トランプの一般教書演説原稿を破ったペロシ下院議長の意地~アメリカの分断を象徴

By -  公開:  更新:

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月6日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。トランプ大統領の弾劾裁判での無罪判決について解説した。

トランプ米大統領(中央)の一般教書演説の原稿を破るペロシ下院議長(右)(アメリカ・ワシントン)2020年02月05日 AFP=時事  写真提供:時事通信社

ウクライナ疑惑めぐる弾劾裁判~トランプ大統領に無罪判決

アメリカ議会上院の弾劾裁判は5日、トランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐる「権力乱用」と「議会妨害」の2つの訴追条項に関し、いずれも無罪とする評決を出した。多数派の与党、共和党の議員らが反対し、造反は1人しか出なかった。ただ、疑惑は払拭されておらず、評決への世論の賛否は拮抗している。

森田耕次解説委員)アメリカ上院の弾劾裁判の評決では、「権力乱用」が有罪48に対し無罪52、「議会妨害」は有罪47に対し無罪が53でした。「権力乱用」についてトランプ大統領に批判的な共和党重鎮のロムニー議員が有罪に投じ、これが唯一の造反でしたが、共和党の議員がほぼ反対に回ったということです。トランプ大統領はツイッターで「でっち上げの弾劾訴追に対するアメリカの勝利だ」と表明し、6日の正午(日本時間の7日未明午前2時)にホワイトハウスで声明を発表するということです。民主党は疑惑解明のために2019年9月に解任されたボルトン前大統領補佐官の証人尋問を求めていたのですが、共和党議員のうち2人の賛同しか得られず、必要な過半数に達しなかったということで、ウクライナ疑惑についてのボルトンさんの証人尋問ができず、あっさりと無罪になりました。

佐藤)これは予想通りなので、トランプ氏にとっては予防接種のような感じになってしまいました。「疑惑は全部真っ白だ」と言うきっかけになったので、民主党は敵に塩を送ってしまったと思います。

米ワシントンで、弾劾訴追について述べるペロシ下院議長=2019年12月5日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

一般教書演説では下院議長との亀裂をアピール

森田)5日の一般教書演説ではトランプ大統領が弾劾に触れることはなかったのですが、演説は選挙モードでしたね。

佐藤)ペロシ下院議長と握手をしないなど、プロレスの雰囲気です。ペロシ議長も相当なものですね。終わったところで演説の原稿を破くなど。でも、あれはショーですね。要するに、アメリカにおいて握手をしないというのは、日本において頬につばをひっかけるくらいのことなのです。

森田)そんなにですか。

佐藤)女性側から手を出したのに握手しないというのは相当無礼なことで、もしそのまま引き下がってエキセントリックなことをしなければ、トランプ氏に気合負けしたということになってしまうのです。同じくらいエキセントリックなことをしなければいけないので、原稿を破いたのですよ。

森田)演説中は拍手もしなければ、表情も「なんだこいつ」といった顔をしていましたものね。

佐藤)アメリカの分断を象徴する出来事でしたね。

森田)ウクライナ疑惑はこれで一件落着になってしまうのでしょうか。

佐藤)騒ぎ続けますけれど、致命傷にはなりません。これ以上追及する術がないわけですから。

3日、米アイオワ州デモインの劇場で始まった民主党の党員集会(共同)=2020年2月3日 写真提供:共同通信社

アイオワ州党員集会~バイデン氏まさかの4位

森田)確かにそうですね。逆にバイデン前副大統領の方は息子がウクライナのエネルギー企業の役員になっていて、高額の報酬を受け取っていたことが影響してくる可能性があるかもしれませんね。

佐藤)ありますし、アイオワの党員集会では4番で、集計率97%の時点で15.8%です。バイデン陣営は真っ青になっていると思いますよ。

森田)これが予想外の出だしの悪さというか。トランプ大統領は大統領選を有利に戦おうということで、ウクライナに軍事支援の見返りにバイデンさんの捜査を要求した疑惑でボルトンさんが立証の鍵になると言われていましたが、証人尋問もできなかったと。

佐藤)議事運営に関しても、共和党は強いですね。世論で嵐が吹いていると、共和党の人たちも自分たちの選挙が怖くなってきますからやるのかと思ったのですが、なりませんでした。トランプ氏の力がよく見えましたね。

森田)一方、アイオワの党員集会ですが、97%の結果が発表されまして、もっとも若いブティジェッジ前サウスベンド市長が26.2%。左派のサンダース上院議員が26.1%と0.1ポイント差の大接戦になっています。ブティジェッジさんは、全国的な知名度はそんなにないですよね。アイオワだけ徹底的に選挙運動して名前を売って、ここで名前を売り出す戦略を取って、それがうまくいったということでしょう。バイデンさんは2位につくのだと思っていたら、かなり離されてしまいました。これは波乱になってきましたね。

支持者にあいさつするブティジェッジ氏=2020年2月4日、米ニューハンプシャー州(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

システム不具合がトランプ大統領の追い風になる理由

森田)15.8%しか取れずにウォーレンさんよりも下になっていますものね。97%ですから、ブティジェッジさんとサンダースさんが入れ替わる可能性がまだ残っています。システムの不具合でちゃんと集計できないという事件もありました。

佐藤)これがすごく大きいと思うのですよ。民主党が政権を取ったら、システムやアプリをつくっている人たちがアメリカを運営するわけですよね。政治任用で6,000人くらい替わるのではないでしょうか。

森田)アメリカの場合、政権が変わる度にがらりと官僚が入れ替わって。

佐藤)この人たちがくるわけですよね。「これで大丈夫か?」ということをトランプ氏は突いていて、国民はやはり不安になりますよね。こんな簡単なことができないのに、国の運営ができるだろうか、と。

森田)ますますトランプさん有利になってきますね。

佐藤)何かツキがあるような感じがします。

森田)長い選挙戦が始まりますが、民主党がこれではトランプさんが楽勝になってしまいます。若いブティジェッジさんが出てくると、トランプさんも多少は焦るのではないでしょうか。

佐藤)どれだけ広がりを持てるのか。これを見ると、アメリカの政治よりもまだ日本の方が上品でいいと思います。トランプ氏の発言や、議会で握手もしない、集計ができない。日本ではそういうことはめったにないですからね。アメリカモデルの政治はあまりよくないかもしれません。

森田)アメリカを手本にし過ぎてもどうなのかという。

佐藤)日本で首相公選になる、あるいは国会の施政方針演説でこういうことはやって欲しくないですよね。

森田)民主党のときには官僚も全部入れ替える気配もありましたしね。果たしてどうなのか。

佐藤)プロレスみたいなことはあまり政治に持ち込まない方がいいと思いますけれどね。

番組情報

ザ・フォーカス

月曜〜木曜 18:00-20:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

Page top