「老犬介護士」という仕事~愛犬の老いや認知症にどう向き合うか
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
動物医療の進歩で、犬の寿命も伸びています。介護が必要になった老犬たちのケアをしたり、飼い主に適切なアドバイスをする「老犬介護士」という仕事があるのをご存じですか?
きょうは、専業主婦から「老犬介護士」になり、年老いたワンちゃんのケアで活躍する女性のストーリーです。……この仕事を目指したきっかけは、何だったのでしょうか?
「床ずれを防ぐためにワンちゃんに寝返りを打たせるには、ヨガマットを使うといいですよ」
「足の具合が悪くてお散歩ができないときは、できるだけ陽に当ててあげましょう」
東京・多摩地区を拠点に、高齢になった犬の介護や健康へのアドバイスを、勤務先の動物病院や訪問先の家で行っているのが、老犬介護士の平端弘美さん・58歳。
「私、去年(2018年)の春からこの仕事を始めたんですけど、それまではごく普通の主婦だったんです」と言う平端さん。老犬介護士を目指そうと思ったのは、平端家でいま飼っている14歳のポメラニアン・ライチくんの存在も大きかったそうです。
「娘が中学生のとき、1学年1学級でクラス変えがなく、学校生活が単調になっていたんです。気分を変えてあげようと、娘がずっと欲しがっていたポメラニアンを飼い始めました」
ライチくんを迎えたことで、家族全員が日々を楽しく過ごせるようになったという平端さん。8年前、アニマルセラピーについて取り上げたテレビ番組を観て感銘を受けたことがきっかけで、改めて犬の持つ癒やしの力を感じた平端さんは、「私も犬に関わる仕事をしよう!」と一念発起。
まずは2013年にトレーナーの資格を取り、犬のしつけ教室や出張トレーニングを行っていましたが、次第に飼い主さんたちからこんな相談を寄せられるようになりました。
「うちの子、最近歩くのがやたらと遅くなって来て…」
「私のことがわからなくなったのか、抱き上げたら噛みつくようになったんです。もしかして認知症じゃないかしら……」
犬の種類にもよりますが、だいたい7歳~8歳が「老犬」への入口になります。足腰が弱くなったり認知症になる犬が出て来るのも、人間とまったく同じ。しかし、そういった老犬のケアに関する相談に乗れるドックトレーナーは、実際のところ少ないのが現状です。
「ちょうどそのころ、うちのライチも12歳で、介護のことを考える年齢になっていたんです。だったら私が、老犬と飼い主さんを手助けできる存在になろうと決心しました」
平端さんは、ドッグリハビリトレーナーと老犬介護士の認定資格を取得。去年の秋から訪問介護先や動物病院などで、老犬のリハビリや整体をする仕事も始めました。
歩くこともおぼつかなかった犬が、平端さんのケアのおかげで元気を回復。飼い主に感謝されることも。しかし、ときにはケアの甲斐なく寿命を迎えてしまう犬もいます。
「そういうときは、飼い主さんの心のケアも大事ですね」
そんな飼い主の気持ちが痛いほどわかる出来事が、去年の3月、平端さんにも起こりました。ある朝、ライチくんがグッタリしていたのです。そんな状態になったのは初めて。急いで動物病院に連れて行きましたが、検査の結果、胆のうが破裂しており、「命が危ない」と緊急手術をすることに。
家族全員、祈るような気持ちで見守り、手術は無事成功。ライチくんは一命を取り留めました。
「重病から復活したライチの姿を見ていたら、『私も老犬介護士として、さらに頑張ろう!』という、使命感のような強い気持ちを持つようになりました」
いま平端さんが力を入れているのが、「犬の介護をゼロにする」プロジェクトです。「介護が必要な犬を作らない飼い主になろう」が目標で、犬が若いうちから正しいケアの仕方や栄養のこと、犬の体の仕組み、認知症のことなどを飼い主に学んでもらおうというもの。
平端さんは共通のテキストを使ってセミナーを開催。この活動を、ゆくゆくは全国に広げて行きたいと言います。
「いま何ができない、何を失敗したと愛犬を叱るのではなく、きょうできたことを『すごいね!』と褒めてあげて、一緒に喜んであげることが大切なんです。言葉にして笑顔で接してあげると、ワンちゃんも喜びますよ」
八木亜希子 LOVE&MELODY
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