ヨーロッパ議会選挙~大きな曲がり角に来ているEU
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月24日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ヨーロッパ議会選挙について解説した。
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オランダ西部カストリクムの駅に設置された投票所で、欧州議会選挙の票を投じる有権者(オランダ・カストリクム)=2019年5月23日 写真提供:時事通信
ヨーロッパ議会選挙投票始まる
5年に1度のヨーロッパ議会選挙の投票が5月23日、イギリスとオランダで始まった。5月26日までの日程でEUヨーロッパ連合の全28ヵ国で投票が実施される。
飯田)議会定数751を争うヨーロッパ議会選挙ですが、この議会は偉いのですか?
宮家)偉いと言えば偉い。たかがヨーロッパ議会、されどヨーロッパ議会。EUはもともと国家の連合です。単一の国家ではないのだから、各国がコンセンサスであがって来たものを最終的にEU全体でどういう法律にするか、それを決めるのだと理解しています。ですからいまの主流派が過半数を割ったとしても、すぐに物事が全てひっくり返るわけではないのだと思います。
米ソの冷戦が始まり、第二次世界大戦で欧州大陸は崩壊した。どうやってヨーロッパを再興するか。そして、米ソの狭間のなかで如何に存在感を示すかということになり、みんなと一緒になるしかないということでEUができた。
ところが、ソ連が消滅して冷戦に勝った途端に求心力がだんだん薄れて来た。そしてアメリカが一人勝ちして、グローバルゼーションが大きく始まった。グローバルゼーションの結果、各国の、いままである程度上手く行っていた中産階級の人たちが落ちぶれて来た。そして、移民や難民が入って来る。テロは起きる。
EU各国を自由に人が移動して、それで難民を受け入れたら、結局俺たちの生活が悪くなるではないかと。グローバルゼーションのなかで、弱肉強食の資本主義がまた復活して、結果負け組が出た。その負け組が「EUというものはおかしいのではないか」と言いだしたのが、始まりだと思います。
大きな曲がり角に来ているEU
宮家)これでもし予想されるように、極右とよばれる保守派の民族主義者たち、もしくはポピュリストたち、排外主義者たちが数を増やして来て、仮にいままでの主流派が過半数を失った場合どうなるか。それは、急に変わるわけではないけれど、これ以上EUの統合はできなくなるということです。
欧州の黄昏とは言わないけれど、ちょっと曲がり角に来た。前からいくつか曲がり角に来ていますが、かなり大きな曲がり角になるのではないかと思います。
飯田)結局、冷戦後の求心力がなくなるなかで、維持するためにユーロを作ったり、EUという新しい枠組みや欧州議会も作った。
宮家)ユーロを作って本当に良かったのか。その結果、ドイツだけが一人勝ちしたわけだし、欧州連合を拡大すればいいというものではない。そこは失敗したのかもしれません。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00