ISと闘うクルド人とはどんな民族?【高嶋ひでたけのあさラジ!】
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7/14(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①
国家を持たない最大の民族クルド人の人口は3,000万人を超える
6:31~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター高橋和夫(国際政治学者・放送大学教授)
昔から勇敢な兵士とされているクルド人
「国家を持たない最大の民族」と呼ばれるクルド人はどのような民族なのか? 国際政治学者で放送大学教授でもある、高橋和夫氏に伺います。
高嶋)ISの話。それに伴う、ずっと昔から出てくるクルド人の話を伺いたいのですが、ISは、イラクの首相が「モスルが陥落した。もう勝利だ」と言っていました。これは間違いないのですか?
高橋)はい。イラクではイラク政府軍、そして北部のクルド人が勝った、ということです。これからは残党狩りだと思います。ただ、主力はもうシリアへ逃げていますから、これからの焦点は「シリアでのISとの戦い」ということになると思います。
高嶋)何だか、ラッカが注目されていますね。
高橋)そうですね。ラッカには既にクルド人の部隊が突入して、激しい戦闘が続いている状態ですね。
高嶋)それでね? フセイン大統領のころから、「クルド人」というのはよく出てきていて。北部の方にいて、何カ国にもまたがって。あれは、全部で何人くらいいるのですか?
高橋)しっかりした統計はないのですが、3,000万人は超えていると言われています。ということは、イラクやシリアの人口より多いのです。「世界でいちばん大きな、自分の国を持っていない民族」ということです。
高嶋)どうして、あんなに勇敢なのですか?
高橋)元々が山岳地帯で、「クルド人は昔から勇敢」ということになっていて。日本だと長野県で「武田の兵士は強い!」とか、言うじゃないですか。だから、まったく同じ発想で「山岳民族は強い!」とみんな思っているのですよ。
高嶋)なるほど。日本の戦国時代にたとえると、「真田のようである」、と。
高橋)そうなのです。ゲリラ戦も得意だし、本当に死を恐れずに戦う。好き嫌いは別に、「あいつらは強い」とみんな思っています。「男は『痛い』なんて言わない」とかね。本当に「武士」ですよ。クルドの男は。行けと言われたら、黙って行って、死んでいく。そういう、人たちですね。
昔は勝てば大国から使い捨てされる歴史だったが、現在は変わりつつある高嶋)軍事的にはどんな組織になっているのですか?
高橋)軍事的には、クルド人は3,000万人いるのですが……イラクのクルド人、シリアのクルド人、みんな仲が悪いのですよ。だからバラバラで。それぞれが強いのですけどね。アメリカやロシアがいろいろな国が武器やお金を渡して、クルド人をカードに使ってきた、というのがこれまでの歴史です。
高嶋)常にバックに、大国の思惑があって。そこから武器の供給とかを受けて。それで、戦いに勝った後に捨てられる……そういう歴史も、けっこう多いわけですよね。
高橋)そうですね。アメリカに使われて捨てられた、イラクのクルド人もいますね。現在はシリアのクルド人がすごく戦っているわけですが、アメリカが支援しているのですよ。「勝ったら、また捨てられるのでは?」とみんな見ています。
高嶋)それは実際、先生の長年の研究から見ると、「そうなるだろうな」という印象なのですか?
高橋)これまでなら、間違いなく捨てられていたと思います。ですが、今はメディアがありますから。クルド人もどんどん情報を出していて。そんなひどいことをしたらアメリカ人にもメンツがない。それと、クルド人も賢くなっていて、アメリカからだけ武器をもらっていてはろくなことにならないということで、ロシアからも武器をもらっている。ですので、問題は「ロシアとアメリカがどう話を付けるか?」と思います。
クルディスタンはまるでドバイ高嶋)山岳というのは、どのような暮らしをしているのですか?
高橋)雨が降って豊かなところで、農業や牧畜。そして今はイラクだとすごく石油がでる。経済的にやっていけると、自分たちは思っているのです。
高嶋)やはり「自分たちの国が欲しい」というのが、最後の望みですか?
高橋)そうですね。イラク北部に行けば、いますごく繁栄していて。イラク中戦争しているので、そこだけ安定している。ショッピングモールやホテルや会議場……まるでドバイです。
高嶋)そんなに栄えているのですか。
高橋)そうなのです。この間行ったときには、ついに日本料理店が寿司を出していて、驚きました。「クルディスタンで寿司か!」思いました。
高嶋)私は穴蔵に住んでいると思っていた……
高橋)いいえ。いまのイラクで多分いちばん良い生活をしています。