米露関係よりも深刻な米中関係の今後

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月30日放送)に外交評論家・キャノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米露首脳会談の中止、米中関係について解説した。

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2018年29日、20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれるブエノスアイレスに向かう前に米ホワイトハウスで記者団に話すトランプ大統領(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ大統領がTwitterで米露首脳会談の中止を発表

アメリカのトランプ大統領は、アルゼンチンで開かれるG20(20カ国地域首脳会合)出席に合わせて予定していた、ロシアのプーチン大統領との会談について「中止することが最善だと決めた」とTwitterに投稿した。
これは今月25日に発生した、ロシアによるウクライナ艦船銃撃事件を受けた措置。なお、トランプ大統領の南米訪問は就任後初めてで、G20の全体会合と共に安倍総理や中国、韓国などの首脳との2者会談も予定している。

飯田)ウクライナ艦船をロシアが銃撃した事件ですが。

宮家)めちゃくちゃな話です。昔、尖閣諸島で酔っ払った船長が海上保安庁の船にぶつけて来たでしょう。あれをロシアとウクライナは海軍同士でやっています。それは銃撃戦にもなりますよ。この直後にアメリカの大統領がプーチンさんに会うかと言ったら、それは国内的にも国際的にも会えないでしょう。ヨーロッパは非常に強い反発をしています。日本はまた別枠でやって貰わないといけないけれど、ロシアを取り巻く環境は非常に悪いので、会わないのは驚きません。
むしろ気になるのは、米中です。一時休戦に持って行こうと言うグループがアメリカにもいて、もちろんそれに反対する人たちがいます。一方、中国の方は必死で休戦に持って行きたい。トランプさんが何を考えているのか分からないけれど、私が彼なら貰うものを貰って、次を要求します。短期的には休戦はあるし、トランプさんも国内に成果を示したいと思うので、収穫をしたい時期ですよね。取れるものは取っておきますが、中長期的には解決しないと思います。中国のやり方が構造的に、もしくは政治的にアメリカと相容れないものですから。特に技術ですね。これはまだラウンド1です。

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ロシアに拿捕(だほ)されたウクライナ海軍の小型艦(左)とタグボート(クリミア半島東部ケルチ)=2018年11月26日 写真提供:時事通信

この5年で中国に対するアメリカの政策が変わった

飯田)ラウンドは10も20もあるということですか。個々を見て行くと、貿易戦争や南シナ海、いろいろなニュースが出て来ますが、全体をデザインする文書みたいなものがアメリカの政府内には存在していると言う識者もいます。冷戦時代のNSCの文書のような。

宮家)それはそうだと思います。その文書があるからといってたいしたことではないのだけれど、冷戦をやるために作った文書と言うよりは、90年代に天安門事件があって、中国をちゃんと資本主義に引き寄せれば中国社会も変わるという期待でずっと支援をして来たのですが、その期待はまるで外れたわけです。

飯田)昔は寛容政策などと言われていたものですね。

宮家)それが、この5年くらいでやっと「考え方が違う」とわかった人たちがアメリカにいて、ですからアメリカの政策が変わって行くのは当然のことです。中国はちょっと降りられないですよね。

飯田)中国は中国で降りられない?

宮家)共産党指導の1丁目1番地のことを言われているのですから。ペンスさんが長いスピーチをやって、その土台になっている紙がどこかにあると思います。それはトランプさんの思い付きで作ったものではなくて、長い経緯があった結果、アメリカの関係者が中国に疑いを持って、その問題点については意見が一致し始めている。その結果として紙ができたのだと思います。

飯田)そうすると、これは貿易の問題で解決するものではないということですね。

どちらも勝負から降りられない理由

宮家)基本的には覇権争いですから。ロシアと中国を比べたら、ロシアの人口は減っているし、エネルギー産出国とは言え兵器しか作れない。中国は、人口は13億いるし、アメリカと同じものを作れますからね。技術も貪欲に吸収して、アメリカからすれば取って代わられるかもしれないという強い危機感があると思うのです。その危機感が問題になっているので、アメリカは降りられない。中国だってそれを放棄しろと言われたら「民主主義になれ」と言われるのと同じなので、受け入れられるわけがないですよ。

飯田)13億を統治すると考えると、できない。

宮家)そうするとガチンコにならざるを得ないけれど、戦争をやるわけではないですよね。中国がアメリカに戦争を仕掛けるわけがないので。アメリカも中国とやったって勝たせては貰えないし、長期戦になったら疲れるから、戦争はしない。冷戦と言うかどうかは別として、実質冷戦なのですよ。これからも何ラウンドもあります。

飯田)冷戦期みたいに超大国同士がぶつかることはないけれど、各地域で局地戦みたいなものが出ることはありますか?。

宮家)南シナ海は心配です。だけど、そこまでやって中国が得るものは何もないでしょう。経済制裁を掛けられたらその時点で中国経済は終わりますから、そんな馬鹿な事は絶対にしないと思います。けれども、軍の末端が暴走することがないとは言えないし、誤算に基づく衝突が短期的にあることは考えられる。でも、大戦争になるとは考えていません。

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