、農業関係者から熱い期待が寄せられています。
小澤さんは言います。
段ボールほど、奥の深い製品はありません。
防災の次は植物栽培に段ボールを活かして、地元の雇用拡大にも貢献していきたいですね。
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年6月24日(土) より
番組情報
あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
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