香港空港からデモ隊撤退~その先にあるもの
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月16日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。香港国際空港でロビーを占領していたデモ隊が撤退したニュースについて解説した。
香港国際空港からデモ隊が撤退し、空の便が回復
香港国際空港が政府に対する市民の抗議活動によって混乱していた件で、空港ロビーを占拠したデモ隊が15日朝までに空港から撤退した。空の便は回復したが、航空当局などによると占拠の結果、12日以降の発着便の欠航が1000便を超え、影響した人数も10万人を超す見通しだということだ。
飯田)地元の裁判所が14日、空港内でのデモを禁じる命令を出したということで、空港側が施設のなかへの立ち入り管理を強化したということもあったようです。
宮家)学生たち、もしくはいろいろなグループの人がいると思うのですけれど、彼らはやり過ぎた部分があった。お詫びを言っている人たちもいましたよね。しかし、抗議デモ自体はこれからも続くのですよ。なぜなら香港は一国二制度で、自由と民主主義が維持されるという前提でやって来たのですから。そこでああいう(犯罪人を中国本土に引き渡すという)法律を作ろうとすれば、反発するのは当たり前です。それは当然だと思うのですが、残念ながらデモ隊の方にも統一されたリーダーシップがあるわけではない。もっとも、強力なリーダーがいたらとっくに捕まっていると思いますけれどね。デモ隊にも限界があるということで、この辺が潮時でしょう。おそらく反対派の人々は次の手段を考えるのでしょうね。
これに対し、中国本土の方、もしくは中華人民共和国ですけれども、たしかに深圳に武警の部隊を集めて訓練をやって、それをきちんとメディアに見せているわけです。見せているということは、本当は実力行使はやりたくないということですよ。「やるぞ、やるぞ」と言っているけれど、本当にやるのだったら黙ってやるでしょう。
飯田)奇襲をかけた方が効果は高い。
天安門事件の二の舞は避けたい中国
宮家)本当にやったら大変ですよ。これでもし中国の武警が香港に入って来て、天安門事件のようなことになったら、経済制裁が課せられて、もう二度と中国経済は立ち上がれないですよ。1989年6月4日の天安門事件のときも、そのあとどれだけ厳しい経済制裁があったか。国際社会にとっては、いまどき、21世紀にもなって中国はまだこんなことをやるのかということになるだけだから、中国は武力介入など本当はやりたくないはずです。ただし、やりたくはないのだけれど、やらざるを得なくなったらあの国ですから、必ず断固としてやります。ですから今回、ああいう形で香港の裁判所の新しい命令が出て、デモ隊も空港からは撤退し、ここは少し静かにするということは正しい判断だと思います。
飯田)裁判所からの命令も出たということで、空港ではやらずに、どこかで次を。
宮家)やるでしょうね。
飯田)SNSなどのチャットツールのようなアプリを使って、次はどこでやるかを投票で決めている、という情報もあるそうです。
宮家)その投票には中国の当局も参加しているかもしれませんからね。
飯田)デモ隊の内部にも、警官が服を着替えてなかにいて、そういう人たちが暴れたという情報もあります。
裏にアメリカが存在していると思っている中国
宮家)学生運動にスパイを送るのは当たり前の話で、昔は日本もそうでした。しかし中国も、香港で本土と同じようなやり方をしようと思ったら、相当大きなコストがかかるということを考えなくてはいけないと思いますけれどね。彼らはアメリカが裏にいると思っているのですよ。
飯田)中国側はそう批判していますね。
宮家)CIAだなんて言っていますけれどね。CIAがそんなことをしなくても、香港には民主主義と自由主義の伝統と言ったら短いかもしれないけれど、十分な素地があります。世界中のNGOが支援しているのだから、CIAがやらなくたって十分できますよ。もちろん、CIAが絶対何もやっていないとは言えないかもしれませんけれどね。中国は、単に武力を使えばいい、もしくは武警を使えばいいという問題ではなくて、もう少し考えて欲しいですよね。自制して欲しいと思います。
飯田)トランプ大統領などもツイッターで、警告めいた形で自制を促すようなことも書いていますが。
宮家)それはポーズですよね。SNSでメッセージを出しても、それで世の中が動くわけではないので。もっと本気で静かに、強いメッセージを中国に送らなければ。
飯田)先ほど経済の話にも触れられましたが、もともとは香港が出入り口だった。いまは直接やり取りをできるようになって、香港の地位が相対的に沈下したとも言われていますが。
宮家)深圳に行けば分かりますけれども、あの町はいまや昔の香港以上に大きくなっています。香港から出稼ぎに深圳へ行く人もいるくらいだから、立場は逆転してしまったのですね。しかし、深圳にないのは自由であり民主主義です。その火だけは消してはいけないと思います。
飯田)その辺もにらみながら、習近平体制も。
宮家)アメリカにまたやられたと思っているでしょうね。貿易だ、金融だ、テクノロジーだ、さらには民主化までやるのかと。この種の対中圧力が同時に起きていますよね。中国は追い詰められていると感じているでしょう。
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