ゴーン氏切り捨てか~マクロン大統領がルノーを守る理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月17日放送)に国際政治学者、慶応義塾大学教授の細谷雄一が出演。カルロス・ゴーン氏の関係する報道から、フランス政府と企業の関係について解説した。
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日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者の勾留理由開示手続きが行われる東京地裁の法廷=2019年1月8日午前(代表撮影) 写真提供:共同通信社
ルノー~日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告外し、新体制検討か
フランスのメディアは特別背任の容疑で起訴された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の勾留が長期化する見通しになったことを受け、近く取締役会をルノーが開いて新体制を検討する可能性があると伝えた。
飯田)いままではルノーの会長兼CEOの解任は見送られていた。ルノーのトップであり日産のトップでもあり、持ち株会社のトップでもありました。ゴーンさんの「人」に依存する体制だったわけですが、いよいよこれを切り離しにかかっているわけでしょうか。
細谷)非常に難しい問題で、そもそもフランスは、イギリスやアメリカと違って政府と企業の関係が非常に近い国です。さらにルノーはほぼ国営企業ということで、フランスは世界的な競争力を持った製造業が軍需産業以外あまりないのです。そういった意味で日産と提携したルノーは、フランスにとって極めて大きな存在なわけですね。
このルノーとフランス政府の関係を考えたときに、マクロン政権が経済的に国民から厳しい批判を受けていて、難しい立場にあった。フランス政府がどれだけきちんとルノーを守れるか、フランス政府との関係を維持できるかというのは、マクロン政権にとっては非常に重要な問題です。パフォーマンスを含めて、マクロン大統領自らがこの問題に率先して対応している姿を見せようとしているのだと思います。
飯田)日産も含めてこの体制を維持する、さらにもっとフランス政府に近付かせようとする圧力があって、日産のプロパーの日本人たちはそれに抗ったという見方もできるわけですね。
細谷)フランスと日本で企業の文化、政府との関係には大きな違いがあります。そこでルノーと日産のなかでかなり認識の違いが出てきているのかもしれませんね。
飯田)フランスの感覚からすると、ゴーンさんの逮捕も国策操作じゃないかという風に見てもおかしくないわけですか?
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【日産、カルロス・ゴーン容疑者逮捕】日産自動車グローバル本社=2018年11月22日 写真提供:産経新聞社
フランスにゆかりのあるゴーン氏
細谷)それと合わせて、フランスからするといかにして現在のルノーの経営体制を守るか、ということです。ゴーン氏は世界的に著名で、フランスの大学グランゼコールを出ていますので、フランス人にとっては身近な存在なわけです。フランス人から見ると、ゴーン体制が「クーデター」で崩されたように見えるわけで、フランスのメディアでは非常に強い不信感が見られますよね。
飯田)情報戦みたいになってきていますけれども、日本政府はおいそれと手を出せないわけですよね。
細谷)フランス政府とルノーの関係が近い一方、日本の場合はそうではない。かなり企業の自立性が強いですから、日産は日産として行動しているわけですよね。そういったなかで日本政府が一定以上関与するのは難しい。さらに難しいことに、いま日仏関係が非常に良いのです。かつてないほど接近している。それゆえ、双方ともに適切に対応しようとしています。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00