井浦新×瑛太、底知れぬ“闇”の先にあるもの『光』
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第314回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、11月25日から公開となる『光』を掘り起こします。
三浦しをんの異色作、ついに映画化
「まほろ駅前」シリーズや「舟を編む」などの直木賞作家・三浦しをんの小説の中でも、残酷で暴力的な作風から衝撃作とも言われている「光」。『まほろ駅前多田便利軒』でもその確かな手腕を発揮した大森立嗣監督の手で、映画化が実現しました。
東京の離島、美浜島。中学生の信之は交際中の同級生・美花を恐ろしい暴力から守るために、取り返しのつかない罪を犯してしまう。
しかしその翌日、島に津波が襲いかかりすべてが消失。生き残ったのは信之のほかに美花と幼馴染みの輔、数人の大人たちだけだった。それから25年後、島を出て妻子と暮らす信之の前に輔が現れる。彼は25年前の事件の真相をほのめかし…。
大災害から生き残った3人の男女が25年後に再会、逃れることのできない運命に翻弄されていくさまを描いたサスペンスドラマ。
信之と輔を演じるのは、お互いにかねてから共演を望んでいた井浦新と瑛太。二人の研ぎすまされた感性は大きな化学反応を生み出し、冷酷なまでの狂気とその怪物性が観る者の胸に突き刺さります。
また信之の妻・南海子役は橋本マナミ、過去を捨てて華やかな芸能界で貪欲に生きる美花役には長谷川京子を起用。彼女たちが放つ芳醇な母性と色気が充満し、作品世界にさらなる奥行きが。
さらに南果歩、平田満などベテラン勢も適材適所の好演を見せています。
タイトルは『光』だけど、一向に明るい一筋が見えない重苦しさ。まるで光を当てることで出来た“影”の部分を徹底的に掘り下げたような作品です。
暴力の連鎖を断ち切ることが出来ない絶望ととことん向き合った制作スタッフ・俳優陣が体現する、人間が持つ底知れぬ“闇”。その“闇”の向こう側にある生命力の強さに圧倒されることでしょう。
光
2017年11月25日から新宿武蔵野館・有楽町スバル座ほか全国ロードショー
監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん「光」集英社文庫刊
出演:井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ、南果歩、平田満 ほか
©三浦しをん/集英社 (C)2017「光」製作委員会
公式サイト http://hi-ka-ri.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/