伊賀市の忍者集団が新メンバーを募集~合格者はいる?
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ニッポン放送「週刊 なるほど!ニッポン」(11月24日放送)では、「三重県伊賀市の忍者集団が新メンバーを募集! しかし未だに合格者ナシ!?」というトピックスを紹介した。
2018年、三重県伊賀市のあるニュースが海外で話題になった。「忍者不足により、伊賀市が忍者を募集! 忍者は8万5000ドル稼げる」という内容のもの。
8万5000ドルは、日本円でおよそ1000万円。もちろんフェイクニュースなのだが、この誤った情報がインターネットで世界中に拡散され、「応募したい」「詳細を知りたい」といった問い合わせが殺到した。スペインやイタリア、アメリカなどの10ヵ国以上から100件ほど、伊賀市や伊賀上野観光協会などに届いたという。
その後、伊賀市はホームページに「忍者は募集していません」と否定する文章を、日本語や英語など5ヵ国語で掲載し、事態は収束したとのこと。
実は2019年6月、伊賀市の忍者屋敷「伊賀流忍者博物館」で、忍者ショーに出演している「伊賀忍者特殊軍団 阿修羅」が新メンバーを募集した。
今回は本当に「忍者」の募集だったのだが、未だ合格者はいないという。それはなぜなのか、「伊賀忍者特殊軍団 阿修羅」の頭領・浮田半蔵さんに、立川晴の輔が話を伺った。
晴の輔:昨年(2018年)、「伊賀市が忍者を募集する」というフェイクニュースが出ていたことを、半蔵さんはご存知でしたか?
浮田:知っていましたし、取材に来た記者さんにも話しました。海外に行くと、その人気は『スーパーマン』『スパイダーマン』『忍者』と三大巨頭です。忍者の聖地「伊賀」から来たということでも見られ方が違いますし、特にニューヨーク、ロンドン、パリなどはお客さんが数万人規模で入りましたね。
晴の輔:「伊賀忍者特殊軍団 阿修羅」では、メンバーを募集されたのですよね?
浮田:はい。問い合わせや履歴書などが送られて来たのは、10件ぐらいでした。
晴の輔:しかし合格者は出なかった。かなりハードルが高いということですか?
浮田:ハードルが高いというよりは、伝承して行かなければならないことが多いので、歴史を覚えたり、技を覚えたり。なかでも「心得」がもっとも重要です。そのため、役者を目指しているというだけでは務まらないのです。
晴の輔:若い方はリズム感があるから、形だけは何となくできてしまったりする。だからこそ、心からにじみ出るような忍者に育てるということですよね。
浮田:海外に行けば言葉が通じませんから、体からにじみ出るオーラがないと、絶対にお客さんには伝わりません。
晴の輔:体もそうですが、心の修行ですね。
浮田:「辛抱」がないと、絶対に体に入らない。これがなかなかできません。
晴の輔:僕も落語家なので、入門してすぐに落語ができるかと言うと、違います。最初は師匠の身の回りのお世話や、運転手をしながら「落語家」を体で学んで行く。しゃべる練習ではなくて、生き様を学ぶのですよね。伝統芸能や古典芸能の世界ですね。
浮田:そうですね、歌舞伎の世界とよく似ています。私の長男、次男、三男も跡を継いでいます。10代から修行して、いちばん脂が乗り切っている30代に差し掛かっており、人員的には焦らなくてもいいのですが、いま継承者を育てておかなければと思い、募集をしました。
晴の輔:育てないと、その先がなくなってしまいますからね。落語の世界も、志す若い人が多くて嬉しいのですが、どこか就職感覚で来る人が多い。
浮田:そこも同じですね。続かずに辞めてしまいます。
晴の輔:就職ではないのですよね。
浮田:例えば中学校を卒業して、すぐに来てもいいのです。成人するまでに絶対に一人前にします。何もできなくていいから、覚悟と信念を持って来ていただきたいです。それだけあれば、絶対に一流に育てます。外から見ると、めちゃくちゃ厳しくてきついイメージがありますが、入ってみればそれほどでもなく、実際に10年続いている者が何人もいます。
浮田:拠点地である「伊賀流忍者博物館」で、仕掛けからくりや歴史的なことなど、忍者のノウハウを学んでもらいます。体を鍛え、心を鍛え、修行して一人前になって行くのが忍者の道のりです。忍者は忍耐ですので、辛抱できる子であれば必ず一人前になります。
晴の輔:忍者をやっていると、つい普通の生活で出てしまう癖などはありますか? 歩くときは忍び足になるとか。
浮田:全然ないです。ただ常日頃から、体調や体力の維持管理はしています。
晴の輔:失礼ながら、おいくつでいらっしゃいますか?
浮田:59歳です。12月19日で還暦となります。
晴の輔:おめでとうございます! 現役バリバリですね。
浮田:バリバリで動いていますよ。衰えを抑えるため、トレーニングや食事に気を使っています。
晴の輔:忍者の食生活は気になりますね。
浮田:身体を鍛えるためにタンパク質をしっかり摂ることと、睡眠も大切です。そして無理をしない。規則正しい生活をするのは、非常に大切ですね。
晴の輔:半蔵さんから見て、忍者とはどのようなものですか?
浮田:神秘の世界ですね。忍者とは得体の知れないもので、さまざまな古文書もありますが、本当は何であるかわからないのです。三重大学の教授が研究されていて、少しずつ解明されています。例えば「手裏剣」。忍者が使っていたとされる道具で、戦国時代から残っていたと言われていますが、実際には定かではないのですよ。そういったことにロマンや夢があるのですね。
浮田:例えば太っているなど、「忍者らしくない忍者」もいたと思います。忍者はスパイであり、根本的な仕事は戦いではないですから。陰の存在であって、そのためには目立たないということが大事です。
晴の輔:目立たない、でもきっちりと仕事をする。凄く興味がわいて来ました。
浮田:それではぜひ、三重県伊賀市の「伊賀流忍者博物館」に来てください。
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