タイ贈賄、司法取引で浮かぶ法人不起訴に~初司法取引での2つの疑問点

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月23日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。日本企業がタイの公務員へ行った贈賄事件と、それに対しての司法取引について2つの疑問点を解説した。

疑問点その1~個人と法人を分けての立件に対する違和感

タイの発電所建設事業をめぐり、現地の公務員に3,900万円の賄賂を渡したとして、東京地検特捜部は、三菱日立パワーシステムズ元取締役と元執行役員、元部長の3人を不正競争防止法違反の罪で、在宅起訴した。
ただ、6月に導入された司法取引を初めて適用。会社との合意により、会社自体は不起訴となった。

飯田)日本での司法取引第1号は、外国公務員への贈賄事件だったことが明らかになりました。「法人は不起訴。個人として起訴」ですね。

須田)この問題には2つポイントがあると思います。1つは、「法人は不起訴になった」という点です。これは裁判の推移を見る必要がありますが、「では、社員は自らの利益を確保するために勝手に贈賄したの?」となりかねない。おそらく日本の企業風土からすると、会社の利益のためにそうした犯罪行為に手を染めた。にもかかわらず、そこを分けて立件をするのは、はたして馴染むのかどうか。そういう点が裁判で問われていくのではないか、というのがまず1点。

タイ贈賄、司法取引で浮かぶ法人不起訴に~初司法取引での2つの疑問点

疑問点その2~そもそも賄賂はビジネスの必要経費であると解釈できる部分がある

須田)もう1点は、収賄(もらう側)の立場についてです。外国人なわけですから、タイでそういうことが行われたけれど、タイ、あるいは外国の風土として、賄賂をもらうことが当たり前の土壌がある国も、1部にはありますよね。むしろ、賄賂を渡さないとスムーズに仕事が進まず、ビジネスが成立しない。実を言うと、賄賂は国税サイドでは、経費として認定される。すべてではありませんが、損金として計上可能な部分があるのです。

飯田)確かに、交際費と紙一重な部分がありますよね。飲み食いをして、その金額を払うとか。あまりに高額だと賄賂とみなされるかもしれないけれど。

須田)ただ、「それを渡さないとビジネスができない」ということで、「経費の1部」と国税が認定するケースもあるのです。すると、税法と刑法は違いますが、「企業としてそれ(賄賂)を認めている部分があるのでは?」と。あるいは、「それを出さないと商売が成立しない場合はどうするの?」と。今回、三菱日立パワーシステムズはなぜ司法取引に応じたのかというと、不正に関与していない多くの社員や、ステークホルダー(利害関係者)の利益を守るための必要かつ合理的な判断でした。これを翻ってみると、贈賄がもしかしたらこれに該当するかもしれないのです。
つまり、「多くの社員やステークホルダーの利益を確保するためにやりました」と言われたら、どうするのかな、と。

飯田)両方ともとれる説明ですよね。キックバックとかを、日本の会社員のメンタリティとしてそこまでは要求しないだろうと考えると、これはトカゲの尻尾切りみたいになってしまいますよね。

須田)そもそも、司法取引は暴力団やギャング、オレオレ詐欺のような組織犯罪。そうした、なかなか摘発の難しいものに対して適用するのです。今回のような一般的な企業のケースで適用していいのかどうか。そこが疑問に思います。

飯田)今後、また議論が必要になってきますよね。

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