4/28(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
安倍総理「日露の努力の向こうに平和条約がある」
7:10~やじうまニュースネットワーク:宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・外交評論家)
共同経済活動実現に向け官民合同の調査団を北方領土へ派遣安倍総理大臣は27日午後、モスクワでロシアのプーチン大統領と会談し、北方領土問題での共同経済活動の実現に向け、事業案に優先順位を付ける為、専門家らによる合同の官民の調査団を北方四島へ来月中にも派遣することで合意しました。また北朝鮮への対応については、国連安全保障理事会決議の意向と更なる挑発行動の自制を働き掛けることで一致しました。
高嶋)いやあ、もう17回目だということなのですけど、今日の新聞報道なんかでは「領土交渉見通せず」というようなことで、まあちょっとロシアペースというような雰囲気なのですが。まず経過をニッポン放送報道部の森田耕次解説委員です。
森田)安倍総理とプーチン大統領の首脳会談、今回が17回目、7月のドイツでのG20首脳会合でも首脳会談を開くことを申し出ました。去年12月の山口と東京での日露首脳会談では、北方領土での共同経済活動の実現に向けた協議を始めるということで合意しまして、今年に入って先月初めての外務次官級協議を東京で開いて、漁業や観光、医療分野などで具体的な事業案を双方から提示しました。
昨日の3時間に及んだ首脳会談では、その北方領土での共同経済活動実現に向けて、事業案に優先順位を付ける為に専門家らによる官民合同の調査団を北方四島へ来月5月中に派遣するということで合意しました。安倍総理大臣の共同記者発表です。安倍総理)5月中にも官民による現地調査団を派遣することも合意しました。いよいよ日露双方の手によってプロジェクトの具体化が始まります。そのような双方の努力の向こうに、私とウラジーミルが目指す平和条約があります。
領土問題の解決に結びつかない構図森田)安倍総理としては経済連携をカードに停滞する領土交渉の打開を図りたい意向なのですが、そもそもこの共同経済活動に関する協議を巡りましては、日露双方が北方領土がどちらの国に帰属するかという基本問題を議題としないという考えで一致しておりますので、いくら協議を積み重ねても領土問題の解決には直接結び付かないという構図になっています。
また日本政府は平和条約締結の再開を繰り返しロシアに求めているのですが、経済協力への関心を強めるロシアからは同意を得られておりません。日本が融和路線を取ったとしてもアメリカの軍事動向を警戒するロシアとしては、北朝鮮を睨んで日米同盟強化を急ぐ日本に対し反発を強めているという風にもされております。
昨日の首脳会談でも北朝鮮政策につきまして話し合われましたが、緊密に連携するということでは一致しました。安倍総理です。安倍総理)ロシアは安保理常任理事国であり、六者会合の重要なパートナーであります。北朝鮮に対し、安保理決議を完全に順守し、更なる挑発行為を自制するよう働き掛けていくことで一致いたしました。
森田)一方プーチン大統領は同じ共同記者発表で「軍事的な圧力を掛けることは自制すべきだ」と指摘した上で北朝鮮の核問題を巡る6ヵ国協議の再開を提案しています。
これに対しアメリカのトランプ政権は昨日声明を出しまして、北朝鮮への核放棄を迫る為に経済制裁を強化し外交圧力を加えることで対話を模索するという基本方針を明らかにしました。ただ朝鮮半島周辺でのアメリカ軍の即応体制は維持しておりまして、硬軟使い分けて北朝鮮への睨みを効かせる構えです。高嶋)森田解説委員の説明を聴いていても、一言でいうと、何かロシアの方が役者が上で、それで結論だけ言うと、やらずぼったくりだな、みたいな。良いように共同調査団とか経済活動だとかなんだかんだとやられて、それで「その向こうに平和条約が見える」って安倍さんが言っていましたけども、私には見えないのですよね。
宮家)ロシア側が言わないからね。
高嶋)これ外交官で長らくやってきて、交渉事を散々やって来た宮家さんとしては、どういう流れを汲んだら平和条約に辿り着くのですか?
宮家)まず一本一本、一回一回が完結したドラマじゃなくて、これ連続ドラマですから。だから今回も第17回が終わって、続くってことですよね。
高嶋)それ安倍さんは分かっているのですかね?
宮家)もちろんそりゃそうですよ。それでやっぱりロシアが、最近あまり言わないけど、不正にあの島を盗って、持っているのだから、取り返す方がそれは辛いですよね。持っている方が強いに決まっているから。そこでどうやってマッサージするかという話でしょ。そうなるとやっぱり時間掛かりますよ。
これ昔ボクシングは15ラウンド、今は12ラウンドですか? これもう17ラウンドやっているのだけど、30くらいやるかもしれませんよ。本当に。それくらい時間を掛ける価値はあると思っていますから。高嶋)先鋒は根負けするくらいのことをやって、そうすると平和条約が見えて来るということですか?
