トランプ大統領の刃の矛先~中国の次は日本

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月23日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカのドル高をめぐる今後の経済情勢について解説した。

G20会議 麻生財務相 ラガルドIMF専務理事パウエルFRB議長 ムニューシン米財務長官

G20会議の記念写真に納まる(1列目左から)ラガルドIMF専務理事、黒田日銀総裁、麻生財務相、(2列目左から)パウエルFRB議長、ムニューシン米財務長官ら=2018年7月20日、ワシントン(ロイター=共同 写真提供:共同通信社

G20閉幕~アメリカ対それ以外の国に構図鮮明に

アルゼンチンのブエノスアイレスで行われていた、日本・アメリカ・ヨーロッパに、中国・メキシコ・インドなどの新興国を加えた、20カ国地域の財務省中央銀行総裁会議は、2日間の日程を終え閉幕した。共同声明では、世界の景気失速を回避するために、対話と行動を加速する必要があると指摘している。

飯田)「アメリカの保護主義に対抗する」などと言われていますが、アメリカのムニューシン財務長官は「アメリカが保護主義という根拠はまったくない」と述べ、「G20は完全に結束している」とも語り、トランプ政権の強行な貿易政策により、アメリカの孤立という見方を否定しています。

トランプ大統領の刃の矛先~中国の次は日本

アルゼンチンはペソ安の影響でアメリカ車が売れない

須田)そもそもG20は、「G7やG8の先進国首脳会議の枠組みでは物事を決められない、決定権を持っていないから、新興国に入ってもらおう」です。
ですから、G20は世界のGDPの約7、8割を占めるのです。だから、そこで何かを合意すれば世界の体制が決まる。そういう思惑でスタートを切っているのですが、最近はアメリカが1つの不確定要素になってしまっている。それまでは「新興国対先進国」という構図でしたが、いまは「アメリカ対G19」という状況になっているのかな、と思います。ただ、アメリカも合理的というか順序立てて物事を考えているのかな、と思うのです。
たとえば、今回G20会議開催地のアルゼンチン首都であるブエノスアイレス。いまアルゼンチンの通貨ペソがものすごく下落しペソ安になっています。4月から27%も下落です。その結果何が起きているのかというと、通貨安をくい止めるために、ペソに外国通貨を変えてもらうことを促すために、中央銀行の政策金利を40%まで上げているのですよ。ですから、通常の市中の貸出金利は50%超えの状況になっています。
では、町中で何が起こっているか。自動車を買うのにローンを組みますが、ローンの金利が60%を超えています。アルゼンチンで売っている自動車のほとんどはアメリカ製で、60%のローン金利を払って自動車は買いません。本当に閑散としています。そして結果的にアメリカの自動車が売れないという状況になっているわけです。

トランプ大統領の刃の矛先~中国の次は日本

トランプ政策によるドル高~日銀の異次元の金融緩和に怒りの矛先が向く恐れがある

須田)アメリカの政策は、最近ブーメラン現象が多いですね。当初の思惑としてはアメリカのプラスになっているように見えるけれど、結果的にアメリカの足を引っ張っている政策は多いわけです。この辺の整合性をこれからトランプさんがどう捉えていくかが、見どころになると思います。

飯田)ドル高について。ペソや他の新興国の通貨が安くなっているのは、ドルが高くなっているからですよね。ドルに、アメリカにお金が集まるのは、アメリカの好景気にプラスして減税とか、そういうトランプさんの政策によってドル高になった部分もあるけれど、「あまりにドル高すぎる」と言ってトランプさんは怒っている。いま、そんな状況ですよね。

須田)その刃が一番最初に向かっているのが中国なのです。中国は防衛のために人民元安を誘導していますから、そこに対してアメリカがどういう物言いをしてくるかが1つのポイントです。しかし、次に控えているのは日本なのです。円安の原因が日銀による異次元の金融緩和であるのはあからさまですから。そうすると、「アメリカは利上げしているのに日銀はいつまでそんなことやっているんだ!」とトランプさんは言いかねない。言うまでに100%だとして、95%くらいのレベルに達していると考えていい。余裕は5%です。

飯田)怒りのレベル、沸点が上がってきた。いまのところトランプさんがまず言っているのはFRB(中央銀行)に対して「おまえらこれ以上利上げするな!」とまず言っている。それにより、ドル高をどうにかしようとしている。

トランプ大統領の刃の矛先~中国の次は日本

ドル高によるトランプ氏の制裁措置を日本のマーケットも慎重に見ている

須田)次に出てくるのは、中国に対して「お前は為替を操作した! 人民元安にしやがって、もっと制裁加えてやる!」みたいな。日本に対しても「いつまでそんな金融緩和やっている!」と言いかねない。そういうリスクが出てきていると思います。その辺は日本の為替マーケットも慎重に見ているから、織り込みつつあります。円高に振れてきているのも、そこに理由があります。

飯田)本当なら向こうの10年物の国債金利と、こちらはほとんど金利が付かないのを考えると、もっと円安になってもおかしくないけど、いま112円台で張り付くような形ですよね。動きの鈍さは、その辺を盛り込んでいる?

須田)そうですね。ですから、これから為替相場を見ていただきたいと思います。110円まで上がってくるとちょっと危険だと思います。

飯田)あまり円高になると、それこそリーマンショック後のように輸出産業が厳しくなってくると日本はつらいですよね。

須田)輸出関連企業の業績が悪化して、株価が下がるというのも、連想ゲームとして出てきますからね。

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