大阪府は近畿地方で唯一、世界遺産がない
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2019年の世界文化遺産登録の推薦候補に「百舌鳥・古市古墳群」が決定しました。
これは、大阪南部の堺市・藤井寺市・羽曳野市にまたがる大小様々な古墳群。
点在する古墳は 4世紀後半から6世紀前半にかけて作られたもので、今回の対象は、現存している88基から厳選した49の古墳となっています。
例えば、最も有名なのは「仁徳天皇陵古墳(大仙古墳)」。
墳丘が486mという日本最大の古墳です。教科書にも載っていますよね。
エジプトのピラミッド地帯も世界遺産に登録されていますから、古墳群が世界遺産になってもおかしくないですよね。
また歴史の授業でも習った方墳・円墳・前方後円墳など、多種多彩な古墳があるのも大きな特徴。
当時の政治的・社会的な状況を示す証拠といえる存在です。
その辺りも今回、「世界遺産に登録するにふさわしい」となったわけです。
この古墳群を世界遺産にするのは、大阪の人たちにとって悲願でした。
実は、大阪府には近畿地方で唯一、世界遺産がないんです。
3度にわたって国内候補の推薦枠に挑戦し、今回4度目で努力が結実。
まだ推薦が決まっただけですが、すでに大阪では今回の決定に大喜び!
古墳群のパンフレットやガイドブックを設置したり、外国人観光客に備えて、英語のできるスタッフを駅に配置したり、これまで以上に万全の状態に。
堺市博物館では新グッズの販売を開始、阪堺電車に前方後円墳を描いたヘッドマークを付けて運行、まさに登録に向けて出発進行という雰囲気です。
ただ観光面を考えると、少し難しいのは「古墳は上から見たくなる」ということ。
大きい古墳だと、上から見下ろさないと「前方後円墳だ」と実感しづらいんですね。
また立ち入り禁止の古墳も多いので、観光を考えると難しい部分も多いんです。
堺市では、上から見下ろせるように、展望デッキを造る計画や観光客を気球に乗せて古墳を上から見せる計画も検討しているそうですが、一体どうなることやら…。
実際、世界遺産で観光客を呼ぶ…というのは難しいところもあります。
7月に世界遺産に登録された「宗像・沖ノ島と関連遺産群」。
沖ノ島の名称が入っているので、観光客としては上陸をしたい気持ちになりますが、実際は立ち入ることができません。
構成資産への観光客は増えているようですが、今後は構成遺産の魅力をどのように伝えていくかが大きな課題となります。
また観光客の継続と課題もあります。
2014年に登録された富岡製紙場は、2014年度には130万人の観光客が集まったそうですが、昨年度は約80万人。
一時の盛り上がりで終わらせない工夫も必要になってきます。
今は、そもそも世界遺産とは何か…という考えに立ち返る時期かもしれませんね。
世界遺産は「歴史あるもの・普遍的価値のあるものを保護すること」や、
その遺産を「将来の世代に引き継ぐ」ということが大切な要素です。
観光客の増加というのは、それに付随するものでしかありません。
大切なのは世界遺産を保護・保全することなのに、落書きをされたり、立入禁止の場所に入ったり、周辺の道路が混雑したりとなれば本末転倒。
遺産の保護と観光による地域振興を、どのように両立させるのか、あらためて考えることも必要ではないでしょうか。
8月17日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
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