ルノーとFCA、そして日産…統合協議に思う

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「報道部畑中デスクの独り言」(第134回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とルノーの統合提案が撤回されたニュースについて解説する。

フランス自動車大手ルノー(左)と欧米大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のロゴマーク(フランス・パリ)=2019年5月27日 写真提供:時事通信

カルロス・ゴーン前会長の逮捕以降、日産自動車とルノーとの統合問題がくすぶるなか、降ってわいたのがFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とルノーとの統合協議でした。しかし、協議からわずか10日あまりで、統合提案は撤回、計画はいったん“白紙”になりました。

外電の分析ではルノーの筆頭株主、フランス政府が経営統合の決定を遅らせようと介入したことに、FCAが不快感を示したとされています。フランス政府は国内の人員削減や工場閉鎖などのリストラをしないよう求めて来たとも言われ、ルノーは取締役会を重ねたものの、経営統合をめぐる結論が出なかったと報じられています。

一方の日産は当初、「蚊帳の外」とみられていましたが、西川広人社長は記者団に対し、「日産の利害を評価したり、情報をもらったりする時間が欲しいと繰り返しお願いしていた」と述べ、日産側が統合提案に賛同しなかったことを事実上認めた形になりました。

謎の多い今回の提案劇ですが、私がまず気になったのは社風です。確かにグローバル企業はそうしたものを乗り越えた所にあるのかもしれませんが、片や、フランス政府が株を保有し、半ば国営企業の性格を持つルノー。片やアメリカのクライスラーのほか、ランチャ、マセラティ、アルファロメオなどの国内ブランドをほぼ手中にし、「イタリアを代表する企業」である上に、創業家が経営に関与する「オーナー企業」の側面を持つフィアット。

そして、典型的なサラリーマン企業の体質を持つ日産。吸収合併ならまだしも、さすがにこの3つが対等な立場で融和するのは難しいのではないかというのが、私の拭えない印象でした。「過去、無理な拡大をして来た」と日産の西川社長は、先月(5月)の決算会見で拡大路線の決別を表明していました。それと矛盾する動きでもあります。

【日産、ルノー、三菱自が共同記者会見】記念撮影に臨む(左から)ルノーのボロレCEO、スナール会長、日産の西川広人社長、三菱自動車の益子修会長=2019年3月12日午後、横浜市西区 写真提供:産経新聞社

日産とその傘下にある三菱自動車、両社とFCAとの関係はこれまでなかったわけではありません。日産はフィアットのブランドの1つになっているアルファロメオと、1980年代に数年間ですが合弁事業を展開した時期がありますし、三菱自動車に至っては1970年の発足(三菱重工業からの分離・独立)前にクライスラーと合弁事業を立ち上げるなど、長らく提携関係にありました。しかし、どちらも成功したとは言えず解消し、現在に至ります。

FCAがルノーとの経営統合の先に、日産との統合あるいは提携を見据えていたのは間違いないでしょう。今回、統合協議の背景の1つにはEU=ヨーロッパ連合の厳しい環境規制があります。EUが設定する新車の二酸化炭素の排出量目標は、2021年までに平均で1km当たり95gと、従来の130gから厳格化されます。

また、昨年(2018年)暮れに欧州議会は2030年の排出量を、2021年の目標からさらに37.5%削減する基準に暫定合意しました。算定基準は各社で差があるものの規制は厳しくなる一方で、クルマの電動化が必須と言われる所以です。

一方でFCAの現状はと言うと…4月には複数のメディアが、これまた電動化技術で知られるアメリカのテスラと、「オープン・プール」(二酸化炭素の排出削減基準を達成するために自動車メーカーが連合を組むこと)を結成すると報じました。つまり、テスラの車両の排出量を融通してもらい、EUの規制を満たさないことで生ずる罰金を避ける算段ですが、代わりにFCAがテスラに数億ユーロを支払うのだそうです。

この報道を見ても、FCAの環境対応は厳しい状況にあることがうかがえます。電動化の技術が喉から手が出るほど欲しいというのは想像に難くありません。それはルノーもまたしかり。今回の提案は、日産との統合を有利に進めるための方策だったではないかという見方もあります。

もっともEUの厳しい規制は多分に政治的なものであり、欧州のメーカーから批判の声があるのも事実。欧州には電動化技術がなくても、魅力的なクルマはたくさんありますし、そうしたクルマが消えてしまうとも思えません。結局、今回の提案劇は、日産にとってポジティブにとらえれば、日産の技術の高さが認められていることを示したと言っていいでしょう。

しかし、日産がその技術を十分生かしてプロダクト=製品に反映しているかと言えば、正直疑問符がつきます。今回の提案について私は懐疑的でしたが、一方で例えば日本でも人気のフィアット500(通称「チンクエチェント」)のようなクルマが日産にもあれば、あるいは逆にチンクエチェントに電動化技術が導入されれば、さぞかし面白いのではないかとも思いました。


日産が経営の自主性を保ちたいのであれば、たゆまぬ商品力の向上と経営陣の胆力が不可欠だと思います。結局はそこに行き着くような気がします。でなければ技術だけが流出し、気が付いたら“抜け殻”になっていたということにもなりかねません。技術を狙っているのはFCAやルノーだけではありません。

統合計画はいったん白紙になりましたが、現状で終わるとは思えません。思いがけない別の再編劇が待ち構えているのか、目が離せない状況は続きます。(了)

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