日米自由貿易協定を日本は受けて立つべき
公開: 更新:
ニッポン放送の「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月5日放送)に国際問題アナリストの藤井厳喜が出演。日米自由貿易協定について解説した。
アメリカのペンス副大統領、11月に来日へ
日米両政府は、来月中旬にアメリカのペンス副大統領が来日する調整に入った。ペンス氏は安倍総理大臣や麻生副総理兼財務大臣と会談し、北朝鮮の非核化や日米で交渉入りが決まった日米物品貿易協定(TAG)などについて意見交換するとみられている。
飯田)11月半ばと言うと、中間選挙も終わった後ですね。
藤井)終わった後です。日米はしっかりTAGを組むことからです。いちばん大きな問題は中国ですね。
NAFTAについてもいろいろなことが言われていますが、アメリカはNAFTAを捨てられません。特にメキシコは捨てられない。国境線をまたいでアメリカの製造業のためのインフラ、サプライチェーンが複雑に発達しているので、メキシコを切って捨てることはとてもできない。トランプさんはいろいろ言っていますが、アメリカの産業界の意見をよく聞く大統領です。
飯田)なるほど。
藤井)現場のビジネスマンの意見を大事にする人なので、メキシコ切り捨てはありえない。でも壁の問題があって、メキシコを切り捨てるような言い方をする人も多いのですが、実際そうではない。NAFTA(北米自由貿易協定)について、名前は変わりますが、カナダも妥協しました。アメリカのやり方もうまくて、まずメキシコと話をつけ、カナダに対して「お前はこれでもいいの?」という感じで。彼らも最終的に受け入れたかたちになりました。
違法移民は厳しく取り締まるけれど、メキシコは切り捨てない。これを切り捨てたら、アメリカの製造業の競争力が落ちてしまいます。
日米自由貿易協定を日本は受けて立つべき
藤井)日米関係はどうなるのかと心配していましたが、26日の日米首脳会談で日米共同声明が出て、TAGが決まった。日米物品貿易協定と言われていますが、これは「物品だけに限った自由貿易協定」と言えば分かりやすいと思います。結論から言うと、日本にとっては非常にありがたい話です。トランプ政権は多国間はダメなので、TPPは拒絶なのです。これにはいろいろな理由がありますが、特に司法の独立が失われることは大問題だと。国家主権が失われることになるという解釈で、そのため2国間でやりたいと言うのです。
2国間でやる場合、日本側は自由貿易協定をやられてしまうと「アメリカに良いようにされるのでは」と恐れていますが、僕は自由貿易協定を、日本は受けて立つべきだという考え方です。貿易黒字を持っているのはどちらなのか。日本側が強いので恐れることはないと思いますが、アメリカが強いのはサービス貿易なのです。物の輸出、工業製品に関しては日本が強い。農業はアメリカの方が強いという簡単な図式です。
サービスのアメリカにとっていちばんの強み、金融、保険、通信や、教育も入ると思いますが、これを「とりあえずギブアップする。物だけで良いよ」と。これは日本にとって大変ありがたいことで、いままでやってきたなかで、落としどころも大体見えている。やっている最中は、自動車に対する関税は日本車に掛けないと約束していますし。農業関係にはかつてやった妥協…EPA協定などがありますが、「そのとき以上には妥協しません、結構です」とアメリカが言っている。だから怖いものはもう無いのです。
飯田)日本のメディアは、これで「譲歩した」とか「押し切られた」などと言っていますが。
藤井)譲歩は両方しないと(笑)。
飯田)片方だけ勝つということはないですからね。
藤井)だけどアメリカの側が譲歩した方が圧倒的に多いですよね。
飯田)他の例を見ると(笑)。
藤井)僕はこれを見て、なぜこんなにあっさり通ったのかと思いました。でもこれは、対中国で日本を抱き込まなければいけないから、アメリカにしてみれば相当妥協したなと。ただ、「後からサービス貿易の話はやりますよ、次の段階で」ということに…。
飯田)その釘刺しは一応、入っていますよね。
藤井)入っていますからね。また議会が2人決議で、これをやれということを言ってくる可能性があります。しかしとりあえずは、安倍さんは良い条件を勝ち取ったなと思っています。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。