番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
アニメファンが、作品の舞台になった場所を訪ねる「聖地巡礼」。
きょうは、人気アニメの舞台になった町で、訪れたファンたちと交流。
「おばちゃん」と親しまれ、町の活性化にも一役買っている本屋さんのグッとストーリーです。
茨城県中部にある、大洗町。
太平洋に面する小さな港町で、夏は海水浴でにぎわいますが、最近は、アニメファンが多数訪れる「聖地巡礼」の町としても有名です。
2012年10月に、テレビ放送がスタートした人気アニメ「ガールズ&パンツァー」。
略して「ガルパン」。「パンツァー」とは、ドイツ語で「戦車」のこと。戦車同士が戦う競技「戦車道(せんしゃどう)」が女子のたしなみ、とされる世界で、女子高生たちが全国大会を目指して戦う、というストーリー。
その舞台になっているのが大洗なのです。
「商工会の若い人が『大洗で、女子高生たちが戦車で戦うアニメが始まるよ』と店にポスターを貼りに来たんです。『何それ?』って思いました」と、ガルパンとの出逢いを語るのは、大洗町の商店街にある書店・江口又新堂(えぐちゆうしんどう)の店長、江口文子(えぐち・ふみこ)さん・61歳。
創業は幕末で、代々続く由緒あるお店ですが、雑貨なども売っている、町の小さな本屋さんです。
「実は私、昔からアニメが大好きで、歴史も好きな“歴女”なんです」という文子さん。
さっそくガルパンを観はじめましたが、戦国武将のように女子高生たちが戦い、しかも自分のよく知っている場所が次々と登場。文子さんはすっかり、ガルパンにハマってしまいました。
「毎回、ビデオを一時停止して『あ、あそこだ!』と言いながら観てました(笑)」
地元の商工会も、アニメの盛り上げに全面協力。ガルパンに登場するキャラクターのパネルを54体作り、どこのお店にどのキャラクターがあるかを隠して、ファンに探してもらう企画を考えました。
江口又新堂もその一つに選ばれ「左衛門佐(さえもんざ)」という、真田幸村を尊敬する女の子のパネルを置くことになりましたが、アニメが始まってしばらくしたある日、「これ、使ってください」とお客さんがやってきました。
そのお客さんが持ってきたのは、真田幸村のシンボルでもあった、六文銭が描いてある大きなのぼり旗。
「そこまでするファンの情熱に、ビックリしましたね〜。それから、うちを訪れるお客さんがどんどん増えていったんです」
聖地巡礼に来たアニメファンは、ほとんどが大洗の町には不案内です。
町のことを隅々までよく知っていて、ガルパンを毎回熱心に観ている文子さんは、まさにガイド役にうってつけ。
「あのシーンの場所はここ。こう行くと近道だから」と丁寧に案内。
キャラクターのパネルを探しに来たファンの間で「あの本屋さんに行くと、おばちゃんが町を詳しく案内してくれるよ」と口コミで噂が広がり、毎日全国から、何人ものお客さんが訪れるようになりました。
「アニメ好きなんで、お客さんと話をしていると、よく驚かれるんですよ。『おばちゃん、何でそんなに詳しいの? おかしいでしょ!』って(笑)」
しかし最初の頃は、地方の小さな書店なので、ガルパンの本もたくさん仕入れることができず、せっかく来てくれたファンに売るものがありませんでしたが、唯一、ガルパン関連でお店にあったのが、アニメにも出てくる「大洗町指定のゴミ袋」でした。
「これが好評で『大洗町の名前が入ってるから、行った記念になる』と、今でもみんな、まとめて買っていきますよ。でも、大洗以外じゃ使えないんですけどね(笑)」
実は、海に面する大洗は、東日本大震災で津波に襲われた被災地でもあります。
幸い、お店は津波の被害を免れましたが、震災後はお客さんも減り、一時は閉店も考えたという文子さん。
その窮地を救ってくれたのが、ガルパンでした。
今では、本棚にはアニメ関連本がぎっしり。
ファンが持ってきたフィギュアなど、ガルパングッズが所狭しと並び、今やファンの間で、江口又新堂は、大洗に行ったら必ず訪れるべきスポットになりました。
ファン同士の交流の場にもなっていて、その輪の中心には、いつも文子さんがいます。
「ガルパンのおかげで、全国のアニメファンと知り合えて、毎日が本当に楽しいです。
お客さんたちに『おばちゃん、何でそんなに詳しいの? おかしいでしょ!』は、私にとっては最高の褒め言葉。これからも大洗の魅力を、ガルパンファンに伝えていきますよ」
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年5月13日(土) より
番組情報
あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
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