農作物につく害虫を「天敵昆虫」を使って防除する、新たな害虫駆除
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農研機構の日本典秀が、黒木瞳がパーソナリティの番組「あさナビ」(ニッポン放送)に出演。「天敵昆虫」を使った農作物の害虫駆除について解説した。
黒木)今週のゲストは農作物を害虫から守る天敵昆虫の研究をされています、農研機構の日本典秀さんです。
天敵昆虫というものを初めて聞いたのですが、どういう昆虫のことを天敵昆虫と言うのですか?
日本)人間でも、「あいつは天敵だ」というような言い方をすると思いますが、要するに「嫌いなやつ」なんですね。
黒木)ありますあります(笑)。
日本)この場合は、農作物にとって嫌なやつは害虫。その害虫にとって嫌なやつが天敵なんです。害虫を食べる虫を天敵昆虫と呼んでいます。
黒木)害虫を食べる。つまりは農薬を使わずに、その天敵昆虫によって野菜を守るとか、農作物を守るということですか?
日本)通常、害虫を防除するには化学農薬を撒いて殺していますが、害虫に薬が効かなくなってくる。また農家さんも薬を撒くことは重労働で大変ですよね。その代わりにこの、虫を食べる虫で害虫を退治しようということです。
黒木)ということは、農薬を使わないで美味しい野菜が作れるということですか?
日本)そうですね。いまのところまだ「全く使わないで」とはいきませんが、かなりの部分を減らすことはできています。
黒木)今日は2種類、持って来ていただきましたが、これはよく見るテントウムシですよね?
日本)この大きい方がテントウムシ、「ナミテントウ」という種類です。
黒木)テントウムシも、何かの昆虫の天敵になるのですか?
日本)テントウムシにもいろいろいて、害虫のテントウムシもいます。このナミテントウはアブラムシを食べるのです。
黒木)はあ。
日本)育種することで飛ばなくなったテントウムシです。そのため長いこと害虫がいるところに留まって、食べ尽くしてくれる。いまアイスクリームカップのようなものをお持ちですけれども、このような形で販売されています。
黒木)こちらはちょっと珍しいとても小さな昆虫。
日本)「タバコカスミカメ」という、カメムシの仲間です。カメで終わっていますが、カメムシです。普通のカメムシは作物を食べてしまいますが、これは作物ではなく虫を食べる、害虫を食べてくれます。
黒木)タバコカスミカメ(笑)。難しい名前ですね。小さいですが、何ミリくらいですか?
日本)大きさは大体3ミリから4ミリぐらいですね。それが成虫ですが、実は天敵昆虫としては大きい方です。先ほどご覧いただいたナミテントウは、天敵昆虫のなかでも巨大です。虫と言うと、皆さんはカブトムシなどを想像されると思いますが、農業現場で問題となっている虫はとても小さく、0.何ミリという虫が多いのです。農家さんも高齢化が進んでいて、なかなか小さい虫を見つけられない。すると被害が出てから気付くということが多いのです。そういった小さい虫を天敵昆虫で退治しようとしたときに、天敵もそれなりに小さくないと小さい虫を食べられないので。そのため、こういった小さい天敵が今後活躍することになる。
黒木)なぜこのタバコカスミカメという虫が、天敵昆虫になるということが分かったのですか?
日本)これは10数年前に高知の農家さんが農薬を減らしてみたら、意外と害虫が増えない。よく見るとこのタバコカスミカメがいる。これがひょっとしたら害虫を食べているのではないか? ということで、いろいろな試験研究機関が、実験室に持ち帰って害虫を食べさせてみたら、確かに食べるぞ、ということが分かったのです。
日本典秀/農研機構・中央農業研究センター京都大学大学院・修士課程を修了後、農業生物資源研究所などを経て、「農研機構 中央農業研究センター 生物的防除グループ」に所属。
野菜や果物につく害虫を、タバコカスミカメという「天敵昆虫」を使って防除するという新しい研究を行っている研究者。
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