【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第391回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、4月14日から公開の『さよなら、僕のマンハッタン』を掘り起こします。
名匠マーク・ウェブ監督が温め続けた青春ドラマ、ついに完成
ハリウッドでは“ブラックリスト”と呼ばれるものがあります。これは優秀ながらも未だ映画化されていない脚本を列挙したリストで、マーク・ウェブ監督がブラックリストを通じて本作の脚本に出会ったのは、センセーショナルなデビューを飾った『(500)日のサマー』を手がけるよりも以前のことでした。
ウェブ監督が映画化を熱望し、10年以上の歳月をかけてついに完成させた最新作、それが『さよなら、僕のマンハッタン』です。
ニューヨーク、マンハッタン。大学を卒業して親元を離れたトーマスが一人暮らしをするアパートに、W・F・ジェラルドと名乗る中年男性が引っ越してくる。ちょっぴり風変わりな隣人と親しくなったトーマスは、やがて彼から人生のアドバイスを受けるように。そんなある日、想いを寄せる古書店員のミミと出かけたナイトクラブで、トーマスは父が愛人のジョハンナと密会する現場を目撃。ジェラルドの助言を頼りに、ジョハンナを父から引き離そうと躍起になるトーマスだったが、逆に彼女の底知れぬ魅力に溺れていき…。
ニューヨークで暮らす青年が隣人との交流や恋愛、父親の不倫を経て成長していく姿を描いたヒューマンドラマ。観る者に“大人でも子どもでもなかった”あの頃を思い出させてくれる、甘くもほろ苦い“青春”が詰まった一作です。
悩める主人公・トーマスを演じるのは、今秋公開となる『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』への出演も決定し、ますます注目を集める英国俳優カラム・ターナー。愛すべき隣人ジェラルド役にオスカー俳優のジェフ・ブリッジス、父親役にピアース・ブロスナン、愛人のジョハンナ役にケイト・ベッキンセールと華やかな顔ぶれが揃い、ノスタルジックで味わい深い青春映画が誕生しました。
サイモン&ガーファンクルをはじめ、ボブ・ディランやルー・リード、さらにジャズの名匠たちの曲も流れ、音楽好きにとっても嬉しい本作。実はこの映画の原題は、サイモン&ガーファンクルの名曲と同じ「The Only Living Boy in New York」。それを踏まえて観てみると、主人公のトーマスは、サイモン&ガーファンクルの歌詞に登場する“トム”と重なり、さらにもうひとつ驚きなのは、トーマスのフルネームが“トーマス・ウェブ”だということ。
マーク・ウェブ監督が『(500)日のサマー』でブレイク後、ハリウッドの洗礼を浴びた『アメイジング・スパイダーマン』の舞台と同じニューヨークの地で、長年温め続けてきた“原点回帰”的な作品を手がけたのも、名前が同じなのも、これは偶然ではなく必然なのでしょうか。
思い返すたびに新たな発見や気になるポイントがあり、深い深い余韻に浸れるのも本作の魅力です。
さよなら、僕のマンハッタン
2018年4月14日から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国順次公開
監督:マーク・ウェブ
出演:カラム・ターナー、ジェフ・ブリッジス、ピアース・ブロスナン、シンシア・ニクソン、ケイト・ベッキンセール、カーシー・クレモンズ ほか
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公式サイト http://www.longride.jp/olb-movie/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/