富士フイルムのゼロックス買収でどんな条件闘争が起きているのか?
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5/7 FM93 AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!⑤
富士フイルム~ゼロックス買収計画で大株主と対立激化
7:44~ココだけニュース スクープUP!:コメンテーター須田慎一郎(ジャーナリスト)
現在の富士フイルムはカメラ以外の部門で世界シェアの8割を担っている
富士ゼロックスのニュージーランドやオーストラリアの子会社でおよそ1年前に不正会計が行われたのをきっかけに、富士フイルムホールディングスは、アメリカのゼロックス買収に着手したものの、ゼロックスの大株主が買収に反対。この複雑な構図と今後の見込みについて、ジャーナリストの須田慎一郎が解説した。
飯田)「富士ゼロックス」は富士フイルムとゼロックスの合弁会社です。そこで不正会計があったのが、まず発端ですね。それで、富士フイルムは一足飛びに「本体のゼロックスも買収してしまおう!」ということになったわけですね。
須田)特に富士フイルムの方ですが、かつてはカメラのフィルムメーカーとして日本のトップメーカーでしたが、もうカメラがデジカメに移行してしまったため、シェアがどんどん下がり、社内の体制、事業の柱をどんどん変えていくということで、いまはヘルスケア商品(化粧品など)が売り上げの4割を占める状況です。やはり化学メーカーなので、その辺は得意だったのです。あるいは、ニッチな分野だと「偏光層保護フィルム」というのがあります。液晶ディスプレイの表面に貼る、保護フィルムです。現在、液晶ディスプレイというのはスマホなど多くの商品が出ていますよね。その分野では世界シェアの8割を持っています。意外に知られていないけど、富士フイルムは言ってみればエクセレント・カンパニーです。
不正会計はアメリカでは大問題として扱われる
飯田)フィルム技術を転用してそういう分野に転用しているのですね。
須田)さまざまな分野に転用しています。その意味では、非常に優良企業と考えていい。
逆に言えば、ゼロックスサイドからすると、庇を貸して母屋をとられるみたいなことになるでしょうけれど、そういう例はけっこうあります。セブンイレブンもそうですね。元はアメリカのサウスランド社が運営していたのですが、その権利を買って日本国内で始めて、結果的にサウスランド社を買収しましたよね。ですから、日本的経済手法で、アメリカの母屋を建て直すというか、成長企業へ切り替えようとしたのですが、不正会計問題が発生してしまった。
我々日本人は「不正会計」への問題意識が低いのですが、海外の、特にアメリカでは不正会計というと、「企業としていちばんダメなことをしてしまった」という意識が強くなるのです。なので、自分たちの株式を買収というか、一定の交換比率で買い取るのですが、「不正会計をやっているのに、それを前提に考えると我々は損をするのでは」という意識をゼロックス株主は持ってしまう。「そこを適正に評価されない限り、不正会計を前提とした交換比率に乗ることはできない」という主張なのです。あえてケチを付け、交渉を有利に進めようとする条件闘争の一環
須田)ただ、あえて言わせていただくと、そこでケチをつけて、いい条件を引き出そうとしているのかな。そういう気配の方が、私は強いと思います。交渉ですからね。
飯田)なるほど。揉めた方が株の買い取り価格が上がるということですか。
須田)そうです、「こうした不正会計問題を引き起こしたのだから、もう少し引き上げろ!」みたいな交渉に持って行きやすいのです。
飯田)今回、いちばん声を上げている大株主のカール・アイカーンさんがいらっしゃいますが、この人は「物言う株主」とか、よく形容される人ですよね。「そうやって物を言うことで、自分の持っている株の価値を上げていこう!」というのがあるわけですか?
須田)逆にそっちがメインの目的じゃないかな。ゴネ得ですよ。結果的にこの案件をパーにするのでなく、ゴネることでより良い条件を引き出すための交渉術と考えていいと思います。
飯田)ただ、富士フイルム側としては、「子会社は合弁会社で不正会計が起こった。責任はゼロックス側にもある」と思うのが、人情というか、そこで突っぱねている部分もあるわけですかね。
須田)ただ、そうは言っても、持株会社の富士ホールディングスが全面的にオペレーションしてきたわけですからね。それはちょっと言えないだろうな。
飯田)経営陣も日本側から送り込んだから、単純に資本構造だけで判断するわけにもいかない。
須田)条件闘争の一環と考えていいと思います。これで買収が白紙撤回されることはないと思います。
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