アメリカ軍が韓国撤退すれば日本の防衛線は対馬海峡に
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月8日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。北朝鮮がICBMの製造拠点であるミサイル総合研究団地で新たな動きを見せたことについて解説した。
北朝鮮のICBM製造施設で動きか
韓国の情報機関、国家情報院が、北朝鮮平壌郊外の山陰洞(サヌムドン)にある、ミサイル総合研究団地で物資輸送用の車両の活動を捕捉していたことが7日わかった。アメリカ本土を狙うICBM(大陸間弾道ミサイル)を製造した拠点として知られ、韓国軍当局者は、施設維持の動きと見ている。
飯田)昨日あたりですか。このニュース、アメリカの調査機関、シンクタンクからも出ています。
アメリカは北朝鮮の動きはすべてわかっているはず
宮家)北朝鮮はハノイに行ったからと言って、ミサイルの製造を途中で止めることなどしないですよ。去年の6月12日のシンガポールで会議をやって、新しい計画はやめるのかな、いままで作った物はともかく、と思っていたら、「実際には核開発をやっているではないか」ということです。
アメリカのシンクタンクだって、「最近こういう動きがあって、やっぱりあんなもの立ててました」って言うけれど、衛星から見ているのだから「前から分かってんだろ、そんなことは」ということですよ。
空から毎週見ているのですから。「北朝鮮が本気で非核化をやる気が無いということは分かるでしょう」と言いたいですよ。北朝鮮の専門家に言わせると、「金正恩は非核化する覚悟を決めたと思う」という人もいるのですよ。でも全然覚悟など決めてないではないかという感じがして、残念だなあと思います。トランプさんは「本当なら残念だ」とか言っていますが、彼だって分かっていたと思いますよ。
飯田)毎日ブリーフィング受けますよね。
宮家)ちゃんと聞いているかどうか知らないけど。
飯田)6月12日の会談以降、日本の国内でも、これで平和が訪れるみたいなバラ色の未来が報じられていましたが。
韓国の思惑に振り回されている日米
宮家)一部の人はね。僕は違うと思っていましたけどね。今更言ってもしょうがないけれど。
北朝鮮がなぜ核兵器を開発したのか。歴史的に考えたら簡単です。1990年91年の段階でソ連が崩壊した。金日成の一族なら、次は俺たちだと思うに決まっています。そして90年代の前半で、「生き残るためには核兵器を持たなくてはならない」となる。それで94年の危機が訪れるわけです。彼らは一貫しています。ですからその意味で私は、北朝鮮がそう簡単に核兵器を放棄するわけはないと思っていました。
何よりもう一つの大事なポイントは、韓国から見れば、中国が台頭して来た。アメリカはどうも落ち目だ。「これはチャンスだ」と思ったわけです。北と話をして、朝鮮半島の統一に向けて動いて、できれば中国もアメリカも朝鮮半島から手を引いてくれと。我々が主人になるのだと。こういう気持ちがあったのかなと思うのです。それに我々が振り回されているということです。
飯田)朝鮮半島はこれまで、中国であったりロシアであったり、あるいは日本もですが、周りの大国に小突き回されていた歴史がある。
宮家)ですから彼らのチュチェ(主体)思想というのも、そういう発想で見ると、なるほどなと思いますよね。
米韓合同の軍事演習の中止は、米軍の軍力低下に
飯田)アメリカと韓国の関係ですが、軍事演習を相当な規模で止めるとしていますが。
宮家)何を考えているのですかね。トランプさんはこれで金が浮くと言っていますが、金の問題ではないのです。オリンピックで練習をしないで金メダルを獲れる人がいないように、訓練しないで抑止力を維持できる軍隊はありません。年に1回やるのはお金を無駄遣いしているのではありません。実際に、戦わなくてはいけないときに戦えるかどうかです。兵隊は当然ローテーションで回って行くのですから、ずっと韓国にいるわけではありません。アメリカ軍だって定期的に訓練をしなかったら、戦闘能力が低下するのは当たり前。それがどうしてもあの大統領には分かって貰えないということですよ。
飯田)アメリカ軍の司令官などもかなり危機感を抱いている。
宮家)それはそうですよ、訓練できないのだから。だけど大統領の命令だから仕方ない。昔はマティスさんという人がいて、我慢しながら何とか耐えて来たのだけれど、それもクビになって、もう止められる人はいないのではないですかね。残念ですけれど。
飯田)韓国としてはそう言いながら、在韓米軍は出て行けとまでは言わないけれど、指揮権をこっちによこせみたいな……。
米軍が韓国撤退すれば日本の防衛線は38度線から対馬海峡となる
宮家)僕が聞いたのは、韓国はどこか甘えていて、どうせある程度やってもアメリカは出て行けないだろうと思っている、ということです。
飯田)足下を見ているということですか?
宮家)新しい基地を作って、38度線に近すぎるのはいけないからソウルから南に下げたわけです。それはすべて韓国が費用を負担していますから、これだけのことやっているのだからアメリカ軍が出ていくわけ無いと思っているのかもしれません。
だけどトランプさんは本当に出ていくかもしれない。そこの部分で韓国とトランプさんとの間で、ボタンの掛け違いが起きていないことを願っています。
飯田)思い出すのはフィリピンからアメリカ軍がすっと引いたあとに、いちばん利を取ったのは中国だった。
宮家)力の真空ができますからね。そうなると、それが38度線と対馬海峡の間で起こるわけだから、下手すると日本の防衛線が38度線から対馬海峡になってしまう。日本は、そうならないようにするには、どうしたらいいかを考えなくてはなりません。
飯田)プランBとしては、そうなった場合も考えておく必要があるのですか?
宮家)それは大変なことですよ。1953年の休戦協定以来、維持して来た日本の防衛体制、さらに言えば自衛隊ができたのが54年だし、日米安保条約を改定したのは60年です。すべて、38度線を前提に考えてきたわけです。それが変わるなんてことになったら大変なことです。
飯田)防衛大綱とかのレベルの話ではなく、日米安保も含めて……。
宮家)もう日本を取り巻く安全保障環境の激変になりうるということです。要注意だと思います。すぐそうなると言っている訳ではありませんけどね。
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