工藤大輝が語る欅坂46 「いよいよ無双モードに突入」

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【月イチ連載コラム:工藤大輝と偶像音楽論(通算 第30回)】

工藤大輝が語る欅坂46 「いよいよ無双モードに突入」

圧倒的。

 

アイドルという枠があるとして、

当てはめなければいけないとして、

だとしても当てはめることを躊躇してしまうような、

そんな領域に達してしまった。

 

アイドル=偶像と考えるのであれば、グループ、そしてセンターの在り方というのが一番本来の意味に近しいところにあるグループになったのではないのかと思います。

 

で、ありながら、夢と希望を明るく照らす光のような存在であるというステレオタイプな独自解釈の「アイドル」という位置で考えるとするなら、対極。

 

虚しさ、悔しさ、怒り、焦燥、絶望、矛盾、そんなおおよそ光とは真逆の感情をこんなにも説得力のある形で表現できる存在というのは他になく、これこそが欅坂46としてのアイデンティティであって、新しい「アイドル」というカテゴリーなんだと認めざるを得ない。

 

説得力が違う。他人に書いて貰った歌詞で、他人に作って貰った音で、他人に作って貰った振付で、他人が考えた映像で、与えられた条件で表現していくという大前提を頭に置いた上で、その上で圧倒的に説得力が違う。

 

黒い羊 / 欅坂46

今年のグラミー賞を受賞したChildish GambinoのThis is Americaという作品があります。アメリカ社会の様々な問題を表現したMVで世界的に注目を浴びた楽曲です。

 

This is America / Childish Gambino

黒い羊は言うなればThis is Japanと言っても過言ではない作品で、日本ならではの問題や闇が随所に散りばめられています。全体を通して平手さんの鬼気迫る演技やダンスの構成や振付に注目されがちですが、一つ一つ読み解いていくと、やはり社会そのものにアプローチしているように作られているような気がしてなりません。故に、年齢や性別を飛び越えて共感を得ることのできる作品になっているように思えます。

 

そして映像だけではなく、楽曲そのもののクオリティも圧倒的で、僕もはじめて聴いた時に一音聴いた瞬間に耳を持っていかれました。

 

いつも書かせていただいている、イントロの大切さという観点から少し語らせていただくなら、ピアノ、ですね。このイントロのピアノに全てが込められていると言っても過言では無いかと。

 

弾き語りをしてみた人がいたら分かるかもしれませんが、ただピアノを「弾く」だけではこの音色にならないんです。逆再生を混在させて複雑にしています。逆再生ピアノは、割と使い方的にはポピュラーで、ホラーとかサスペンスとかのBGMでもよく使われてる技法で、僕のとても好きな音でもあります。普通に弾くよりも何倍もドラマチックに且つダークになる。

 

そしてAメロから入ってくるベースの音圧が凄まじい。

 

アイドル楽曲のセオリーで普通ならここまで主張させずミックスで落とすはず。ここも普通ではないところの一つです。

 

そこから更に色んな音を積み重ねてはいくものの、最終的には最小限。

 

ナスカさんの作る曲はこういうタイプが多く、個人的にとても好みなんですが、黒い羊に関しては編曲も担っているということで、エキセントリックよりもだいぶ攻めた音使いになっているように思えます。なので、更に好き。

 

比べるものではないとは思いますが、乃木坂さんでいう所の印象的な楽曲の作家さんが杉山勝彦さん&Akira Sunsetさんコンビだとするなら、欅坂さんはナスカさん&バグベアさんでしょうか。グループを形容するような象徴的な 楽曲イメージを作るというのはとても難しいことで、しかしこれができると方向性も固まるし、とても強い。

 

そして、秋元康さんの書く歌詞。

 

これが絶対的な説得力もっていることを忘れてはならない。

 

今の欅坂さんは方向性も、それぞれの意思も、世間のイメージも、全てがしっかり固まった状態で、いよいよ無双モードに突入したんじゃないでしょうか。

 

踏まえて、次の一手も気になります。

 

関連した流れで、日向坂さんがどのような楽曲でイメージを形作っていくのかまだ分かりませんが、方向性を固めるのが第1段階、グループとして認知されるのが第2段階、ソロも視野に入れた大展開が第3段階の坂だとするなら、乃木坂さんは第3段階の坂、欅坂さんは既に第2.5段階、いよいよもって次は日向坂さんの番になるのではないでしょうか。2019年それぞれの活動が楽しみです。

 

と、言うことで今回はこの辺で終了とさせていただきます。次回も楽しみにしていただけると幸いです。

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