2020年度予算案~防衛費における大きな課題
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月29日放送)に慶応義塾大学法学部教授・国際政治学者の細谷雄一が出演。2020年度予算案について解説した。
2019年度補正予算案、衆議院本会議を通過
災害復帰費用などを含んだ2019年度の補正予算案は28日、衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。29日から参議院で質疑が行われ、30日に成立の見通しである。
飯田)防災機能の強化、景気の下支えなどが柱となっているようです。防災や災害復旧というと台風15号や19号がありますので、もっと前に出せなかったのかということが議論としてあります。これは参議院に送られて、反対もなく通るという感じですか?
細谷)そうですね。自然災害の被害に遭われた方がたくさんいらっしゃって、淡々と必要な経費を割いているということだと思います。来年(2021年)は3.11の大震災から10年となりますので、より一層防災、天災に向けた準備が必要になると思います。
飯田)そして補正予算案が済めば、2020年度予算案です。来週から実質的な審議となっています。予算の話が出ると、「防衛費が過去最高」などと、安全保障に関わるところを批判されることが多いのですが、この規模についてはいかがですか?
日本の防衛費1.0%はトランプ政権の要求の半分
細谷)日本の防衛費1.0%ですが、NATOに対して、トランプ政権はすべての国に2%以上を求めています。日本はアメリカが要求している水準の半分しか出していません。トランプ政権は、日本だけ特例として要望してはいません。日本の防衛費を他のアメリカの同盟国と比べると、圧倒的に小さい。5年後には韓国の防衛費が、日本の防衛費を大きく上回る予定です。韓国の経済規模は日本の半分くらいですが、日本より多く防衛費に割いています。他の国々が2%ほどで、韓国の防衛費も日本の防衛費を超える。そうすると日韓関係にも影響が出て来て、韓国はより自信を持つということになります。ですから大幅に防衛費を増やすべきだとは思いませんが、国際的な比較の視点で見ると、トランプ政権が日本に不満を持つ1つの大きな問題になる可能性があります。
飯田)トランプ政権の日本に対しての不満、特に安全保障面で言うと駐留経費をもっと出せという記事が大きくなりますが、根本としては防衛費の問題があるわけですね。
細谷)トランプ政権はアメリカの防衛産業と関わりが深いので、防衛費を増やせということは、貿易赤字を減らすことにもつながるという発想があります。
飯田)輸入を増やすのと同義だと。
アメリカとの同盟の強化と日本の自主防衛をどう強化するか~アメリカの装備の調達を要求される
細谷)そうです。ホストネーションサポートを増やせというのは以前からの要望ですが、これから日本にも防衛費を増やせということと、アメリカの装備の調達を水面下で要求することが強まるのではないでしょうか。
飯田)そうすると、F2戦闘機に代わる次期戦闘機の選定の話が出て来ていますが、一緒に開発するとしたら当然アメリカだと向こうは言って来る。
細谷)そうですね、日本は独自の防衛技術が壊滅的に後退しています。どの企業も収益が得られないということで撤退して、日本独自の防衛技術の基盤がなくなって来ています。日本の自分たちを守るという根幹が崩れているのです。それはアメリカとの関係を強化する、つまり貿易黒字を減らすということとトータルに考えなければならない問題だと思います。そのため同盟の強化と、日本の自主防衛をどう強化するかが、政府にとってこれから難しい課題となると思います。
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