ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月13日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ゴーン被告の会見について解説した。
須田慎一郎が読み解くゴーン被告の記者会見
金融商品取引法違反の罪などで起訴されている日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告が8日、レバノンで行った記者会見について、ジャーナリスト・須田慎一郎が読み解く。
飯田)会見を行い、いくつかのメディアに関しては個別インタビューを行っているということです。須田さんは『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』という、ゴーン被告についての本も出されていますが、どのようなところに注目しましたか?
須田)記者会見だけではなく、個別のインタビューに応じたところもチェックしました。会見では、ゴーンさんにとってメリットのあるメディアしか呼んでいませんので、記者会見のレベルに達していません。
飯田)途中で拍手が上がったりしていましたね。
須田)記者会見については内容がありませんが、そのあとに応じたCNBCのインタビューを取り寄せてチェックしました。
ゴーン被告がCNBCに話した日産の陰謀
須田)ポイントは2つです。ゴーン被告は、「日産側の陰謀なのだ」という表現をしていました。会見では曖昧でしたが、その陰謀の中身についてCNBCのインタビューで指摘しています。1つは大前提として、日産の業績に関する問題があります。西川社長時代に業績が低迷し始めたのです。2016年3月に計上利益8622億円、2017年3月末決算で8674億円。2017年4月に西川さんが社長に就任するのですが、2018年3月末は7300億円、2019年においては5464億円と激減しています。通常、欧米の判断基準からすると、この業績では更迭となります。特に株主からそういう要求が出て来ます。日産の株主構成比率を見てみると、ルノーが43%で筆頭株主です。そうするとルノー側から、西川社長の交代と出て来るのが自明の理でした。しかし、この点については、ゴーン被告は踏み込んで話していません。
西川社長が更迭から自身を守るために仕掛けた
須田)ここから私の解説ですが、ルノー=ゴーン被告です。ゴーン被告としては、そういう説明をしている以上、西川社長の更迭ということを考えていたのではないでしょうか。CNBCのインタビューを読むと、その気配が濃厚でした。つまり、西川社長が自分の立場を守るために邪魔なのは誰かというと、ルノーを動かすことができるゴーン被告です。自分が更迭されたら、日産はルノーに飲み込まれてしまうという危惧があったのではないでしょうか。そこで仕掛けられたというのが、ゴーン被告の言い分です。
まだ日産が支払っていない状況で有価証券報告書の虚偽記載となるのか
須田)加えて裏付けるかのように、ゴーン被告は金融商品取引法違反という、有価証券報告書の虚偽記載となっています。これは将来受け取るべき報酬を、有価証券報告書に記載していなかったということに対して罪を問われたわけですが、「まだ日産側が支払っていない状況のなかで成り立つのか」というのがゴーン被告の言い分であり、私もそれについては同意します。ゴーン被告は、「例えて言うなら退職金のようなものだ」と言っています。退職金についても各企業で支払い規定がありますが、支払いは退職したときに発生します。退職金については有価証券報告書に記載されていないでしょうと。それに似たものだというのがゴーン被告の言い分です。「こういった自己に受け取る報酬については、西川社長も同様の措置を受けていたではないか」と。
飯田)そういう役員さんの報酬の枠組みの一部として設定されていれば、そうなりますよね。
なぜ一方が罪を問われて、一方は罪に問われないのか
須田)ケリー被告もそうですが、なぜゴーン被告だけがその罪に問われるのか。西川社長は司法取引的なことで、罪に問われないのは公平公正を欠いているではないかという主張です。そういった点で言うと、いろいろな問題がありますが、立件や犯罪構成要件についてどちらに分があるのかは、裁判を経ないとわかりません。裁判所がどんな判断を下すのか、ここでは言えません。さはさりながら、その前提として裁判の公平公正さを考えると、なぜ一方が罪を問われて、一方が罪に問われないのかという点について、これまで日本の司法当局側は説明し尽くして来たのかどうか、少し疑問があります。
飯田)そこまで検察の裁量なのか、というところですよね。
須田)確かに取り調べの可視化ということを引き換えに、司法取引制度は導入されました。それまでにいくつかありましたが、本格的なものという意味においては、今回が第1号だと認識しています。手続きを踏んで司法取引になっているなかで、実を言うと西川氏は入っていないのです。
飯田)それは公式的に発表されていますよね。財務担当の役員は入っているけれど、西川氏は入っていません。
須田)この辺もどうなのかなと。検察側が後になって、検証されるべき立場です。この制度が理にかなったものなのかという点では、外部の検証に耐えられるものでないといけない。ところが、それを曖昧なままにしているのはどうなのでしょうか? 公平公正さを欠いていると言われても、仕方がないのではないかと思います。
特別背任というよりマネーロンダリングではなかったか
飯田)一方で、金融商品取引法違反というところで表に出ていますが、ゴーン被告の中東日産などをめぐるお金のやりとりで、マネーロンダリングがあるのではないかということも言われています。これはどうですか?
須田)日産のお金を自分の懐に入れて、日産の損害につながった点から特別背任という切り口でやっているのですが、そうではありません。マネーロンダリングなのです。
飯田)資金洗浄。裏の犯罪的収益を表に出せるようにするとか、手法を使って中東からお金を持って来たり、販売促進費を懐に入れたりする話ですよね。
須田)だから本質的にマネーロンダリング、資金洗浄について刑事責任を追及するべきだったのではないかと思います。実は日本の法制度に不備があって、なかなかそこに踏み込んで行けないのですね。
飯田)現状、どうやって法律の網にかけるかということが難しいのですね。
須田)逆に税法上、脱税という切り口がいちばんやりやすいのかなと思います。
飯田)そうすると国際的な捜査になるから、検察にとっては面倒だと。
須田)ただ近年、海外と日本の税務当局にネットワークがあって、情報交換ができるようになっています。その網に入れることさえできれば、中東諸国が正確な情報を提供するかどうかは別としても、ピンポイントで要求すれば返って来るはずです。だから国税との連携が、いちばんスピーディーにことを運ぶことができるのではないかと思いますけれど。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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