広島高裁が伊方原発の運転差し止め決定~その理由と裁判の背景とは?
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12月14日(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
政府は再稼働を勧める方針に変更ないと明言
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター佐藤優(元外務省主任分析官・作家)
広島高裁が愛媛県伊方町の原発の運転の差し止めを決定
愛媛県伊方町にある四国電力伊方原発3号機は去年8月に再稼働し、現在は定期検査中で停止中。来年1月に送電再開、2月に営業運転に入る見通だった。しかし広島市の住民らが、運転の差し止めを求め申し立てていた仮処分について、広島高等裁判所は昨日、運転を差し止める決定。
広島高裁の野々上裁判長は、熊本県の阿蘇での大規模噴火が起きた際に、原発がおよそ130kmの距離にある点を重視。およそ9万年前の阿蘇カルデラでの噴火で火砕流が原発の敷地内に到達した可能性が小さいとは言えないとして、立地に適さないという判断をくだした。
また原子力発電所の新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断についても、不合理だと指摘している。以下はこの決定について、住民側弁護団と菅官房長官の発言。
住民側弁護団)高裁決定で勝ったということは極めて重要な歴史的な転換点だと思います。
菅官房長官)独立した原子力規制委員会が世界最高水準の新規制基準に適合すると判断したものであり、政府としてはその判断を尊重するという方針に変わりはありません。
政府としてはあくまでも法の判断であり、原子力規制委員会の認めた原発の再稼働を勧める政府の方針に変わりはないとしている。また、四国電力の方は広島高裁に異議、それから決定の効力を一時的に止める執行停止、この二つを申し立てる方針だが、今回差し止めを命じた野々上裁判長は今月下旬に定年退官となるので、次は別の裁判長が審理を担当する。
裁判官の判断基準、政府と市民の起こすべき行動
高嶋)表現悪いけど最後っ屁かましたとかいうそんな感じですよね。これ佐藤さんどうですか。私、素朴に日本列島ってよく火山列島の上に乗っているだけなんだと、極端にいうとそういう風に表現する人もいますけど。9万年前に起きた噴火から影響を与えるということですが。
佐藤)もしかしたら大きな隕石が落ちてきたから恐竜が絶滅したようなことが、隕石が落ちて来たとはいえないとか、色んな心配っていうのなんか長いレンジで見るといろいろありますよね。そもそも論で、この種の話が裁判で馴染むかどうかっていうことだと思います。逆の話を出しましょう。例えば沖縄の辺野古の新基地建設問題。翁長沖縄県知事負けましたよね。それだから今、司法で決まったから淡々とやってるということになっても、沖縄との軋轢はものすごく強まっています。政治的に判断しないといけないことだと。だから今度じゃあ逆にここのことで司法の方で決まったからこれで絶対だと言ったって、私は司法にお世話になりましたからね鈴木宗男事件で。あのときの判決とか心理状況のところはね、実態からどれくらいかけ離れてるのか、当時者として一番よくわかってますから。申し訳ないけど裁判官というのはね、政治的な事柄とか経済的な事柄とか、ましてや科学の世界で9万年前に何があって、そのリスク管理がどういうことかがわかる人じゃないの。あの人たちは世間の常識で物事を判断するっていうのが仕事なの。世間の常識からすれば、国民感情からすれば原発はない方が良いと。ただエネルギー政策全体のところとしてそれどうするのかということを考える。こういったことというのは、これは国の仕事。ただ国が言った通りにやれということだったら民主主義社会ではない。ならば、皆できちんと話し合ってコンセンサスを得てそのコンセンサスを守るという政治プロセスでやらないといけない。裁判で勝った負けたで、こういう方向で考えていること自体が政治の責任の放棄だし、市民としては市民の権利の放棄だと思う。だから、私はこの裁判で訴えるというやり方が国であれ、市民団体であれ、良いやり方とは思わない。この問題はあくまでも対話、コンセンサスを目指すべきだと思いますね。
高嶋)これがだけど大ニュースで高裁の段階で初判断って言ってね、新聞なんかはすごくウェートを置いてるわけですよ。
佐藤)今までなかったことっていうのを見てびっくりして、大きく扱いますからね。ただ、それが国全体のエネルギー政策としてどうかっていうことは少し距離を置いた冷静な判断が必要だと思いますね。
高嶋)なんかあれですか、菅さんはああいう言い方してますけども、少し政府の方も響きはあるんですかね、こういうのって。
森田解説委員)やはり世界一厳しいという原発の新しい規制基準に適合していたという原子力規制委員会の判断に疑問符を司法が投げ掛けるのかというところは多少動揺はしているようですよね。
長いスパンでリスクを見るということと合理的な判断
高嶋)天が落ちてくるんじゃないかといつもびくびくしてる落語がありましたよね。それと同じだと言ったら怒られますけども。
佐藤)長期的に考えれば太陽系が終わるときには地球が膨張するから恐らく地球が吸収されるか、あるいは引力が弱くなって相当遠くに飛ばされると、生物生きられなくなりますからね、そういうリスクというのは常に、長いスパンで見るとあるんですね。
高嶋)じゃあこのもうじき退官の野々上さんという方は。
佐藤)それはもう歴史に名前を残したし、今後は引く手あまたの講演会沢山あるでしょうね、反原発派の人の。だから彼としてもしかしたら合理的な判断だったかもしれない。
高嶋)佐藤優さんの非常にクールな見解ですね。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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