安倍総理の首相在任期間が最長に~難しい“適正な評価の仕方”
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月20日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。安倍総理の在職期間最長から日本の言論空間の現状まで解説した。
安倍総理、憲政史上最長の在職期間~20日で通算2887日
安倍総理の在職期間が20日、通算で2887日となり、憲政史上最長となった。自民党総裁としての任期は2021年9月まであり、任期いっぱいまで総理を務めれば在任期間は3500日を超える。
飯田)19日に通算の日数が2886日になり、これまでの憲政史上最長だった桂太郎氏に並びました。そして、きょう(20日)で単独1位になりました。
どう適正に評価するかということが難しい
佐々木)ここまで長く続くとは、誰も予想していませんでした。ツイッターやメディアを見ると、左派と右派で見えている世界がまったく違う。左派の人たちの言い分を見ると、史上最悪のファシズム政権という感じで、「なぜ支持されているのか信じられない」というものです。右派の方から見ると、「これだけ素晴らしいので当然でしょう」と。ここまで分断が進んでいるなかで、安倍政権をどう適正に評価するかということは難しいです。
飯田)是々非々というものが、ここまで難しいかと。評価するポイントはよきにしろ悪しきにしろ、たくさんありますよね。
佐々木)個人的には、外交安全保障をよくやって来たと思います。北方領土問題が棚上げになっていることなどもありますが、隅をつつき出すときりがありません。方向としてはドイツやフランスと並ぶ、リベラルな国際秩序の担い手としてやって来たのではないでしょうか。ただ一方で、アベノミクスは途中で腰砕けになり、3本目はどこかへ行ってしまったし、ついには消費増税もしてしまった。経済は中途半端ですね。憲法改正はどうなるかわからないという部分もあります。
飯田)最初のアベノミクスの3本の矢、財政出動、金融緩和で盛り上げて、消費増税1回目の前までは上手く行っていたのですが。
今後は左右ではなく、上下、格差が問題に
佐々木)今回の増税がなければ、上手く行った可能性もあります。安倍総理が3期を終えて、次を誰が担うのか。反緊縮の人が本当に少ない。21世紀も残り80年しかありません。いいかげん、全盛時の右と左、保守と革新ということは有効性がないと思います。いまは左右ではなく上下、格差でしょう。低成長時代になると資本収益が高くなり、労働による収入が減って行く構造になります。その上下の格差をどう埋めるか。そこで緊縮するのか、財政出動するのかが重要な対立軸になると思いますが、いまのところ日本では対立軸が有効に作用していません。経済学者の人で、特にリベラル派の人は反緊縮、財政出動と言っている人が多いのですが。
飯田)それは左右の政治スタンスとは関係なく、ということですよね。
佐々木)政治家となると山本太郎氏しかいません。ただ山本太郎氏も原発問題を考えると、にわかに信用しがたいところがあります。
飯田)同じことがメディアにも言える部分があって、右左のスタンスはあるけれど、経済面でのスタンスは押しなべて緊縮派に近いです。
なぜ権力監視に官僚が入らないのか
佐々木)これは政治主導の話も絡んでいて、結局メディアは官僚から情報をリークされて書くことが多いので、霞が関にリードされています。緊縮の問題は、財務省の影響が大きいと思います。見えない官僚支配が相変わらず続いていて、前世紀の終わりから政治主導にしなければいけないというのはありました。安倍政権になってからは官邸のリードです。これをやり出すと官邸の独裁だということになって、「霞が関に自由を取り戻せ」となります。裏側で霞が関が反発しているのが見えます。
飯田)そこに反対することが権力監視なのだと、メディアが乗っかるのですよね。
佐々木)なぜメディアは権力監視のときに、相手に官僚が入らないのか。官僚の権力監視の方が重要だと思うのですが、そこは上手く乗せられている感じがします。
世界的な見方と日本国内での見方の不思議なねじれ
飯田)現状の政権に少しタカ派的なスタンスがあるので、どちらかと言うと左派がいまの政権に対して反対するのですが、一方で世界標準で見ると、安倍総理がやっている経済政策は左派政策です。本来は是々非々で、そこはそことして「褒めるけれども足りない」という批判であればわかるのですが、そうはしないのですよね。
佐々木)ノーベル経済学者のクルーグマン氏が、安倍総理の財政出動は正しいと言っています。
飯田)クルーグマン氏は民主党支持者ですよね。
佐々木)世界的には安倍政権はリベラルの一翼と思われていますが、日本国内だと極右に思われています。そのねじれも不思議で仕方ないですよね。
飯田)経済政策に関しては、もっとメディアは認めていいと思います。
佐々木)ここでもう1度、緊縮か反緊縮か、そこで官僚がどういうコントロールをしているかということを、洗いざらい出して議論する方向へ持って行かなければならない。この後、グズグズと緊縮に行ってしまって経済成長しないまま、平成の30年が令和の時代も続くことになってしまいます。
飯田)そこに多重介護などが絡んで来ると、経済はガタガタになりますよね。
佐々木)人口が減っても維持される経済成長を考えなければなりません。AIやロボットが入って、人手不足が解消される可能性はありますが、ミスマッチが起きて仕事がなくなってしまう可能性もあります。そこをどう手当するか。あるいはAIやロボットが仕事を奪うのであれば、最後はベーシックインカムで、という話にもなるでしょう。そういう議論を真面目にやらなければなりません。
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