あの“怪物”を誕生させたのは、18歳のうら若き乙女だった!
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第533回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、12月15日から公開となった『メアリーの総て』を掘り起こします。
ゴシック小説の代表作「フランケンシュタイン」は、如何にして生まれたか…
今年は、イギリスの怪奇ホラー小説「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」が発表されてから200年。フランケンシュタインというキャラクターの存在は、皆さんよくご存知かと思いますが、原作を読んだことがある人は意外と少ないかもしれません。またフランケンシュタインについて、“生まれつき知性が低く凶暴な怪物”というイメージを抱いている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、フランケンシュタインは怪物ではなく、生命の謎を解き明かし自由自在に操りたいという野心に囚われ、人間の死体から“怪物”を作り上げてしまった人物のこと。本来、知的で非暴力的な心優しい存在として描かれているということをご存知でしたか?
私たちがフランケンシュタインを凶暴な怪物として認識するようになったのは、原作の大ヒットを受けた、後世の映像化やパロディ作品による影響が大きいでしょう。
特に、1931年に製作された映画『フランケンシュタイン』に登場した、“全身の皮膚に縫い目がある四角い頭の大男”という姿が典型的なイメージとして広く定着したことが、影響しているのではないかと言われています。そしてそのインパクトあるビジュアルから、いつしか怪物自身を指して“フランケンシュタイン”と呼ばれるようになったのです。
そんなフランケンシュタインの物語を書いたのは、驚くべきことに、当時18歳の少女でした。彼女の名は、メアリー・シェリー。
19世紀イギリス。小説家を夢見るメアリーは、妻子ある詩人パーシー・シェリーと出会います。互いの才能に惹かれあった2人は、情熱に身を任せて駆け落ち。やがてメアリーは女の子を出産しますが、その子は呆気なく命を落としてしまうなど、数々の悲劇が彼女に襲いかかります。
ある日、メアリーは夫とともに滞在していたバイロン卿の別荘で、皆でひとつずつ怪奇談を書いて披露することに。そこで、深い哀しみと喪失を抱えるメアリーが生み出したのが、フランケンシュタインの物語でした。
フランケンシュタインの存在は知っていても、作者が女性で、彼女がどんな人生を歩んだのかはご存知でない方も多いはず。本作を観ると、彼女の人生そのものがフランケンシュタインのストーリーのようでもあり、彼女の経験した孤独と絶望が傑作怪奇小説を生み出したという事実に、切なさを感じずにいられなくなることでしょう。
いま初めて明かされる衝撃の真実を、是非、スクリーンで。
メアリーの総て
2018年12月15日からシネスイッチ銀座、シネマカリテほか全国順次ロードショー
監督:ハイファ・アル=マンスール
出演:エル・ファニング、ダグラス・ブース、トム・スターリッジ、ベル・パウリー、ベン・ハーディ、スティーヴン・ディレイン ほか
©Parallel Films (Storm) Limited / Juliette Films SA / Parallel (Storm) Limited / The British Film Institute 2017
公式サイト https://gaga.ne.jp/maryshelley/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/