北方領土問題~中長期的な戦略で判断するべき

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月16日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。プーチン大統領の北方領土に関する発言について解説した。

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ロシアのプーチン大統領(右)との会談で握手する安倍晋三首相(シンガポール)=2018年11月14日 写真提供:時事通信

プーチン大統領が日本を牽制、「色丹、歯舞2島の主権は不明」と発言

プーチン氏は15日、訪問先のシンガポールで記者会見をした。14日の日露首脳会談で合意した日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることについて「共同宣言には歯舞群島と色丹島の2島を引き渡す根拠は書かれていない」などと指摘し、日本を牽制している。

飯田)会見でプーチン大統領は「『この日ソ共同宣言を基礎にして交渉を加速させる』と切り出したのは安倍総理の側だった」ということも明らかにしたようです。2島の主権は不明って、おかしいですよね。

宮家)何言うてんの。だって引き渡すのでしょう。例えば私が飯田さんに大切なものをあげるとして、引き渡したらもう私のものではないですよね。

飯田)そうですよね。貰ったものね。

宮家)屁理屈ですよね。将来どうなるか分からないけれど、振り返ってみたときに「ジャブを打って来たな、ロシアが物事を動かそうとしているかもしれないな」と思わせる何かがあることは事実です。そんなことを言ったって安倍さんにも有権者がいて、プーチンさんも独裁者かどうか知らないけれど、一応有権者がいるわけです。これまでは日本とロシアが完全な平行線でしたが、合わせようとするとどこかでいろいろな調整をしなければならない。この調整ができるかどうか分からないけれど、それが本格化して来たなと思います。

中国の台頭を恐れて日本に接近か

飯田)メールも頂いておりまして、横浜市保土ヶ谷区の62歳“鳴かず飛ばずの焼き鳥”さん、「北方領土2島の返還の話が出て来ましたが、でも待てよ、他の2島、択捉、国後には軍事基地まで作っているので、ロシアはまず返さない構えではないでしょうか。でも返還するとされている歯舞、色丹の2島よりもこの国後、択捉はとても大きくて広いですよね。ロシアもアメリカからの経済制裁や、中国の台頭で苦しいので、日本に擦り寄ってきた感があるのではないでしょうか」。

宮家)そうでしょうね。いまのままアメリカと喧嘩して、そして彼らも中国が怖いのでしょう。これは大きな変化です。昔は米ソの超大国2つでしたが、いまロシアは超大国ではない。人口は減っていて日本くらいになっているし、出るのも石油とガスで、何も作れない。得意なのは武器だけですから。ロシアの極東は人口が少なく、反対側には中国の旧満州、すなわち東北3省があって何億人も住んでいる。人口圧力からしてもロシアは決して安泰ではなく、つまり怖いのでしょう。その部分で、戦略的判断をしようと思っているのかもしれない。少なくともプーチンさんはそうなのかもしれません。
日本も戦略的な判断をしなくてはいけないですが、その状況が昔は遠かったのが、接近しつつある。問題は、接近はするけれどすれ違うこともあるかもしれない。そこはこれからの判断ですよね。2島で伸るか反るかではなく、ロシアと日本の戦略的判断が一致するかどうかだと思います。

飯田)ロシアは基本的な立場としては、現状維持であればそれで良いという感じですか?

宮家)ただ、日本との関係をこのまま放っておいて良いのかどうかということです。中国が東アジアにおいて拡大し、圧力が出てくるところで、アメリカとの関係は良くないし、欧州との関係だってウクライナ、クリミア問題があって経済制裁を受けていますから、八方塞がりです。プーチンさんもそこは打開しなければならないと思っているはずです。国内的にも領土問題は譲歩できないし、困ったものだと思うのですが、顔に出さないから役者ですよね。

飯田)こうやって、いきなりはしごを外すようなことを平気でやって来ますものね。

宮家)昔から同じことを言っているのだから、こんなことで動じてはいけないですよね。内々に何を言っているかは分からないけれど、接近しているとは思います。

中国を念頭に置いて中長期的にロシアとどう付き合うか

飯田)日本の戦略としては、2島は硬いにしても、ここで決着させるべきではないですよね。

宮家)4島が最終的な目標であれば、それはそうですよね。ただ、現実もあるので、そこは最終的に国民にどう説明するかです。だけどそれはトリックで説明するのではなくて、戦略的な説明ができれば国民の過半数が納得するでしょう。しかしそれができずに説明に窮するようでは、逆効果ですよね。

飯田)ただ譲歩したように見られるのがいちばん良くないですね。

宮家)一部の新聞では6月と言われています。6月は選挙前なので、そうなると説明にならないと思うので、日本の戦略的な利益は何になるのかを説明できるような対応でなくてはいけません。

飯田)それはもっと引いて俯瞰で見るということですね。

宮家)そうです。2島か4島か、どちらが大きいか小さいかではなくて、1945年以来の環境変化に日本がどう対応するのか。そして最大の問題は中国なので、それを念頭に置いて中長期にロシアとどう付き合うかを考えなくてはならない。

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