合意制度開始~組織犯罪検挙の希望の裏で、冤罪の懸念も

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6/1 FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!⑤

日本版の司法取引、今日からスタート
7:45~ココだけニュース スクープUP!:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家)

合意制度開始~組織犯罪検挙の希望の裏で、冤罪の懸念も

情報提供によって減刑などの見返りがある司法取引(合意制度)が開始

容疑者や被告が他人の犯罪に関わる情報を検察官に提供すれば、不起訴や軽い求刑などの「見返り」が得られる司法取引。政府の名称では「合意制度」が今日からスタートする。組織犯罪の解明に役立つと期待される一方で、虚偽の供述で無関係の人が巻き込まれる「冤罪」の懸念もあって最高検察庁は裏付け捜査の徹底など、慎重な運用方針を示している。
対象の犯罪としても詐欺や脱税、談合などの経済事件や薬物、銃器犯罪などが対象となる。虚偽の供述や偽造の証拠の提出は、5年以下の懲役が課されるという罰則も付加されている。

飯田)この司法取引についてまずは法の専門家、弁護士の塩谷崇之さんにお話を伺っていきます。
司法取引というと、アメリカの刑事ドラマとか法廷ものでは見るのですけれども、日本でも導入されることになった。何かきっかけがあったのですか?

塩谷)組織犯罪や企業犯罪が増加していて、深刻な問題になっていると。身近なところでは振り込め詐欺みたいなものもあれば、もっと大掛かりな国民の安全に関わるような組織犯罪もある。他方で犯罪を犯す側では携帯電話の普及、インターネットの普及などでなかなか証拠が集めづらい状況にあると。取り締まりを強化したとしても、なかなか首謀者や企業のトップまでには行きつかない。そういうなかで末端の犯罪者から良い情報を引き出して犯罪捜査に役立てようと、そんな背景で日本でも導入が検討されるようになりました。

合意制度開始~組織犯罪検挙の希望の裏で、冤罪の懸念も

捜査が進む期待の反面、冤罪の可能性も

飯田)一方で言われているのは冤罪についてというところですけれども、この懸念というのは弁護士のお立場でご覧になって如何ですか?

塩谷)やはりあると思います。目の前にニンジンをぶら下げて、他人の犯罪についての有利な情報を得たり証拠を得たりするということですから、ニンジン欲しさにありもしないことを言ってしまったり、あるいは大げさに話をしてしまったり、真実解明に逆行するような可能性も懸念されていますね。

飯田)かつての冤罪事件の大体の典型例を見ると、検察や警察が筋を決めてストーリー立てて捜査をしていてそれに合う供述を引き出すみたいなことがありました。司法取引でも「こうなんだろう」みたいな形で取引を持ち掛けるような懸念はあるのでしょうか?

塩谷)捜査機関側がこういう供述を得たいということで共犯者に対して話を持ち掛けると。最初からこういう見込みで「こういう供述をすればお前の刑は軽くしてやるよ」というような形で話を持って行けば、見込み捜査による冤罪は出てくるのではないかと思います。

飯田)取引をする場合には、検察官は弁護人の立会いの下で容疑者と協議ということで、これは弁護士の皆さんも当事者になるわけですよね。何か準備とかというのは業界のなかで進んでいたりするのですか?

塩谷)どのような運用がなされるのかいまひとつ見えてこないというのがあるので、弁護士のなかでは警戒感だけは強めているけれども、具体的にどういうときに供述をするように勧めるか、あるいは勧めないかということについての手法というのはまだ検討途中だと思います。

合意制度開始~組織犯罪検挙の希望の裏で、冤罪の懸念も

アメリカと日本では国の成り立ちが違う

飯田)宮家さん、アメリカではこれは導入されている制度ではありますけれども。

宮家)アメリカいう国は移民の国ですから、私縁血縁というものは全くわからない人たちを捌くというわけですから、法の手続きを適正にしなければならない。できるだけルールというものをしっかりする。そういう形のなかで捜査をしなくてはいけないから、司法取引が発達したのですよね。日本の場合アメリカと同じことをやる必要はないし、しかし司法取引と同じようなことは、おそらくいままでも実質的にはやられていたはずなのです。そうでなくては捜査ができない。警察官や検察官の裁量のもとでおこなわれてきた不透明なシステムが法制化されて、ルールがしっかりして弁護士が同席できるようになるというのは一歩前進だと思うのです。アメリカと同じように考えてもなかなか難しい。国の成り立ちが違うのだから。

飯田)あとは最初どうやって適用するかにかかっていますね。

宮家)数を増やしていかないと。どのような形で運用するかというのは最初から決まらないですよ。立法者が文字にして動き始めたら実態はいろいろと複雑な動きをするから、どのような形で運用されるかはやってみないと分からないと思います。

飯田)個人の権利みたいなものと、社会全体の安定というのが天秤にかかってくると。だから社会の空気によっても運用が変わってくるということですね。

宮家)塩谷先生がおっしゃったように、弁護士に言わせれば非常に慎重に運用したいというお気持ちは正しいと思います。

飯田)法が施行されてからもずっと見ていかなくちゃいけないですね。

宮家)これからですね。

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