12日、福岡国際センターで初日を迎える大相撲九州場所。15日間、満員御礼が確実になりました。これで年6場所、90日間の大入りが決定。若貴ブームに沸いた1996年以来、21年ぶりとなります。
今場所、話題を集めているのは、昭和以降最高齢で幕内へ復帰する安美錦。土佐ノ海(現立川親方)の38歳6カ月を抜く、39歳です。番付発表時には、
「もう引退会見しかないと、思っていた」
とジョークを飛ばす。この明るさが土俵の闘志を支えます。さらに、
「白鵬関と、もう1度当たりたい」
と力を込めた。
昨年の夏場所2日目。栃ノ心戦で、立ち合い直後に左ひざから崩れ、翌3日目から休場したのは、左アキレス腱断裂が原因でした。次の名古屋場所でも全休したことから、秋場所は十両陥落が確実で、誰もが引退の2文字を思い描いたことでしょう。が、この時は、
「もう1度、弟弟子(日馬富士)の露払いをやる」
と現役続行を宣言。18年間、94場所を幕内でつとめ、歴代4位の記録の持ち主です。
振り返れば、20世紀に関取になった現役唯一の存在です。伝説といえば、03年の初場所。横綱・貴乃花、最後の一番で金星をあげました。この時、24歳。
「世代交代で押し出されるのが、相撲の世界」
と口にしながら、十両でもあきらめずに精進したわけです。そうはいっても、自身は気にしていなくても、まわりには若い力士がたくさん。
とりわけ、21歳で同じ青森県出身、阿武咲の父親が
「おれと同い年。さすがに、驚いたというよりがっくりきた」
と言う気持ちもわかります。一方で、こんなこともあったそう。9月、安室奈美恵が1年後の引退を発表すると、知人から直後に電話があった。安という漢字だけを見て、勘違い。あわてて連絡をしたのだとか。
「やめるのか? 引退するのか」。
突然、言われて仰天したエピソードも今では、笑い話になりました。
現在、安美錦が気になっているのが宇良。先場所2日目に右ひざじん帯を痛め、初めての休場でした。九州場所で復帰を目指しているものの、まだ出場するかは、明言していません。これまで巡業などで、いろいろと指導している。
「努力をしているから、教えたことがパッとできるよ」
と期待しています。安美錦は両ひざに爆弾を抱えながら、土俵をつとめている。十両陥落前は、土俵でのけいこを避けて、調整を行ってきました。
でも、もし、再発しても治せばいいだけと開き直ったのが奏功しました。両ひざはサポーターで固定しなければ、思うように動かない。常時、
「痛みとしびれがある。相撲勘と、テクニックだけですよ」
と言います。そんな、頑張っている力士には、うれしいニュースがありました。九州場所の土俵は今回から、両国国技館と同じ、埼玉・川越の荒木田土を使うことに。以前、力士側から、「地方場所は、滑りやすい」と声があがり、今場所から実行します。約45トンを持ちこみました。
「何歳になっても、安美錦らしさを出したい。一生懸命にやる」。
その境地は、1年はやいが不惑と言えるでしょう。
11月7日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」