宮家)そうそう。要するに彼らとしては「平和条約」って口に出した途端にそれが動いちゃうから、最後の最後まで経済をどこまで日本が協力するのかを見ながら言おうとしているわけでしょう。
高嶋)平和条約締結後に島を返すという、昔の文言が蘇って来るのですね。
宮家)そういう意味では無効もしたたかだけど、こちらだって相当したたかにやっていますよ。それは言えると思う。
高嶋)何か良い様にやられているような気がするのですけど。
宮家)そうでもないのではないですかね? ただ相手はモノを持っていて返さないのだから、相手はやはり強いのですよ。だけどそれをやるのが外交だから、やはりこれは変な言い方ですけど、外交をやってきたと言うけども、役人同士が話し合って、主権の問題でしょ? これ一致するわけ無いのですよね。それを打開できるのは政治レベルの決断だけ。
高嶋)いずれね。確かに人間の心理って面白いもので、金を借りる時は貸す方が強いのですよ。「貸して、貸して! いつか返すから!」と言う。だけど貸しちゃうと今度は借りた方が強いのですよね。「返せ返せ!」「いやその内返すから、あともうちょっと待って!」とかね、やれなんだかんだって。そんな関係ですよね。
宮家)まあ今は売り手市場ですよね。モノを持っているから。
北朝鮮問題に対してロシアとどう向き合っていくか高嶋)それで北朝鮮についてだって、何かテレビなんて見ていると外交に強い人たちが「安倍さんだけだ。トランプさんも良く知っていて、プーチンさんも良く知っている。それでその太鼓ふたつを話し合いで結び付けるのは安倍さんだけなんだ」みたいなことを言いますけど、可能なのですかね?
宮家)それは時と場合に依るでしょうね。今ロシアとアメリカで一番モメているのはいくつかあるのだけど、まずシリアの問題でしょう。これ中々日本は入っていけないですよね。それから経済制裁の問題もある。これもどっちかというとちょっと違いますよね。そしてさらにはトランプ陣営で選挙中にロシアの変な人たちと付き合ったのではないかというこういう話も、これ中々イシューとしては日本が入りにくいという問題はあると思います。
だけどそれを除けばやはり個人的な関係が良いということは、どこかのきっかけで物事が進むという役割を果たすことがあるというのは事実だと思いますよ。
さっき森田さんの話の中に、ロシア側が6ヶ国協議、これを持ち出して来たということは、これは振り出しに戻るのですか? 前進なのですか?宮家)ロシアにとって北朝鮮の問題で関与できるといったら、六者協議でしょ。メンバーに入っているのですから。ということは、六者協議をやりましょうということは、要するに「ロシアを外さないでね。舐めるなよ」と。
高嶋)あ「舐めるなよ」の方が強いのですか。
宮家)私はそう思いますよ。このまま行ったら「何かしらないけど中国とアメリカと日本と韓国で何言ってんの? 勝手に決めんじゃねーよ。朝鮮の上にはロシアがあるんだぞ、知ってんのかお前」みたいな、こういうことですよね。
高嶋)じゃあ別に前進している話ではないんだ。
宮家)前進じゃないですよね。要するに自分を外さないでくれということだと思いますよ。それで中国と北朝鮮の関係が悪くなったら、そこでちょこちょこっと漁夫の利を取ろうとするか、影響力を拡大しようとするか。少なくとも影響力を誇示すること、これも大事な外交の仕事ですから、そういう形で変性球を投げて来ているのだと思います。
米・中・露それぞれの関係高嶋)まとめるような話ではないのですけども、シリアについてトランプさんがドーンドーンとやったのは、あれは不愉快ですよね。
宮家)不愉快でしょう。
高嶋)それと北朝鮮についても今も出ましたけれども、ロシア抜きで勝手に攻撃なんてされたらたまったもんじゃない、みたいなね。いろいろ腹に一物背に荷物である訳ですよ。そうすると、その辺の結論というか、これからどっちの方にどういう風に進んでいきそうなのですか、大国の思惑も全部含めて。中国の思いも全部含めて。
宮家)まあ戦略的にはロシアよりも中国の方が遥かにアメリカから見れば心配ですよ。だってロシアは人口減っているし、経済の規模だって小さいし、資源しかないじゃないですか。それに対して中国の方が遥かに大きいですからね。
だけどもやっぱりワシントンなんか見ていると、ロシアに対する警戒心は非常に高い。ですから中国とロシアをアメリカがどう見るかと言ったら、中国の方が心配だけどやっぱりロシアもやらなきゃいけないな、とフラフラしている。それで状況としては、例えばテロや大きな事件であるとか、そういうことがあればその米中露の関係も変わっていくということだろうと思いますけどね。