標高の低い山で撮る山岳写真専門!日本でただ一人の低山フォトグラファー【10時のグッとストーリー】

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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうは標高1,000mクラスの山で写真を撮る「低山フォトグラファー」として活動。
独自の視点で山岳写真を撮るかたわら、一般の登山者との交流にも務めているカメラマンの、グッとストーリーです。

山梨県大月市にある、標高976mの高川山(たかがわやま)。
朝日が昇り始めた頃、その山頂でシャッター音を響かせるカメラマンが、日本でただ一人、標高の低い山で撮ることにこだわった「低山フォトグラファー」渡邉明博(わたなべ・あきひろ)さん・59歳。
ファインダーの先にあるのは、高川山の向こうにそびえる、富士山です。

高川山にて(撮影:渡邉明博)

高川山にて(撮影:渡邉明博)

夜空が白み始め、白雪をいただく富士の山頂を朝日がくっきりと映し出すその瞬間は、十数秒しかありません。
そのわずかなシャッターチャンスをとらえるため、前日から数時間掛けて高川山に登り、山頂にテントを張って待機。

渡邉さんによると

「一度チャンスを逃すと、次は1ヵ月後…なんてことはザラにあります。今回ダメでもまた来よう、というように熱意を持って取り組まないと、いい写真は撮れません。」

空気が澄んでいて、絶景がいくらでも撮れる高い山と違って、渡邉さんが登っている標高1,000mクラスの低い山は、空気の透明度が低く、普通に景色を撮ったら、それこそスマホのカメラで撮ったような、何の変哲もない写真になってしまいます。
技術はもちろんのこと、いいスポットを見つけ出すセンスも問われるのが、低山フォトグラファーの難しさ。

渡邉さんは言います。

「天候や季節感だったり、常にいろいろなものにアンテナを張っておくことが重要なんです。」

渡邉明博

渡邉明博さん

渡邉明博

渡邉明博さん

若い頃は、アフロヘアにアロハシャツ姿で、気の向くまま、ギャンブルで生計を立てていた渡邉さん。
周囲に

「いつまでそんな生活をしているつもりだ?」

と諭され、定職に就こうと飛び込んだのが、写真の世界でした。

見習いから修業して腕を磨き、ある印刷会社の専属カメラマンに。
その会社がバイクメーカーから請け負っていた、カタログ用の写真を撮っていました。
バブル期はバイクが飛ぶように売れたので、その仕事だけで食べていけましたが、バブルが弾けると一転、仕事が激減し、やがて会社も倒産。
さらにカメラマン生活を支えてくれた夫人が突然倒れ、診断の結果は「スキルス性胃がん」…すでに末期でした。

「なんでもっと早く気付いてやれなかったんだ。」

と自分を責めた渡邉さん。
2005年に夫人は他界。
渡邉さんは、フリーカメラマンとして、ブライダルフォトなど様々な仕事をこなし、二人の子供を育てました。

しかし、このままでは先が見えない。
他のカメラマンがやらないことをやって勝負していこう…そう考えた渡邉さんが始めたのが

「標高の低い山で撮る、山岳写真」

でした。

若い頃、山中湖から見た富士山の景色に感動して、富士の写真を撮るようになった渡邉さん。

「それで賞をもらって、仕事も来るようになりましたが、富士を撮っている写真家は多いので、普通に撮ったのではどうしても埋もれてしまう。そこで思い付いたのが“視点を変えること”だったんです。」

平地から撮るのではなく、見晴らしのいいJR中央線沿いの低い山に登って、その山頂から見た富士を撮る…このエリアでは、まだどのカメラマンもやっていないことでした。
さっそく山岳系の出版社に写真付きガイドブックの企画書を持ち込んだところ、ゴーサインが出て、渡邉さんは1年がかりで、高尾山から大月までの間にあるすべての山に登り、写真を撮りました。

渡邉明博著『高尾山と中央線沿線の山』(山と渓谷社)表紙より 岩殿山から望む大月市街と道志の山々

渡邉明博著『高尾山と中央線沿線の山』(山と渓谷社)表紙より 岩殿山から望む大月市街と道志の山々

入山日数は、年間およそ150日近く。週3日のペースで、山に登っていたことになります。
そんなハードな生活を支えてくれたのが、再婚した現在の夫人・陽子さんでした。
渡邉さんの健康面を気遣ってくれたお陰で、気兼ねなく取材に打ち込めたという渡邉さん。GPSを片手に、様々なルートを歩きました。
その上で

「この場所は足が滑りやすいので注意」「ここから見た富士は眺めが最高」

など、自分の足で稼いだ情報を地図に入れ、それぞれの山で撮影した写真とともに掲載。

そんなふうに手間隙かけて作った、渡邉さん初のガイドブック高尾山と中央線沿線の山は、去年の9月に発売されると、初版から好調なセールスを記録。
登山愛好家たちの間で

「使えるガイドブック」

として重宝されています。

渡邉明博

渡邉明博さん

渡邉さんが、低い山に登り続けるのは、もう一つ理由がありました。それは一般の登山者と触れ合えること。
渡邉さんは山に登ると必ず、途中で出逢った人たちに声を掛けています。
一緒に写真を撮ったり、山歩きのアドバイスを送ったり、メールのやりとりをしたり…
限られた人しか登れない高い山と違って、知らない人と繋がれるのも、低い山だからこそ。

渡邉明博

渡邉明博さん

渡邉さんは言います。

「低山は、ふもとに民家があったり、工場があったり…人の生活の営みが見えるんですよね。これからも、登山者との交流や、写真を通じて、低山の魅力を伝えていくのが、私の使命だと思っています」

【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年5月20日(土) より

八木亜希子,LOVE&MELODY

番組情報

LOVE & MELODY

毎週土曜日 8:30~10:50

番組HP

あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
今、聴きたい曲を書いて送ってくださいね。

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