日露首脳会談では「時効の成立の阻止」を~ロシアの対外情勢は?

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月9日放送)に外交評論家・キャノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。日露首脳会談の展望から東アジア情勢について解説した。

日露首脳会談が来週シンガポールで開催へ

安倍総理大臣とロシアのプーチン大統領との間で、23回目となる日露首脳会談が来週シンガポールで行われることが分かった。9月のウラジオストクでの国際フォーラムで、プーチン大統領は「日本と前提条件無しで平和条約を年内に締結」という提案をしているが、日本が領土問題の帰属を解決せずに平和条約締結はできないという立場を取るなか、次回の首脳会談でどんな議論が行われるのか、宮家邦彦が解説する。

飯田)メールでも質問が来ています。川崎市中原区の“てっちゃん”さん、「プーチンさんが揺さぶりを掛けて来ることはあるのでしょうか?」とのことです。

宮家)揺さぶりと言うか、彼の考え方は基本的に変わっていません。別に思い付きで言っているわけではなく、「まず平和条約を結びましょう。後は何とかしますから」ということです。何よりも、中国の問題などがあるなかで、ロシアとの関係をどう位置付けるかについてです。国民的なコンセンサスが無いと、いろいろな交渉で煮詰まって来たときに、様々な取引をするかもしれない。その準備がどこまでできているかが関連して来ると思います。プーチンさんは百戦錬磨だから、変な球をいっぱい投げて来る。それを全部打ったら空振ってしまうから、好球だけを必打ということなのでしょう。

時効を成立させてはいけない~共同経済活動もその手段の1つか

宮家)いつも言っていることですが、結果がどのような形で出るにせよ、不法占拠には違いない。時効を成立させてはいけないわけです。そのためには、これが不法占拠であること、「領土問題はまだ残っていますよ。平和条約を結びたいなら、領土問題について、帰属の問題について目処を付けなきゃダメですよ」と言い続けることに意味があると思っています。問題はそれに加えて、解決に向けて何が日本の利益になるかということを、国民全体が納得できなければいけない。このプロセスに時間が掛かるのだと思います。

飯田)共同で経済活動をするというのも、時効を止めるための1つの手段ですか?

宮家)やっている人たちはそう思っていないと思いますがね。ただロシア側が考えているような、日本からの経済支援はもっと本格的なものだと思います。いまだってロシアに対して経済制裁があって、厳しい状況は変わらないですから。ロシア領で、ロシアの法律のもとでやるなら簡単な話かもしれないけれど、北方領土でやるのですから。当然ロシアの主権のもとにやるわけにはいかない。そうなると、「どっちが主権を持っているのだ、どっちの法律でやるのだ」ということになる。だからなかなか大規模なものができないというのが実態だと思います。

飯田)まずは水産物の養殖だったり、学校だったりとか。

宮家)そうです。日本側からすればいろいろとアイデアを出していて、方向性としては間違っていないと思いますが、はたしてロシア側が満足しているかと言うと別の話です。でもまずは、向こうの態度を変えてもらわないといけないですよね。領土問題も「解決だ」なんて言われたら困っちゃいますよ、解決していないですから。

プーチン氏の支持率降下~背景にある経済事情

飯田)プーチンさん自身の足元を見ると、一時期かなり支持率が下がっていましたよね。

宮家)そうですね。年金の問題で言えば、金が無い。しかも平均寿命が短いところで時給を上げたらね…(笑)。

飯田)上げたら。

宮家)平均寿命が67歳だから、60歳からやったとしても7年しか無いという話になっちゃう。不満があるのは当然だろうと思います。ロシアは基本的に人口が減っているし、言い方は悪いけれど途上国に近いのです。あるものと言えば、ガスと石油と兵器。作れるものが武器しか無いのです。他の日用品を作れない国だから、どうしても難しくなるのでしょうね。

米露が手を組むことはおそらくない

飯田)中国の人口も伸びて来ているところで、プーチンさんもウカウカしていられない。

宮家)そうですね。私は、ロシアは中国を潜在的に恐れていると思います。いますぐの脅威ではなくて、アメリカとの関係で言えば両方とも共闘しているのかもしれませんが、中国の存在自体は恐ろしいと思います。

飯田)ウラジオストクで国際会議をやっている裏で、中国人民解放軍と大規模な演習をやりましたよね。

宮家)でも笑っちゃいますよね。だってロシア軍の大規模な演習は、中国との戦争に備えてやっているのですから。

飯田)想定はそこなわけですね。

宮家)そこに中国が入って来て、どうやってやるのだろうと思いますよね。

飯田)戦わせるわけにいかないですからね。

宮家)テロ対策としてやっているのかもしれませんが、両者が戦略的なパートナーになるはずがないので。そこはよく念頭において付き合って行くべきだと思います。

飯田)でも「敵の敵は味方だ」という感じで急転直下、米露が手を結ぶことはあるのですか?

宮家)米露は無いでしょう。アメリカの国家安全保障戦略を見ると、中国とロシアはほぼ同等です。アメリカの戦略的な競争者であり、「いままであった現状を変えようとしている悪いやつらだ」と言っている。中国の方が先ですが、ロシアも決してオッケーというわけではないのです。だから私は急転直下、ということは無いと思いますね。

日本に生まれない「長期間で信頼を育める総理」

飯田)日本にとっては、ロシアと中国がこじれれば付け入る隙は出て来ますか?

宮家)可能性としてはあるでしょうね。ただ、あの百戦錬磨の人たちを手玉に取るのはなかなか難しいと思います。アメリカでもできないのですから。

飯田)ころころ変わるような総理だと、なかなか難しい。

宮家)そうです。だから長くやって、信頼関係を作った上で騙くらかす。それができないといけないので、そう簡単に日本からそういう総理は出ません。

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