仮想通貨、ブロックチェーンの本質とは?(2)
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【報道部畑中デスクの独り言 第78回】
前編では仮想通貨について、特に「送金・決済機能」が産業構造を変える可能性があると申し上げました。しかし、仮想通貨の本格的な普及にはハードルも少なくありません。
管理主体が存在しないものにどう信用性を持たせるのか。決済・支払いの相手が信用できるのか。成りすましや二重払い、改ざんなどの危険もあります。国際的な取引になればそれはなおさらです。
こういった問題を解決し、仮想通貨のシステムを支える技術が「ブロックチェーン」という仕組みです。
「分散型台帳」などと訳されますが、取引記録などを一元的に管理せず、インターネット上の複数のコンピュータで共有・承認しながら、正しい記録を鎖のようにつないで蓄積します。いわば「みんなで監視することによって信用性を担保しよう」というわけです。
承認する作業は、「採掘」を意味する「マイニング」と名付けられています。
ただ、このマイニングについては、コンピュータによる膨大な計算作業を必要とします。中国の奥地で、スーパーコンピュータを使ってマイニングが行われている所があるとも聞きます。今後予想される取引記録の膨大化に、マイニングが追いつけるのか…金融の専門家の中には懸念を示す声もあります。
なお、今年起きたコインチェック事件は、おカネを入れる財布=ウォレットをネットにつないだ状態にしていた(ホットウォレットと言います)上に、秘密鍵と呼ばれるパスワードが盗まれたことが原因とされています。
つまりセキュリティ管理の問題というわけですが、これはパスワードや暗号を使うシステムでは起こりうることで、仮想通貨やブロックチェーンのシステム自体を揺るがすものではない、という見方もあります。とは言え、安全性の確保が普及のイロハであることには疑いありません。
先月、経済界では各団体が恒例の夏季セミナーを開きましたが、その一つ、経済同友会のセミナー後の記者会見で、私はブロックチェーン、仮想通貨の可能性について企業のトップに聞いてみました。
「新しいテクノロジーを無視しても、抑えようとしたところで必ず出てくる。ぜひ率先垂範すべきだと思う」(経済同友会・小林喜光代表幹事)
「分散台帳が有効活用されれば、信頼性、効率性が手に入る。大いに可能性がある」(フューチャ―・金丸恭文会長兼社長)
と、その可能性については概ね認めます。影響を受けるとされる銀行業界でも、利便性と安全性が同時に担保されることを条件とした上で、
「新しい技術で、使いようによっては非常に役に立つ」(三井住友銀行・宮田孝一会長)
と話していました。一方で、規制改革の視点では、
「ブロックチェーンを政府内で浸透させようとすると、デジタルガバメント(政府)が推進できる体制を刷新していかないと、ついて来られないのではないか」(前出・金丸氏)
という声もありました。国が「アタマをやわらかくする」こともブロックチェーンや仮想通貨が普及するカギと言えそうですが、日本にとって実はこのあたりが一番難しいかもしれません。
ちなみに金丸氏によると、米・スタンフォード大学のコンピュータサイエンスの講義では、ブロックチェーンは基礎講座の一つ…学生が初期段階で学ぶ技術だそうです。
ブロックチェーン技術は仮想通貨のみならず、不動産登記や婚姻、出生などの公的証明、証券や保険分野での情報のやり取りなど、様々な応用が期待されています。
克服する課題は確かに多いのですが、非常に“伸びしろ”のある分野であることは間違いありません。ネガティブな報道が先行するメディアですが、本来の機能についても幅広く伝える時期に来ているのではないかと思います。