飼い主が2組!? 行方不明の猫探しの結末は?
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【ペットと一緒に vol.101】
筆者は迷い猫のポスターを見かけ、心当たりがあったので連絡をしてみました。すると、思っても見なかった展開に。今回は、筆者の体験談をお伝えします。
ふと目に入った迷子猫ポスター
筆者は最近、実家からの帰り道にあるポスターに目を留めました。
「シロちゃんが行方不明です。見つけた方はご連絡ください。また、どんな小さな情報でもいいので、なにか心当たりがある方は教えてください」。
そのように書かれていて、ご本人の自宅の塀に貼られていました。猫の写真を見て、「あれ? 実家の近くにさっきいた白猫ちゃんにそっくりだなぁ」と思い、筆者は電話番号をメモして帰宅。さっそく電話をかけてみました。
「そうなんですね。うちからは歩いて5分以上はありますけど、昔そのあたりで近所の方からごはんをもらっているっていう話も聞いたことがあるんです。もしかするとシロちゃんかもしれません。いなくなって3カ月になるんですけど、最近はほとんど情報を寄せていただくことがなくて……。なんだかうれしいです。目撃されたという時間帯に行ってみます。ありがとうございました」。
飼い主さんは、少し涙声だったようです。ここ3カ月、ずっと愛猫のことを心配していた様子がひしひしと伝わってきました。
実は筆者が実家近くで見た猫は、腹部が大きいような気がしていました。妊娠しているのかもしれないと伝えたところ、シロちゃんは避妊手術済みなのでその可能性はないとのこと。「でも、ちょっと太っているんですよね。シロちゃんなのかな?」と、飼い主さん。
戸惑う飼い主さん
数日後、シロちゃんの飼い主さんから連絡がありました。
訪れた日にはシロちゃんは見つけられなかったそうですが、近くで数匹の猫を飼っている方から話を聞けたそうです。それによると、2年ほど前から筆者の実家近くで白猫が目撃されているとか。やはり、ご近所の方から食べ物をもらったりしているようです。
そして、その数匹の飼い主さんは「一応、私が白猫の飼い主ということになっています」と話したそうです。
それを聞いて筆者は驚きました。白猫ちゃんの飼い主さんは、ふたり……!?
数匹の猫たちはいずれも、首輪をしていないそうです。
それから数週間後、筆者は再び実家近くで白猫を見かけました。首輪は未装着。
すぐにシロちゃんの飼い主さんに連絡をすると、「今すぐ行って見てみます!」とのこと。
数時間後いただいた報告によると、白猫を見られたそうです。
「名前を呼んだのですが、近づいては来ませんでした。少し遠目でしたが、顔は似ています。そのコがシロちゃんだとしたら、家には入れてもらえない外猫のようですが、大切にはされているのではないかと思うのでありがたいです」。
それを聞いて、筆者は自身の祖母が飼っていた猫のことを思い出していました。
2度と帰宅しなかった愛猫
筆者の祖父母は当時、都内の池袋近くに住んでいました。30年以上前なので、立ち並ぶ住宅の庭には大きな木があったり、池があったりして、野良猫も多く暮らしていました。
祖母の愛猫はシャム猫のオスで、名前はボビー。夜は祖母の布団で眠りますが、日中は出入り自由でほとんど屋外で過ごしていました。
当時は、今のような終世室内飼育の猫はほとんど見かけず、このように飼育される猫が多かったように思います。
ボビーは去勢をしていましたが、野良猫の繁殖期になるとメスをめぐる争いに巻き込まれ、よくケガをして帰ってきました。片目が潰れていたり、耳から流血していたり……。そのたびに祖母と一緒に動物病院に駆け込んだのを思い出します。
夕方になっても帰宅せず、祖母と大声で「ボビー! ボビー!」と呼んだ日も少なくありません。たいがいは「ニャ~ン」と、ちょっとかすれた低い声と、首輪につけた鈴の音を鳴らしながら戻ってくるのですが、翌朝まで戻らなかったこともありました。
そしてある日、ボビーはいくら呼んでも帰ってこず。そのまま、2度とボビーの姿を目にすることはありませんでした。
「猫は死に目を人に見せないというのよ。もう14歳だし、外でひとり旅立ってしまったのかしら……」と、数週間も続いた祖母の心配そうな表情は忘れられません。
前回の記事で紹介した野良猫専門病院の黒澤理紗さんは、外飼いの猫にも、交通事故や病気の感染といった危険が付きまとうため、室内飼育が望ましいと強調されていました。
筆者の今回のできごとをとおして、あらためて黒澤さんの言葉を深く受け止めずにはいられません。
どうか、シロちゃんが元気で大切にされていますように。そして、全国の猫たちがこれから、もっとしあわせな猫生を送れるようになりますように。
※文章中のシロちゃんは、飼い主さんのプライバシー保護のため仮名で記載しました。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。