4人の元米大統領がデモを支持する本当の理由~米黒人暴行死

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月5日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米黒人男性暴行死への抗議デモの拡大を受け、4人の元大統領が発言をしたニュースについて解説した。

米東部ニューヨーク市で行われた、白人警官による黒人暴行死事件の抗議デモ。元警官全員が訴追されても各地でデモが続いている=2020年6月3日 写真提供:産経新聞社

アメリカの4人の元大統領が黒人の暴行死について発言

アメリカでの白人警官による黒人男性暴行死とその後の抗議デモの拡大を受けて、いまも健在の4人の元大統領、カーター氏、クリントン氏、ジョージ・ブッシュ氏、そしてオバマ氏から発言が相次いでいる。民主党のオバマ前大統領は「この国が抗議行動によって築かれたことを忘れてはならない」と述べ、デモを支持した。また、共和党のブッシュ元大統領は「傷つき、嘆き悲しむ人々の声を封じようとする者は、アメリカの意味と、それがどのようによき場所になるのかを知らない」と訴え、デモを抑圧するトランプ大統領を暗に批判した。

飯田)辞めた方々も発言をしています。

30日、黒人男性が白人警官に暴行され死亡した事件に抗議し、デモ行進する人々=2020年5月30日 米西部カリフォルニア州(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

傷つき悲しむ人々を癒すのが大統領の仕事~トランプ大統領はやらない

宮家)アメリカという国は、日本のように一体感のある国ではありません。移民で成立している国だし、昔は奴隷制度がありました。でも、社会のそうした暗部みたいなものを少しずつ修正し、いまのアメリカがあるわけです。そこには、いろいろな知恵があり、いろいろな犠牲があったのです。ミネアポリスで起きたこの事件は酷い話です。しかし残念ながら、あのような大きな事件は何年かに1回起きていて、その度に、ある程度の抗議運動等々はあるのです。けれども、今回は根本的に違うところがあります。この種の事件では、本来であれば、合衆国大統領自身が国の団結や和解、癒しというものを象徴するものです。4人の元大統領が言っているように、傷つき悲しむ人々を癒さなければいけない。それが大統領の仕事です。ところが、みんな薄々感じていたのだけれども、それをいまの大統領がやっていないということです。

ジェームズ・マティス-Wikipediaより

マティス前米国防長官がトランプ氏を批判~国を分断しようとしている

宮家)今回驚いたのは、前の国防長官、ジェームズ・マティスさんが『アトランティック』という雑誌に書簡を発表して、トランプ大統領を強く批判していることです。

飯田)かなり辛辣なことを書いていました。

宮家)狂犬が吠えたという感じです。とても長い、感動的なレターなのですけれども、「いまの大統領はこの国を分断しようとしている。国を統一しようとするその素振りすら見せない」という辛辣な内容です。それから、マティスさんが怒っている最大の理由の2つ目は、このデモ、暴動を抑えるためにトランプ大統領がアメリカの軍隊を使おうとしたことです。

飯田)連邦軍を。

放火された車の上に立つ参加者(2020年ミネアポリス反人種差別デモ-Wikipediaより)

暴動を抑えるために米軍隊を使おうとしたトランプ大統領~天安門事件と同じになる

宮家)州兵を使うとしたら、それは州知事の権限ですが、大統領が国軍を使うということは、それは最後の手段です。下手にそれをやったら天安門と同じになってしまう。それを平気でやる、しかもそれによって国民の間の分断を深めて、自分の支持者を固めようとしているのではないか。このような状況でこれは、非常に醜い政治的な動きだと思います。「それを平気でやる人なのだ」ということを、前の国防長官が怒っているわけです。また、多くの軍人をはじめとした心ある人たちがそれを支持しています。まだアメリカにも健全な人たちがいるのだなと、嬉しく思いました。

飯田)読んで驚いたのが、第二次大戦のことを引いているところがありますが、そこで述べていたのは、「アメリカは団結の力でナチス・ドイツを打ち負かした」「ナチスはアメリカを分断し、そして激化して闘おうとした。分断すれば、どんなに強い兵器を持っているアメリカの軍隊でも弱くなる、と分析していた」と。ところが団結をしていれば、どんなに粗末な武器でも強いということを…。

宮家)「トランプはナチだ」と言っているのです。

飯田)その表現を使うということは、相当な覚悟を持ってのことです。いままで沈黙していた人ですよね。

宮家)国防長官になったときは我慢していました。だけど、大統領がシリアから軍隊を撤退すると言ったときはさすがに怒って、トランプ大統領を批判しました。退いた後は、軍人として政治には関わらないということで、大統領の批判は避けていました。本を出して、そのなかではチクチク書いていましたけれども、今回のレターはどうやら少し質が違う。これが大統領選挙にどの程度効果があるかはわからないけれども、アメリカの一部の健全な常識ある人たちの声を代弁してくれたのだなと、嬉しくなりました。もっとも、それ以外にも健全な常識のある人たちはアメリカにいるのだな、と思うことがありました。それは、抗議のデモ行進をしている人たちと、その地域の警察のトップが一緒になってデモに参加して、腕を組んで歩いているのです。こんなことは中国ならば考えられない。その時点で大変なことになりますよね。アメリカは人種差別がある国です。そうであるからこそ、自浄作用を施さなければいけないのだけれど、それがきちんと機能しているところはあるのだな、ということは救いだったと思います。

飯田)右も左も過激な人たちが先導するというのは当然あるけれども、着地をして行かなければいけない。

27日、香港のデモで、取っ組み合いになる警官隊とデモ支援者(ゲッティ=共同)=2020年5月27日 写真提供:共同通信社

香港デモとの相違~アメリカと中国の本質の違い

宮家)アメリカの社会というものは、リンカーンの奴隷解放宣言のときもそうだったし、公民権運動のときもそうでしたけれども、節目節目で、北部の清教徒のリベラルな…すべてがリベラルというわけではありませんが、理想と、南部のプランテーションのビジネス。この2つの利益が常に対立・葛藤して来た社会なのです。ただ、アメリカのいいところは節目節目で北が勝って来たというところ。だけど、トランプさんは北ではないですよね。むしろ南です。白人警官による黒人の殺害、こういう事件が起きるときにこそ、アメリカの真価が問われる。中国は「ほら、見ろ。俺たちと同じだ」と言っているのだけれども、果たしてそうだろうかと思うのです。確かに形式的には似たようなことかも知れませんが、香港で起きていることとは問題の本質が違うのです。いまは香港でも、アメリカと同じように抗議デモをすることができます。しかし、問題の本質は「あなたたちはこの後どうするのですか?」ということです。「今後も香港でアメリカと同じようなことができるのですか?」と。「できなくなるでしょう」ということが本質なので、その部分を勘違いしない方がいいと思います。中国は、確かに宣伝は上手かも知れませんが、本質の部分が欠けているのではないかと思います。

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