米が北朝鮮に不可侵宣言打診~進展見せたいトランプ政権苦肉の策

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月15日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。アメリカが北朝鮮へ打診していた「不可侵宣言」について解説した。

アメリカが北朝鮮に「不可侵宣言」を打診

今月27、28日とベトナムの首都ハノイで開催される予定の米朝首脳会談に向けた実務者協議で、アメリカ側が朝鮮戦争の終戦宣言ではなく、戦争の主な当事国である中国と韓国が加わらない米朝2ヵ国だけでの不可侵宣言や平和宣言を北朝鮮に打診したことが分かった。「不可侵」とは「侵すことができないこと、侵略を許さないこと」を言う。

飯田)複数の日米両政府関係者が明らかにしたということですが、この不可侵宣言というものは外交上どういう意味を持つのですか?

飯田)複数の日米両政府関係者が明らかにしたということですが、この不可侵宣言というのは外交上どういう意味を持つのですか?

宮家)「不可思議」宣言ですよね。何を言っているのかよく分からない。本来、朝鮮戦争50年に始まって53年に休戦協定が結ばれていますから。これをもし解決しようとすると、まず戦争終結に同意となって、そのあと平和条約を結ぶという形になるわけです。その場合には誰かが署名するかいろいろ考え方あるだろうけど、休戦宣言について言えば、それに署名したのは国連軍と中国の義勇軍と、人民解放軍じゃないですよ。それから北朝鮮の人民軍の三者です。
ですから、法的に戦争終結その「不可侵宣言」を確定させようと思ったら、これらの関係者が出て来なくてはいけない。だけどそれはできないわけです。だからアメリカからこういう「不可侵宣言」みたいなこと言ってきたのでしょう。は内容的には、変化球なのですが、アメリカとしては何らかの進展を見せたい。アメリカとしては平和条約とか終結宣言となると在韓米軍撤退や再編の問題になるので、現時点ではそこには繋げたくない。そうすると、法的に最終的な形にはならないけれども、政治的な意味で「不可侵」には合意しましょうよということでしょう。

飯田)少し進んだ感じは見せるという。

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2019年1月18日、北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長(右から4人目)と面会するトランプ米大統領(左端)[ホワイトハウスのスカビノ・ソーシャルメディア部長のツイッターより]=写真提供:時事通信

「不可侵宣言」で北朝鮮の非核化は望めない

宮家)北朝鮮側は平和条約を結びしたいと言っていると思います。それに対して、米側は「不可侵宣言はやってあげるから、何とか非核化の話を少し進めなさいよ」と。こういう話し合いをしているのではないかと推測できます。それはが何だかよく分からない「不可思議」なんだけれども、北朝鮮がそれに乗ってくる可能性はゼロではないと思う。ただし、戦争終結ではない「不可侵合意」その程度のものならば、いずれにせよ北朝鮮が本気で非核化をやる気は無いでしょう。
そういう微妙なわけの分からない交渉が行われているわけです。不可侵宣言って何なの? 要するに、「もう戦いはやらない」ということでしょ。ということは終戦宣言がの次に出てくるわけですよね。そうなると、在韓米軍、在韓国連軍、朝鮮国連軍がまさに存在意義を問われてしまうわけだし。下手したらいまの韓国の状況であれば、急激に米軍が撤退する、もしくは再編するとかいう形になるわけです。長い目で見たらそれは1つの解決策かもしれないけれども、いまのように北朝鮮が非核化をについて本気でやる気が無いときに、どうしてそんな譲歩をしなくてはならないのか、そういうことをどうして米国はそんなに前のめりにやるのか…。非常に心配な動きですよね。

宮家)アメリカのなかでも心ある人たちは、私の言ったような同じように、これには危ないと感じていると思いますが。残念ながらトランプさんはそう思っていないのでしょうね。こういうことを北側に打診するということは、トランプさんから何らかの妥協を考えろと言われて捻り出した苦肉の策ではないですかね。

飯田)これは日本にとっては頭の痛いところです。

宮家)頭の痛いところですよ。終結宣言が出たりしたら、いずれ日本の防衛線は38度線ではなく、対馬海峡になるかもしれないという覚悟を持っていた方がいいと思います。

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