米朝首脳会談~1対1でやる北朝鮮のチャンスとリスク

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6/1  FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②

金英哲氏がトランプ大統領に親書を渡すためにワシントンを訪問へ
7:10~お早う! ニュースネットワークその1:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家)

ポンペオ 米 国務長官 金英哲 朝鮮労働党副委員長 北朝鮮

ポンペオ米国務長官(左から2人目)と会談する北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長(右手前)=2018年5月1日、ニューヨーク(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

米朝首脳会議~場所以外には何も決まっていない?

ニューヨークを訪れている北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長とアメリカのポンペオ国務長官は昨日、2回目の会談をおこなった。会談後、会見をしたポンペオ氏は米朝首脳会談について「大きな進展があったが、まだ多くの課題が残っている」と述べている。また、金英哲副委員長が今日にもワシントンを訪問し、トランプ大統領に金正恩氏の親書を渡すことを明らかにした。

飯田)この会見のなかでポンペオ氏は、北朝鮮の核問題をめぐって米朝が合意を結ぶには日韓の同意が前提になるという認識も示したということです。まずは、この金正恩氏最側近の訪米というところ。表に出ていないことがいっぱいあるのでしょうね。

宮家)そもそも、会うと言い出したのは3月8日ですよね。あれから3カ月近く経ってやっと始まったのですよ、まともな交渉が。普通は首脳会談といったら、下手をしたら何カ月も前から一生懸命事務的に積み上げて合意の文書も考えてやるものだけど、何も決まっていない。ようやく場所が決まって現場を見に行っている連中と、実務的なことをやっている連中と、政治レベルでやっている連中、必死で駆け込みをやっているわけですよ。大丈夫なのかと普通は思いますよね。

中国、ロシアの保険をかけた金正恩委員長

飯田)現場にいらっしゃった感覚だと、あまりに遅いというのがまずあるわけですか?

宮家)あまりにも急に短時間で全てのものを決めなきゃいけないから、どうしても誤算が残る可能性はあるでしょう。長くやったから大丈夫ってことはないですけど、しかし勢いというのはありますからね。ポイントは簡単で、北朝鮮が本気で核兵器を放棄する気があるのかという話です。もう1つの懸念材料は、トランプさんは本当はやりたいだけなので別に中身はどうでもいいと思っているのではないのかという疑問もあるわけです。トランプさんがちゃんと見ていて判断を正しくするか、それとも騙されちゃうかということが1番のポイントになるけれど、いまのところポンペオさんがやっている限りにおいてはかなり厳しくやっている。イランだったら賢いから国連の5大国とドイツと多国間協議をやったわけですが、北朝鮮はというか1対1でやるわけです。これは相当勇気が必要ですので、これはよくやったなと思います。アメリカが本気で圧力をかけているわけですから、相当なプレッシャーだと思いますよ。
中国とかロシアとは話はしているけれども、1対1でやらなくてはいけないというのは、北朝鮮にとってはチャンスでもありピンチでもあると思います。

飯田)中露と北朝鮮の関係ですけれど、メールで「てっちゃん」さん・川崎中原区の方から「金委員長の方は昨日、ロシアの外務大臣と平壌で会談をしたそうですよね。米朝会談の前に中韓露と会談をおこなって協力をアピール。よっぽどこれはトランプさんが脅威なんでしょうね。北のトップが外務大臣と会談というのは格からしたら合わないと思うのですが、これはどうなんでしょうか、金委員長はなりふり構わずなんでしょうか?」という。

宮家)その通りでしょうね。彼からすればアメリカと1対1でやるのはしんどい話ですよ、なにしろ31歳ですからね。ということはいろいろな保険をかけたいという気持ちはわかる。

