バドミントン全英OP男子ダブルス日本勢初優勝 遠藤・渡辺組結成秘話

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、15日(日本時間16日)にバドミントン全英オープン・男子ダブルスで日本勢初の優勝を飾った遠藤大由(ひろゆき)・渡辺勇大(ゆうた)ペアについてのエピソードを取り上げる。

全英バドミントン・男子ダブルス/優勝した遠藤大由、渡辺勇大組=2020年3月15日 写真提供:時事通信

「説明できないくらい嬉しかった」(遠藤)

「何でも最初の1番は気持ちがいい」(渡辺)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、スポーツの国際大会が軒並み中止・延期に追い込まれていますが、そんななか、イギリス・バーミンガムで行われたバドミントン・第110回全英オープンで、日本勢が快挙達成です。

15日(日本時間16日)の大会最終日、男子ダブルスは遠藤大由・渡辺勇大組、女子ダブルスは福島由紀・廣田彩花組が優勝。日本勢が男女アベックVを果たしました。

特に、男子ダブルスを日本勢が制したのは、110回の歴史を誇る全英オープンで史上初の歴史的偉業です。遠藤が33歳、渡辺が22歳と、およそ一廻り違う“年の差ペア”は、決勝で世界ランキング1位のインドネシアペア、ギデオン・スカムルジョ組と対戦しました。

第1ゲーム、遠藤・渡辺組は相手の厳しい攻撃にさらされながらも、粘り強い守備で決め手を与えず、21-18で先制。第2ゲームは11-21で落とし、勝負はファイナルゲームへ突入します。

第3ゲーム、遠藤・渡辺組は序盤でリードしましたが、終盤に追いつかれ、僅差の息づまる攻防が展開。壮絶なラリーが展開されましたが、終盤、渡辺が徐々に前方へ出て反撃。最後は相手のショットが外れ、21-19で遠藤・渡辺組が日本勢初優勝を飾りました。

1時間を超える戦いを制し、世界の頂点に立った2人。遠藤は過去3度、全英オープン準優勝を経験しており、4度目の挑戦で悲願の栄冠を手にしました。また渡辺は、2018年に混合ダブルスで全英オープンを制しており「ダブルス2種目制覇」の偉業も達成です。

「過去に賢一と組んだ経験と、勇大が(混合ダブルスで)優勝した経験が合わさって優勝できた」

試合後、そう語った遠藤。「賢一」というのは、元パートナー・早川賢一のことです。小学生のころから一緒に切磋琢磨して来た、遠藤・早川ペア。堅実な守備を武器に、全英オープンで2013年・2014年・2016年と3度の準優勝を果たし、2015年の世界選手権では銅メダルを獲得。「日本男子ダブルス史上最強ペア」と呼ばれました。

2016年、メダルを期待されたリオ五輪では、1次リーグで中国とインドネシアの強敵ペアを撃破。この勢いで金メダルを……と意気込んだ3戦目、試合前の練習で早川が腰を痛めてしまいます。これが響き、決勝トーナメント初戦で、格下の英国ペアに敗れ敗退。

リオから帰国後、遠藤は代表合宿中に早川から「俺はやめる」と引退を告げられました。「賢一がやめるときは、自分もやめるとき」と考えていた遠藤ですが、早川はパートナーの本心を見抜き、こう告げたのです。

「『もっとできたのに』と思うなら、このままバドミントンを続けてほしい」

この一言がきっかけで、新しいペアを組んで、東京五輪を目指す気になった遠藤。同じ日本ユニシスに所属する有望株・渡辺から「僕とペアを組んでくれませんか?」と頼まれ、コーチに転身した早川もこれを後押し。こうして“年の差ペア”が誕生しました。

遠藤も渡辺も脚力自慢で、お互いコートを自在に駆け回るタイプ。それが逆に仇となって、ペア結成当初は動きが重なる場面もたびたびありましたが、徐々に呼吸をつかみ、お互い連携を取ったプレーができるようになって行ったのです。

迎えた伝統の大会・全英オープン。男子ダブルスは現在、インドネシア勢が圧倒的な強さを誇っており、大会前の最新世界ランキング(2月発表)では、1位・2位をインドネシアのペアが独占しています。

遠藤・渡辺ペアは世界ランキング6位ですが、今回の全英オープンでは、準々決勝で世界2位ペアを破り、決勝で1位ペアを撃破。王者・インドネシア勢の牙城を崩してのVだけに、これで東京五輪金メダルも夢ではなくなって来ました。

「世界ランク1位・2位のペアにぶつかり、勝って優勝できたことが財産」

試合後そう語った渡辺ですが、彼には大きな夢があります。それは東京五輪の「男子ダブルス」「混合ダブルス」両方に出場し、ともに金メダルを獲ること。

男子ダブルスは、スピードとパワーの勝負ですが、混合ダブルスは、男女の体格差を生かして緩急を駆使する戦いになり、プレースタイルが自ずと異なります。

日本では、両方をトップクラスでこなす選手はほとんどいませんでしたが、高校1年のとき、すでに「2種目で世界を目指す」と決意していた渡辺。

混合ダブルスでは、中学2年のときからペアを組み、2年前(2018年)の全英オープンを制した1学年上の東野有紗とタッグを組んでいます。こちらは世界ランキング4位で、息もぴったり。

この“二刀流”に対し「東京五輪でメダルを目指すなら、早くどちらかに絞ったほうがいい。『二兎を追う者は一兎をも得ず』になってしまう」と反対する声もあったそうですが、本人によると、二刀流ゆえの相乗効果も大きいそうです。

混合ダブルスでは、女子選手をどうカバーするかが重要。その経験が、男子ダブルスで、遠藤が前に出た際のカバー力につながり、また、男子ダブルスで前衛を務める経験が、混合ダブルスで、ネット前に出た際の攻防に役立つと言います。

「(全英オープン初制覇は)ワンチャンスをつかんだという気持ち。僕らに自信をつけさせてくれる一戦になったと思います」(渡辺)

リオで不完全燃焼に終わった思いを、東京で成就させたい遠藤。その遠藤からさまざまなことを吸収し、二刀流という道なき道を行く渡辺。年の差こそあれ、目指すものは同じ……表彰台の頂点です。

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