世界遺産は観光資源となるのか~失敗した岩見銀山の場合
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月2日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。長崎・天草地方の潜伏キリシタンの世界文化遺産登録の報道を受け、世界遺産登録のあり方について解説した。
潜伏キリシタン世界遺産に登録決定~国内で22件目
ユネスコの世界遺産委員会は、一昨日、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産を、世界文化遺産に登録することに決めた。国内の文化遺産は去年の沖ノ島に続き18件目。自然遺産と合わせると22件目となる。
飯田)2015年に「潜伏キリシタン」をテーマに含まない推薦書を政府は提出していましたが、ユネスコの諮問機関イコモスから「それではダメ」と厳しく批判され、キリスト教の禁止、つまり禁教の部分に焦点を当てるべきとアドバイスを受けました。それに従い、推薦書を書き直して、認定になったようです。
これは、弾圧の部分ばかり出るのもどうかと政府は考えたようですが、世界遺産というのはその部分を踏み越えてもメリットがある、ということでしょうか?
須田)最近の世界遺産を見ていると、それを後世に残すというより、「観光資源」という期待が大きいですよね。地域活性化や地域おこしの、1つのツールとして使おうとしている。ただ、「世界遺産に認定すれば、どこでも観光客はやってくるか?」となると、必ずしもそうではありません。
石見銀山~世界遺産を観光資源に利用しようとした失敗例
須田)島根県で石見銀山が世界遺産になっています。2008年には観光客が80万人を超えたのですが、「1度行けば十分」となったのと、そもそも銀山はちょっと地味なので、それをピークに激減してしまい、2016年は約30万人でした。
飯田)ピークの3分の1まで下がってしまった。
須田)世界遺産に登録する前の水準に戻った、ということです。
なぜ石見銀山を世界遺産に強くプッシュしたのか調べたら、石見銀山の近くに萩・石見空港があります。島根県には2つ空港があり、出雲縁結び空港以外に、山口県境の近くに、萩・石見空港があるのです。人口もそれほど多くないし、何か産業があるわけでもない。空港を作ったはいいが、ほとんど利用していない。飛行機の便数も少ない。どうにかテコ入れしよう、活性化しようという思惑と、石見銀山の世界遺産登録がシンクロしていく……そういう、経緯があったのです。「このままだと廃港になってしまう!」みたいな部分もあって。そうした部分で利用しようとしたけれど、結果的に萩・石見空港は苦しい状況になっています。
上手く行けば、交通機関も活性化して両方がwin-winですが、岩見銀山の場合、果たして世界遺産登録という方向性は良かったのかどうか。私は「?」が付きますね。
飯田)世界遺産に登録されると、本来的には「それを保護して維持していかなければならない」という責任も伴いますよね。
須田)もちろん、本来はそちらが主体で、目的なのですが、ある意味で「目的替えしよう!」みたいなところで動いてきている。地元に対する経済的負担も大きくなるわけですから、思ったほど経済効果を呼ばなかった場合、どうなのかな。地元地域にとって重荷になってしまうのではないでしょうか。
そもそも空港活性化や観光資源として、その入り口は果たして良かったのかどうか。これから考えていくべきだと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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