「9月入学」には即刻政治決断が必要~6月決定では間に合わない
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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(4月28日放送)にゲストの作家・元外務省主任分析官の佐藤優が出演。緊急事態宣言下における教育の課題について解説した。
「9月入学」であれば今すぐ政治決断を
新型コロナウイルス感染防止対策としての緊急事態宣言の期間が延長される見込みとなっているが、各自治体は5月6日までとしていた学校の休校をすでに延長するという動きが広がっている
森田耕次解説委員)埼玉県は27日に5月いっぱいまで休校を延長する、28日も三重県や山口県が休校の延長を決めました。それから奈良市、京都市なども決めているということで、学校の休校が長引いているのも生活に大きく影響が出ていますね。
佐藤)戦力の逐次投入になっているのですよね。6日までがだめだったら5月中、6月の前半まで、6月の終わりと終わりが見えないエンドレスになるよりはこれで学力の差が出てしまいます。ある地域では先をいっていて、他の地域は休校せざるを得なくて義務教育で凸凹になれば、入試に影響があるのです。思い切って9月まで閉じてしまった方がいいです。
森田)入学や始業の時期を9月までずらしてしまった方がいいのではないかという意見も出始めていますね。
佐藤)この機会にやってしまうのも1つの考え方です。ただ、これは早くやらないと6月7月になってから9月にやると言っても制度設計ができません。5月頭にそれを決めれば制度設計が間に合うと思いますが、それもかなり大変です。この種のことは大胆に、なおかつ早くということだと思います。義務教育の場合には教育の凸凹をつくるわけにはいきませんから、いまが政治決断のときです。安倍総理は率直に言って教育のところまでという感じではありません。感染拡大の防止と経済対策と。しかし国家の中長期的な発展を考えると教育は大切ですし、お父さんやお母さんにしても自分の子どもが5月の7日以降は学校へ行くのかということと9月まで家にいるのかということだとかなり設計が変わってきます。早く示した方がいいと思います。
感染症の専門家だけで「教育」の制度設計をしてはいけない
森田)これも地域の状況を踏まえて再開できる学校もあるのではないかと専門家会議のメンバーは文部科学省に言っていまして、例えば給食の配膳や合唱などの発声を伴う授業、子ども同士が接触する休み時間などに注意しながら自治体によってはできるところはあるのではないかと専門家は言っているのですが、そうすると地域間の格差が出てしまうということですね。
佐藤)この専門家たちは感染症の専門家ですから、感染症の観点からの専門的な意見なのですね。このときに感染症の専門家だけで決めてはいけないのです。どうしてかというと、教育にどういう影響があるのかは教育の専門家の意見を聞かなければいけないわけです。少なくとも教育の専門家が加わらないところで感染症の専門家と行政間、あるいは政治家のところで決めたら後で禍根を残します。制度設計の大きな問題ですから、これは政治が乗り出していって全体統制をしなければいけません。ここだけオープンにして他の所は閉じているのが今度は構造的にどういう影響をもたらすのか。これは我々が常識的に考えてわかります。
森田)高校や大学の入試にも関わる、就職にも影響するということで単純な仕組みではつくれませんね。社会構造そのものを変えなければいけないということになりますものね。
佐藤)時間がかかりますから早く決めるべきです。
森田)決断するなら早くということですがそこまで目配りはいかないし、一気に進めるというのはいま時点では難しいような感じがします。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。