電子戦の兵士~軍隊ではなく民間軍事会社で養成しているのはなぜか?
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12/19(火)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①
軍隊ではない民間人が戦場に赴く傭兵の歴史
6:31~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター高橋和夫(放送大学教授・国際政治学者)
民間軍備会社と昔ながらの“傭兵”との違い
現代の戦争には、情報戦や電子戦といったこれまでに無い高度な分野が戦略的意味を持っているが、これらの分野の兵士を軍隊ではなく、民間軍事警備会社が養成することが多いという。放送大学の高橋和夫教授が電子戦兵士の民間委託の問題について詳しく解説する。
高嶋)今日は民間軍事警備会社が今は何やら電子戦、電磁波を巡る戦いに勝たなければならないということで、民間の軍事警備会社が非常に活躍しているということですが。昔よくあった自分で代わりに戦うという“傭兵”なんかとは全然違うのですか?
高橋)基本的には同じものだと私は思います。傭兵の時代というのは昔からありました。それからお国が戦争をするということになって軍隊は国だけで戦争をするという時代がしばらく続きましたが、20世紀の終わりくらいから民間の人たちが会社を立ち上げて「戦争を引き受けますよ」とか「応援に行きますよ」といった商売が広がってきたのです。
それが傭兵とどう違うのかという話ですが、今でもローマ法王の護衛兵は皆スイスから来ています。昔スイスというのは山国で貧しかったから傭兵として皆イタリアで戦ってお金を貰っていたのです。イタリアの都市国家はヴェネツィアとかフィレンツェとかは戦争をしていましたが、イタリア人はスイス人に戦わせてお金を払って戦争をしていたのですよ。その名残がまだローマのバチカンにもあるのです。高嶋)考えてみれば、今は徴兵する国の方がどちらかと言うと珍しいですよね。
高橋)段々そうなって来ましたね。
高嶋)だからアメリカでも特別な理由があるというか、兵隊になると有利なことがいろいろあってその為に行くという人が結構多いみたいですね。
高橋)そうなのですね。労働許可証が取れるとか市民権が取りやすいとか、あるいは既に市民の場合はお金が貰えるので、それを貯金して大学に行きたいとか。もちろん愛国心に燃えて「俺はやるぞ!」と言う人たちもいるのですけど経済的に必要だからという人もいて、実は今アメリカは“お金持ちは戦争に行かない”というところですよね。
電子戦の兵士を民間委託する理由高嶋)最初に言った電子戦、難しいですがこれを制さなければならないとは。こういう人たちというのはどういう人が来るのですか?
高橋)まあコンピューターオタクのような人たちを使うわけですよね。そういう人たちを軍隊で雇うとなると軍隊の給料ではちょっと雇いきれないということもあるので、民間軍事警備会社にやってもらおうということで、それはそれで能率が良いのですけど、そういう人たちが情報を流してしまって“スノーデン事件”みたいなものが起こってしまうということがあって、まあ痛し痒しなところがありますね。
高嶋)相当勉強をしていないと今の軍事的な情報システムのいろんなやり方というのは理解できないですよね。
高橋)そうなのです。実は兵士というのはすごいマッチョで重い兵器を運んで走るという人ももちろん現場にはいるのですけど、こういう電子戦に関わる人というのはそんな感じではなくて、ある意味女性や体力がそんなに無くてもやれるという新しいタイプの兵士が育ちつつあるということですね。
民間人が戦場へ赴くということの問題
高嶋)先生の資料によると「無人偵察機の操作をはじめステルス爆撃機、戦車、AH-64“アパッチ”ヘリコプター、多くの軍艦の防空システムまで民間軍事警備会社職員がやっていると。
高橋)そうなのです。アメリカの場合なのですが、例えばそういう専門家を軍隊で2~3年の間に訓練してずっと高い給料で雇い続けるというのは難しいから、だったらもう民間に任せてしまおうということになるのですが、実際に民間人が戦争に関わって、兵士が戦場で相手の兵士を殺す場合は戦争ですけど、民間人が人を殺してしまったらただの殺人ではないかという倫理的・法的な問題も残っているのですね。
高嶋)日本の自衛隊はどうなのですか?
高橋)自衛隊は電子戦の部門はまだアメリカほどでは無いですけど、少しは民間に委託した方が良いという場面も出て来ていますね。特にサイバー面はそういった傾向が強いと思います。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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