飯田)いろいろなところに仲間がいるんだぞという。

宮家)だから中国の保険もかけた。ロシアについては中国ほど頼りにしていない、しかしロシアの方だって関与したいわけです。最大の問題は格上下もあるかもしれないけれど、北朝鮮でこの問題の担当官は金正恩本人なのですよ。他に決められる人はいないのです。ですからロシアからある程度の人が来れば会うわけですよ。他の人に会って伝聞で聞くより自分でやりたいでしょう。つまり恐ろしいことだけれどトップが担当官をやっているということですよ。
これはもの凄く危ういですよね。下に任せて積み上げてきて最終的な政治判断をするわけですけれど、全部自分が仕切ろうとしたら相当な事務量になると思います。

通常の外交交渉と異なる今回の米朝交渉

飯田)そうすると決めることはいっぱいあるわけですよね。核の廃棄1つとってもどういう手順でやるとか、どのくらいの長さでやるとか、外から何人入れるだとか、決めきれない可能性があるわけですよね。

宮家)というか、どこまで腹を括っているかがよく分からないですよね。いまポンペオさんと会っている彼が側近だと言われているけれど、彼は恐らく知恵袋なのだと思います。だけどあの2人でどこまでやれるのか……。こういう首脳会談というのは組織的に何十人も関与してやるものですけれど、北朝鮮は別ですよね。

飯田)北朝鮮は民主国家ではない独裁国家だからそういう決め方をするのだろう、一方で民主主義国家のアメリカの方も、トランプさんというのはどちらかというとトップダウンで決めていくタイプと。

宮家)両方独裁者ですからね、今回は。恐らく下にいる人たちは物凄く振り回されていると思いますよ。だって24日にやらないって言ったでしょう。そしたら翌日にやっぱりやるって言うわけでしょう。どっちなんだよと。私だったら怒りますよ。

飯田)先週のこの番組も振り回されたわけですよね。

宮家)やっぱり普通の外交交渉では全くないです。ですから危険と期待が錯綜しますね。

北朝鮮が唯一武器である核を手放すことはない

飯田)先程宮家さんがおっしゃった「核をどうするか」というところで、アメリカは一応核廃棄を求めていますよね。どうですか、北がこれを廃棄するかというのは?

宮家)常識的に考えたら廃棄します? だってリビア方式とかいろいろなことを言われるけれども、北朝鮮にとって軍事力と言ったって核以外はどう見たって博物館ですよ。あんなものでアメリカや連合軍に勝てるわけがないですよ。核を持たなかったらやられてしまうと思うのが普通です。だから放棄するというのは余程の理由がなければならない。それを経済的な理由で「これで豊かになりますよ」とトランプさんは言っているけれど、そんなことではとてもじゃないですけど放棄なんてしませんよ。放棄しないと政権やこの国が終わる、背に腹は代えられないというくらいの圧力をかけないと。経済的に豊かになりますって、そんなもので安全保障を放棄する人なんていないと思います。
僕は放棄しない方にかける。だとするといま北朝鮮は国ぐるみで嘘をついているということになるわけです。

飯田)放棄するよというポーズだけ見せているような形。

宮家)それをちゃんとトランプさんが見抜けば、今度は会談が成立しない。仮に成立しても短期間で終わる。最悪の場合は「これから話し合いを続けましょう」と、時間だけがかかって結局核兵器は維持されちゃうわけですよね。トランプさんの判断が正しいことを祈るしかないと思います。

「リビア方式」という表現は逆効果

飯田)そのプロセスについてリビア方式というのがありますけれど、結局カダフィ大佐はその後、倒されてしまった。

宮家)それはそうだけど、カダフィが核兵器を放棄したから潰れたわけじゃないんですよ。あれはアラブの春という現象がリビアにも及んで内戦が起きたわけです。ということは核兵器がなくたってカダフィは倒れたかもしれないのですよ。倒れたカダフィのことを考えてリビア方式なんて言ったら、ますます北朝鮮は疑心暗鬼になるから、余計なことは言わない方がいい。みんなリビア方式リビア方式と言うけれど、かえって逆効果だと私は思います。

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