東京五輪後の不況も指摘される中、表向きには楽観的な経済3団体
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月8日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。経済3団体の新年祝賀会について解説した。
経済3団体が新年祝賀会を開催
日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体が共催する新年祝賀会が7日、東京都内で行われた。経済の先行きについては2019年から続くアメリカと中国の貿易摩擦、消費税増税に加えて、年明けからアメリカとイランの対立が激化するなど波乱含みであり、東京オリンピック・パラリンピックが終わった後の景気後退も指摘されている。
サントリーホールディングス・新浪剛史社長)米国経済そのものがまだ何とかなっている間はいい。しかしながら、アメリカの経済が厳しくなるようなことをやってしまうと、これは日本の経済にも相当来ますね。それが今回いちばん出たのは中東政策ですよね。
飯田)経済見通しはまちまちという感じで、全体としては雲が垂れ込めているという感じもあります。
高橋)経済団体の会合に行ったときに、あまり消費増税の話は出ないのではないでしょうか?
飯田)あまり出ませんよね。聞いてもそんなに答えません。
高橋)答えないでしょう、消費税増税に賛成してしまったのですから。増税してどうなったかと言うと、10月・11月の経済指標を見たら、ほぼ全敗ですよ。これはずっと続きます。前は3年ほど続いたので、今回も3年くらい続くでしょう。今年(2020年)の年末くらいになると、きつい状況だと思います。オリンピックが終わったからどうのこうのという以前に、消費増税をしているので悪くなっています。加えてオリンピックの需要の剥奪が追いうちをかけ、さらに追いうちをかけるのは世界情勢です。
日本経済に追いうちをかける世界情勢
高橋)日本は内需の大きい国なので、消費税増税の影響が大きく、ベースラインが下がっているところでオリンピックが終わり、さらに海外が上がる。海外の話だと、大きいのが米中です。11月のアメリカ大統領選挙まで、本格解決はありません。あとはブレグジットです。イギリスがEU離脱するので、GDPは何%か落ちますからね。欧州経済は悪くなるに決まっています。さらに日韓関係も、文在寅大統領が辞めるまでは解決しません。それに追いうちをかけるのがホルムズ海峡、中東の話です。アメリカはホルムズ海峡があり、石油の価格が上がっても多少ラッキーくらいにしか思わないですが、ホルムズ海峡が封鎖されたら日本と中国はきついですよ。備蓄は200日ほどありますが、どれくらい持つかですよね。
飯田)原油の8割は、ホルムズ海峡を通って来ています。
高橋)どうするのかというレベルです。リスク要因として挙げていたのですが、1月に顕在化しました。なるべく短期で終わってもらうために、外交努力するとしか言いようがないです。
飯田)日本としても、ハンドリングできることは限られますよね。
高橋)だから難しいのです。なるべく早く終わってもらうしかありません。
補正予算の話ができずに終わった臨時国会
飯田)そうすると、冒頭におっしゃった内需の方で防御を分厚くして、とりあえず回せるようにしなければならないのに、なぜ消費税増税をやってしまったのか。
高橋)消費税増税をやって、補正予算で吐き出してはいますが、本当は補正予算は去年(2019年)の臨時国会の最後にやらなければいけなかったのです。「桜を見る会」などをやっていたから、補正予算の話ができずに遅れてしまった。おそらく、プレッシャーをかければ出たのですよ。
飯田)ある程度の概算のようなものは当然、官僚は用意していたのですね。
高橋)秋の補正予算は簡単ですから。
飯田)通常国会の冒頭から補正予算の審議をすると、補正予算が上がるのは2月の真ん中くらいですか?
高橋)1~2週間だと思います。
飯田)予算成立から執行までは、タイムラグがありますよね。
高橋)15ヵ月予算などになって、来年度(2021年)と一緒になります。
飯田)そうすると7月以降になり、消費税増税から数えたら、半年ぐらい何もしないことに…。
高橋)半年くらい何もしなければ大きいですよ。最初は5兆円くらいで何とかなったかもしれないのに、いまでは無理ですよね。
飯田)最低でも10兆円くらい。
高橋)もう1回~2回やらなければいけないから、秋ごろにやることになるのではないでしょうか。
飯田)今年(2020年)の秋ですか?
高橋)そうです。そうしないと足りないと思いますよ。
増税の影響で厳しい数字が続く
飯田)そうすると足元を含めて、経済の先行きはよくないですよね。
高橋)経済団体の人は表向き楽観的で、やせ我慢しているのかもしれませんが、消費税増税に賛成したのでいまさら言えませんよね。話を聞いていると増税についての意見が抜けているので、変な感じがします。
飯田)いちばん大きな内需の話をせずに、海外の話ばかりすると。
高橋)海外に進出しているエクセレントカンパニーだから、海外の要因が大きいのはわかりますが、経済の話は内需ですよ。「消費税増税について、あなたの会社はどうですか?」と聞いてみたらいいのです。
飯田)口ごもる人が多いのかもしれませんね。まだ顕在化していないから、影響は軽微と言うのかもしれません。
高橋)前に財務省が「統計が出ていないからわからない」と言い、いざ出て来たら黙ってしまいました。これと一緒です。ほぼ全敗ですよ。
飯田)消費者の心理もそうですし、12月の日銀短観でも厳しい数字が出ています。
高橋)そうですよね。もともとの商業統計や家計調査でも、いい数字が出て来ません。
飯田)家計調査の個人消費に関する冷え込みは、非常に厳しいですよね。
高橋)驚きますよ。2014年に下がったのですが、それと同じくらいですから。税率で考えると前回が3%、今回は2%なので、普通に考えれば2014年の3分の2のはずです。
飯田)その上で軽減税率やポイント還元をやりました、となっていますよね。
高橋)5兆円の増税で、軽減税率が1兆円、ポイント還元は3000億円です。ポイント還元で何とかなるなんて嘘ですよ。業界に回るのが1000億円くらいで、消費者に回るのが2000数百億円です。それで5兆円を救えるわけがありません。
飯田)単純計算で、財布からそのくらいのお金が消えるということですよね。
税率を下げることは可能~しかし複雑なリスクも
飯田)このまま税率を下げない限り、これが続くのですよね。何とか法律で下げられないのですか?
高橋)下げるのは可能です。ただ、いろいろと複雑になってしまいます。地方消費税も下げなければいけないので、地方の財源や社会保障の財源などがなくなります。いろいろな制度と絡めているので、これを打ち破るのは難しいです。しかし国債は出せますからね。
飯田)そちらでまず経済を回して。
高橋)そうすれば何とかなるかもしれません。
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