弾劾裁判がトランプ大統領に与えるダメージ
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月17日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。トランプ大統領の弾劾裁判について解説した。
トランプ大統領の弾劾裁判がスタート、21日から審議へ
アメリカ議会上院で、トランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判が始まった。大統領の弾劾裁判はアメリカでは3例目となる。トランプ氏の権力乱用と議会妨害について、21日から審議が開始される。
飯田)野党民主党は、ここから攻勢を強めて行くと報じられていますが。
宮家)弾劾はようやく年末に下院で決定したのだけれども、下院議長は上院への送付を遅らせていました。その最大の理由はこうだと思います。上院の共和党は弾劾裁判をできるだけ早く済ませてしまいたい、証人を呼ぶと大変なことになるので、証人は呼びたくない。民主党にテレビ用のプロパガンダになるような、人民裁判みたいなことをさせないように、証人は呼ばない。しかし、裁判をやるのに証人がいないなんて、あり得ないわけです。実際にアメリカにはそういう議論があるのですが、特に共和党の上院議員の中にはトランプさんが怖くない人や引退する人など、何人かは、有罪に賛成するかどうかは別として、証人を呼ぶのは反対ではないという人がいるかもしれない、というかいるのです。
飯田)次の選挙がないと思えば。
政府関係者の証人が出るのかどうか
宮家)再選のない人は強いのですよ。でも、再選したい人は少し怖いですね。それで何が起きるかというと、裁判の結果は変わらないにせよ、もしかしたら証人だけは呼ばれるかもしれない。そうすると、ボルトンさんやウクライナ問題をよく知っている人が、ついに真相を喋るかもしれない。ボルトンさん本人は召喚状があれば、つまり法的に呼ばれれば、やってもいいと言っています。「どうせ法的に呼ばれるわけがないから、行く気がない」ということを言っているのですけれどね。しかし、何人か共和党の議員が造反すれば証人は呼べるので、これからいちばん関心があるのは、証人が呼ばれるかどうか。呼ばれた場合には何を喋るのか、それがどの程度ダメージがあるのかということです。無罪になることはわかっているので。
飯田)有罪にはなかなか…。
宮家)ならないです。問題は大統領選挙にどれだけ影響がある形で、この弾劾裁判が行われるかだと思います。裁判と言いながらも極めて政治的な動き、醜い動きも含めて、泥仕合が繰り返されるでしょう。下院で1回やりましたけれども、重要なのは、政府関係者の証人が出るかどうかということです。それからもう1つ、トランプさんはもちろん無罪だと言っています。
飯田)自信満々という感じで。
宮家)16日のCNNを見ても、彼が個人的に弁護士として使っているニューヨーク元市長、ジュリアーニさんが、どうもウクライナに行っていろいろなことをやっているらしいのです。それには当然部下がいて、2人のウクライナ系アメリカ人だったと思いますが、彼らの一人がなぜか起訴されたのにインタビューを受けているのです。そしてCNNで全部喋ってしまっているわけです。本当かどうかはわかりませんが、「大統領は全部知っている」なんて言っているのですよ。ここまで情報が出ていても、トランプさんは疑惑を否定するだろうけれども、国民がそれをどう見るかという問題はあるでしょうね。
トランプ大統領の支持率は変わらない~浮動票がどう動くか
宮家)もちろんトランプさんの支持率40数%は、この程度では変わりません。問題は浮動票がどう流れるかということだと思います。
飯田)民主党にとっては、バイデンさんも絡むと。その辺の駆け引きというところになって来るのですか?
宮家)ええ。バイデンさんも、副大統領や上院議員としてワシントン生活が長過ぎましたからね。いろいろなことがありましたから、叩けばほこりが出て来るかもしれません。お互いにあまり楽しいことにはならないのではないですかね。
飯田)どのくらいまで続くと思いますか?
宮家)裁判は、共和党は裁判をさっさとやめたい。
飯田)民主党はバイデンさんのほこりが出なければ、どんどん時間を伸ばしたいと。
宮家)しかし、2月になると大統領選挙の党員集会と予備選が始まりますから、裁判と選挙の順番は間違えてはいけないと思います。
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