プーチンと柔道 その裏側に潜むマフィアネットワークとは? 佐藤優

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11月21日(火) 佐藤優のあさラジ!「スポーツ人間模様」

プーチン 柔道

講道館を訪問し練習に参加、技を決めるプーチン・ロシア(元)大統領 2000年9月5日 写真提供:産経新聞社

ロシアのプーチン大統領は柔道家としても有名です。

「13歳で柔道に出会わなければ、不良になっていた」「柔の道をロシアに広めた功労者」などと、日本では美談として語られています。もちろん、それも本当のことですが、実は裏の要素もあることをご存じでしょうか。

ソ連時代、ソ連はアマチュアなのだけれども、オリンピックで金メダルを獲らせるためにスポーツ学校を作っていました。これは保育園、幼稚園で腕力のある子だったらレスリング、ボクシングに回そうということで小学校のときから入れています。

そして、筋肉増強剤であるとか、今だったらドーピングで引っかかるようなことをやっていた。その結果メダルはたくさん獲れるのだけれども、そこまで行けない人や体を壊す人も沢山でました。そういった人たちはソ連時代は国が運営しているさまざまなスポーツ施設のコーチになったりする事ができたのですが、ソ連が崩壊してから行き場所がなくなってしまった。

腕力がある。その上、先輩、後輩のネットワークができている。そんな相当数が新しくできたナイトクラブやレストラン、あるいはちょっといかがわしいような飲食店の用心棒になっていっていった。
そして、このネットワークができると、ものすごく恐ろしいマフィアになってしまう。実際、ロシアには「スポーツ組」といわれるマフィアがあります。

エリツィンが作った「スポーツ観光国家委員会」とは?

エリツィン大統領が「このマフィアをこのままにしておいたらまずい」ということで「スポーツ観光国家委員会」という役所を作ります。日本の文部科学省のような一つの役所です。その役所は予算はあまりない。そのかわり、そこの石油を輸出する権利、魚を輸出する権利、たばこやお酒を無税で輸入して勝手に売ることで自分たちでお金を作れという事になります。

そうなるとそこでは相当の罹患構造があるし、腐敗・汚職が起きます。そこの最初の大臣をやっていたのがタルピシェフという人でエリツィンの不遇の時代にテニスを一緒にやっていたテニスの先生です。

プーチン政権時代になると、そのスポーツ観光国家委員会にプーチンの柔道の先生とか、柔道仲間がみんな来るようになり、いわば裏世界を仕切りだした。ロシアは大きい国です。いちいち、警察や裁判でやっていると時間がかかって面倒だというときにはなんとなく怖い人が出てきて「お前、誰相手に喧嘩しているのかわかっているんだな」というような形で問題解決してしまうようなところがある。

ロシア語のウィキペディアには載らないプーチンの愛人・カバエワの記述

その全体の元締めがプーチンさんだという要素があるわけです。だから、ロシアではウィキペディア。日本語のウィキペディア、英語のウィキペディアだと、プーチンさんには実はカバエワという新体操の選手が愛人でカバエワさんは子どもを二人生んでいて、父親は誰かということは明らかにしていないという記述がありますが、ロシア語にはありません。それはそういうことを書いたらどういう怖い人が来るのかということをみんなよくわかっているから。

だからロシアという国はどこか怖いところがあるけれども、その怖いところというのをプーチンがいわば元締めをしているスポーツネットワークがかなり持っているということなので、スポーツの裏の面というのがあります。

だからあの国でドーピングの問題とかスポーツで出てくる。だけど、特に誰も処罰されないであいまいになって、逆に西側から因縁をつけられているようになるのは、どうもこのプーチン政権になってスポーツの闇の世界がますます深まっているからだと私は見ています。

11月21日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」

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