北方領土問題~なぜ4島一括ではなく2島先行返還なのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月15日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。日露首脳会談と北方領土問題について解説した。

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ロシアのプーチン大統領(右)との会談で握手する安倍晋三首相(シンガポール)=2018年11月14日 写真提供:時事通信

日露首脳会談~平和条約の交渉を加速させることで合意

安倍総理は昨日、訪問先のシンガポールでロシアのプーチン大統領と会談。1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約の交渉を加速させることで合意した。
日ソ共同宣言には「平和条約締結後、歯舞、色丹を引き渡す」と明記されている。

飯田)きょうの各紙1面トップはこのニュースですね。「締結後に歯舞と色丹を引き渡すという共同宣言の話があるから、2島先行か?」という話も出ています。

鈴木)北方領土に関して大きく動く、歴史的な大ニュースだと思います。昨日の夜から今朝にかけて、可能な限りいろいろな取材をしました。いろいろな見方が出ていますね。日本政府はとにかく「4島一括返還」と常に言って来ました。ところが、一方で現実的な対応として、「まずは2島先行でいいのでは」という意見も永田町にありました。

東方経済フォーラムでのプーチン発言によって「2島先行」が前向きに映る

鈴木)「この手順でいくと、残りの2島(国後島・択捉島)はどうなってしまうの?」という話について。いろいろな見方があるなかで、安倍さんの政務三役の経験者で側近の1人は「非常に難しい政治決断の階段を、一発逆転で1歩上がった」と表現していました。どういうことかと言うと、この前、ウラジオストクの東方経済フォーラムで、プーチン大統領が北方領土問題を棚上げして「平和条約だ!」みたいなことを言って、そのとき安倍さんは何も言い返しませんでしたよね。それについて取材した議員は「何で安倍さんは言い返さなかったんだろう」と悔しがっていたのですが、彼は今回「むしろ、あのときにプーチンさんが、ハードルを日本にとって高くした。そもそも、前に進めるためには2島先行という現実的な対応を日本も考えなければならなかったのだけれど、ゼロどころかマイナスくらいまで言ってくれたから、日本が4島返還までとは言わずとも、『2島から』と決着させるのは前進に見える。1度、マイナスにプーチンさんが下げてくれたから、2島先行でも前向きに映る」と言っています。

飯田)もともとの「4島返還」からすると、2島では下がったように見えてしまうからですね。

鈴木)だけど、ゼロに下げてくれたから、安倍さんが1歩前にガッと進める政治的な印象を作れた。安倍さんとしては、そこに着手してチャンスにした見方もある。

日本は外交で米中露の3国間に上手く取り入っている

鈴木)それから外務省OBが言うには、産経も書いていましたが、北極海の権益を狙って中国がどんどん進出しようとしているのを、ロシアはどうにか防ぎたい。そのブロックのパートナーとして、日本と協力したいのではないかと。
しかし、これはロシアだけの話ではありません。中国も、いま日本と関係が少し前進していますよね。中国は当然ロシアやアメリカが対峙する相手ですから、日本と協力したいと思う。アメリカはアメリカで、中国やロシアを相手にするときに、やはり日本と協力したいと思うでしょう。そこに、したたかに上手く日本は取り入っている。そういう評価をしていました。外交はあくまでもしたたかにやって行かなければいけない。その駆け引きで、日本は3国間に上手く入って、どことも関係を持ち、実利を全部得ていく。「これはなかなかしたたか」という評価もあります。
ただ、北方領土問題としては、最初に言ったように「2島か4島か」が今後の課題になりますね。

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